244 / 490
女装と復讐 -躍動編-
page.233
しおりを挟む
『よっしゃあ!詩織!金魚!…そろそろ《春フェス》の会場に向かうか!』
…そう秋良さんが気合を込めて言ったのは、ちょうど午後0時…正午になったとき。
アンナさんのマンションから、会場である嘉久見大通りまでは車で約15分。
鈴ちゃんには詩織から《会場に、午後0時40分ぐらいには着くように行くね》と伝えてあるから、今からマンション1階の駐車場まで下りて…車に乗って…車は嘉久見大通り近くの有料パーキングに停めて…そこから会場まで歩いて…って考えても、十分に間に合いそう。
『いってらっしゃい。詩織。金魚』
『詩織ちゃんも金魚ちゃんも、たくさん目立ってきて!』
『はーい。アンナさん、ナオさん、頑張ってきまーす』
『行ってきます』
『秋良くんも春華ちゃんも、くれぐれも2人を宜しくね』
『了解。アンナさん。任せてくれ』
『では会場へ。秋良くんの安全運転で…ね』
僕らは玄関先で見送ってくれてるアンナさんとナオさんに手を振り、アンナさん家を出た。
《藤浦市スプリングフェスタ》の会場へと向かう、秋良さんの車の中で…。
『ねぇ金魚、去年の《プレデビュー》の日のこと…まだ覚えてる?』
『えっ?あー…うん。覚えてるけど…?』
それは去年11月の第1週土曜日。藤浦市黒羽区の天郷大通りで、僕は女装姿での初めての街歩き…《プレデビュー》をしたんだ。
『あのときの金魚、最初はすっごく緊張してたよねー』
『うん…』
僕はいつものように、後部座席の窓から外の街を見てた。そしてそのまま詩織に頷いて返事。
『《僕、車から出られないよ。無理かもぉ》って。きゃはははは』
『!』
詩織がそんなことを言うもんだから、僕はふっと勢いよく振り向いて、詩織と視線を合わせた。
運転席の秋良さんと助手席の春華さんは、2人で別の会話をしてたから、今のは聞こえてなかったみたい。助かった…。
『つか詩織、急になんでそんな話…』
『でも、あなたは勇気を振り絞って天郷大通りに立った。いつか瀬ヶ池で一番有名な女の子に…《瀬ヶ池の女傑》と認められる女の子になるんだ…って』
そんなことを語る詩織…いつもより優しい目をしてる。
『ほんとに私たち…よくここまで頑張ってきたよね』
思い起こせば確かに。けどそれは、詩織がパートナーでいてくれたから。もし僕が…金魚が一人だけだったら、今頃は…。
『…てゆうか緊張してる?』
『ううん。あんまり…』
『あんまり緊張してないの!?良かったぁ。でも、びっくりするほど女の子いっぱいだよ!』
けど僕は、もうこの金魚の姿で女の子たちに見られることは、すっかり慣れてるし。今更、たとえ1000人の女の子が会場に集まっていたとしても…。
『もうすぐね。やっとあなたは《女傑》って言われる女の子になれる…』
詩織…なんだか少し嬉しそうだ。
…そう秋良さんが気合を込めて言ったのは、ちょうど午後0時…正午になったとき。
アンナさんのマンションから、会場である嘉久見大通りまでは車で約15分。
鈴ちゃんには詩織から《会場に、午後0時40分ぐらいには着くように行くね》と伝えてあるから、今からマンション1階の駐車場まで下りて…車に乗って…車は嘉久見大通り近くの有料パーキングに停めて…そこから会場まで歩いて…って考えても、十分に間に合いそう。
『いってらっしゃい。詩織。金魚』
『詩織ちゃんも金魚ちゃんも、たくさん目立ってきて!』
『はーい。アンナさん、ナオさん、頑張ってきまーす』
『行ってきます』
『秋良くんも春華ちゃんも、くれぐれも2人を宜しくね』
『了解。アンナさん。任せてくれ』
『では会場へ。秋良くんの安全運転で…ね』
僕らは玄関先で見送ってくれてるアンナさんとナオさんに手を振り、アンナさん家を出た。
《藤浦市スプリングフェスタ》の会場へと向かう、秋良さんの車の中で…。
『ねぇ金魚、去年の《プレデビュー》の日のこと…まだ覚えてる?』
『えっ?あー…うん。覚えてるけど…?』
それは去年11月の第1週土曜日。藤浦市黒羽区の天郷大通りで、僕は女装姿での初めての街歩き…《プレデビュー》をしたんだ。
『あのときの金魚、最初はすっごく緊張してたよねー』
『うん…』
僕はいつものように、後部座席の窓から外の街を見てた。そしてそのまま詩織に頷いて返事。
『《僕、車から出られないよ。無理かもぉ》って。きゃはははは』
『!』
詩織がそんなことを言うもんだから、僕はふっと勢いよく振り向いて、詩織と視線を合わせた。
運転席の秋良さんと助手席の春華さんは、2人で別の会話をしてたから、今のは聞こえてなかったみたい。助かった…。
『つか詩織、急になんでそんな話…』
『でも、あなたは勇気を振り絞って天郷大通りに立った。いつか瀬ヶ池で一番有名な女の子に…《瀬ヶ池の女傑》と認められる女の子になるんだ…って』
そんなことを語る詩織…いつもより優しい目をしてる。
『ほんとに私たち…よくここまで頑張ってきたよね』
思い起こせば確かに。けどそれは、詩織がパートナーでいてくれたから。もし僕が…金魚が一人だけだったら、今頃は…。
『…てゆうか緊張してる?』
『ううん。あんまり…』
『あんまり緊張してないの!?良かったぁ。でも、びっくりするほど女の子いっぱいだよ!』
けど僕は、もうこの金魚の姿で女の子たちに見られることは、すっかり慣れてるし。今更、たとえ1000人の女の子が会場に集まっていたとしても…。
『もうすぐね。やっとあなたは《女傑》って言われる女の子になれる…』
詩織…なんだか少し嬉しそうだ。
1
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる