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女装と復讐 -躍動編-

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上達が早い…って言われても、今の僕がなんとか仕上げられるのは、ベースとファンデ、そしてチークぐらい。

眉メイクだって、ちゃんと左右や全体のバランスを目で見て確認しながら、丁寧に描けるようになった…めちゃ遅いけど。

さて…ここからが僕にとっての難所。本当に苦手。

フェルトペン型のリキッドアイライナーを右手に取り、メイクボックスの鏡にぐっと顔を近づかせた。そして左手の中指で、左目のまぶたを軽く押さえながら、アイライナーをそこへ持ってゆく。

うーゎ…アイライナーを持つ右手が震える…。

初めは怖かった。やっぱり目の周辺に、先の尖ったものを近づけるって…慣れるまで凄く怖かったりするよね…って僕だけ?

アイライナーのペン先が、瞼の目頭にようやく無事に到着…はぁ。
ここからすーっと…1回で綺麗なラインを引くのが理想だって、アンナさんが言ってた。

すーっと…すぅーっと…。






…はぁぁーっ。
やっと両目の瞼のライン引きが終わった…ぁ。

ふーぅ…。
僕は呼吸を整えてから、詩織のほうを見た。


『…どうかな?詩織、アイライン…』

『てかさぁ…』


いつもより、ちょっとだけ厳しい表情の詩織。


『…あなた、肩に力が入り過ぎ。もっと力を抜いてアイラインを引きなさい!…それに左右の線のバランス!左瞼より右瞼のほうが線が太いじゃない!』


…ひぃぃぃ。


『左は左で、線が安定してないし!』


こんなに頑張ったのに…詩織からのダメ出し散弾攻撃…。


『はいはい…次ね。まだアイシャドウとビューラー、マスカラもやんなきゃだからね!』


き…厳しすぎ。詩織…。






その後…化粧の全てを終えて唇のメイクも済み、僕はあの特別客室へと入る。


『あ…終わったの?ふふっ。お疲れさまね』


そして僕のメイクの仕上がり具合をアンナさんに確認してもらう。


『…どうですか?』

『そうね…。メイク自体はまだまだね。けど先週と比べると、比にならないほど上達しているわ』


…じょ、上達を認められた!


『ありがとうございます』


やっぱりアンナさんの話し方は、言葉が柔らかくて凄く優しく感じられる。


『あなたは本当に、メイクの才能があるかもしれないわね』

『ほ…本当ですか!?』

『えぇ。本当よ』

『わぁ…ありがとうございます!』


そして僕は、備え付けの簡易洗面台へと向かう。

アンナさんは《僕のメイクの手直し》を提案してくれた…けど、僕からは《一旦すっぴん顔に戻してから、アンナさんに…》を提案。



…メイク顔料は勿体ないけど。























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