女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -躍動編-

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午前8時53分…そして雄二さん、アンナさん、詩織の乗った雄二さんの車は、《藤浦市商業開発広告製作委員会》の事務所と撮影スタジオのある《笹川ビルディング》へと向かい、出発した。

その走り去る雄二さんの車を、美容院の駐車場で見送った僕と春華さん。


『…じゃあ金魚ちゃん、私たちも行きましょっ。ラブラブデェト♪』

『あ………はい』


駐車場に停められていた白色の、ちょっと古めかしい春華さんの軽自動車に乗り、僕らも駐車場から車道へ。ゆっくりと走りだした。


『…これから、どこに向かうんですか?』


目は真っ直ぐ進行方向の先を見たまま、春華さんは答える。


『これからねぇ、大基くんの小物アクセサリー屋さんに行くの。製作をお願いしてた革製の長財布とチェーンを取りに…ね』

革製の長財布とチェーン?
製作をお願いしてた…って?…あー。たぶん、秋良さんの新しい財布かな。

それにしても…廣瀬大基さんのアクセサリー屋さんに行くのって、僕初めてだ。






…約20分後。春華さんの軽自動車は、とある有料駐車場に入って止まった。

車から降りて僕は見回す。

窮屈そうな、小さな雑居ビル群の街並み…目の前には行き交う車も少ない、ちょっと狭い車道。


『なんか…瀬ヶ池の繁華街とは違って、ずいぶんと雰囲気の落ち着いたところですね…』

『うん。でしょ』



そう返事して、春華さんが歩きだしながら、僕に左手を差し出…えっ?
…それは間違いなく《私と手、繋いで》って合図じゃ…。


『ほぉらぁ、金魚ちゃん早く!手…』


…仕方なく、僕は少し急ぎ歩いて春華さんの左隣に追い付き、右手を出して春華さんの左手をそっと握った。

それを一旦優しく解き、互いの指と指を交互に挟みからませるように、ぎゅっと繋ぎ直す春華さん…って、あの…。


『♪きょーおーは可愛ぃ金魚ちゃーんとーぉ♪らぶらぶら~ぁぶデェトですーぅ♪…』


は、春華さん…なにそのアニメ風ノリノリ即興曲は…。







到着した雑居ビル…ってよりは、小さな建物。お店の玄関扉の上に掲げられている看板には《Gnoms.-グノームス-》と書かれている。

春華さんが勢いよく玄関扉を引いて開けた。


『おっはよーう♪大基くーん、美弥ちゃーん』


30秒ほど待って、お店の奥から出てきた大基さんと、それに…女の子?

…床面積は狭いけど…凄い店内。あちこちに置いてあるガラス製のショーケースと展示棚…。
























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