女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -躍動編-

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アンナさんのマンションの玄関が、急に騒がしくなる。


『ただいまー…詩織、信吾くん。ほんと遅くなってごめんねー』

『お待たせー』


アンナさんとナオさんが帰宅したのは午前10時52分。男装衣装に着替え終えた僕が玄関へと向かう。


『アンナさん、ナオさん、お帰りなさい』

『おーっ!その衣装カッコいいね!すごく似合ってる』

『あ、ありがとうです。ナオさん』


この男装衣装で金魚のメイクをしたら、更にイメージは変わるんだろうなぁ…。

靴を脱いだアンナさんがリビングへと急ぐ。


『信吾くん、詩織は?…作り置きして冷蔵庫に入れておいた、おにぎり食べた?』

『はい。食べました。お味噌汁も温めて。詩織は寝室で着替え中です』


ナオさんがダイニングから椅子をリピへ持ってきた。


『じゃあ信吾くん。ここに座って。今日の信吾くんの金魚メイク担当は私だから』

『はい』


僕は両足を揃えたぐらいにして、きちんと椅子に座った。
アンナさんは寝室のドアを開けて入っていく。


『詩織、ただいま』

「あ、お帰りなさい。アンナさん」

『着替え、あとどれくらいで終わりそう?』

「もう10分も掛からないかな」


寝室のドアを少し開け、覗き込むアンナさんと詩織との会話。そのやり取りにちょっと気を取られていた…。


『信吾くん』

『あっ、はい!』

『まずはベースを塗るから、軽く目を閉じて』

『はい』


求められたとおりに目を閉じると、ナオさんがスポンジパフを使って、額…左右の両瞼…鼻筋…鼻の脇から左の頬と右の頬…口の周りから顎部…そして顔の外輪郭へと、順にメイクアップベースを塗ってゆく。


『ナオ、あなた驚くわよ』


あ、アンナさんの声だ。


『ファンデを済ませた瞬間から、彼は更に女の子顔へと一気に大変身するから』

『済ませる前からもう感じてる。ただベースを塗り終えただけでも…なんか可愛いーって雰囲気が、もうじわじわと出始めてる…』

『そうね。私思ってたの。彼は元々の顔形が《女の子っぽい顔》なんじゃないかしら…って』

『うん。私もそう思う』


…ぼくは元々の顔が《女の子っぽい顔》…。

あ、そういえば…高校の時の担任の小林先生も『岩塚くんの目は、お母さんに似て可愛い目をしてる』って…『岩塚くんって、男の子にしては優しい顔ね』って言われたことがあった…。

アンナさんとナオさんは、さらりとそんな会話をしてるけど…それは男子たる僕にとっては、どうなんだろう…良いのか悪いのか…。




ファンデーションが済んだ時点で『はい。一旦目を開けてもいいわよ』と、アンナさんの声。


『アンナ…やっぱりそうね。このパッチリとした形の整った目…これが男の子の目だなんて、絶対間違ってる。可愛い過ぎ』

『ね…でしょ』



…ガァァァーン!!























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