169 / 490
女装と復讐 -躍動編-
page.158
しおりを挟む
今まで僕が金魚であることは、他人には絶対に知られてはいけない《仲間内だけの極秘機密》として堅く守り続けてきた。
それを…たった数時間前に知り合ったばかりの彼に自ら、そんな簡単に教えていいものだろうか…。
仕事仲間の女の子たちに、忠彦くんから『ねぇねぇ、金魚って子知ってる?』なんてならないだろうか…。
けど忠彦くんだって、自分の大胆な秘密を僕に教えてくれたし…。
『…僕がなぜ女装してるのか…教える前に、ひとつ訊いていい?』
『うん。なに?訊きたいことって』
僕は一瞬戸惑ったけど…覚悟してやっぱり訊いた。
『忠彦くんは…金魚って女の子のこと知ってる?』
…まず先に、これを確認しておかないと、話していいかも全く判断できない。
『えっ、なに?まさか…信吾くんが…!?』
ほら、きた…!
僕の思ったとおり知ってたんだ…金魚のこと!
…今の発言、やっぱりマズかったかな…。
『…金魚って源氏名を名乗って働いてんの!?なんだぁ…同じ仕事してたかぁ』
『は?…ぇ?』
『どこのお店?時給は?流行ってるとこ?お店のルールはどう?厳しくない?』
…なんか勘違いしてない…?
『あのさ…んなわけないじゃん!』
『あははは。じゃあコスプレ趣味のほうだったかぁ。あはははは…』
あーぁ。なんだかなぁ…。
心配しただけ、無駄に疲れた…。
僕は忠彦くんに《これから話すことは秘密厳守!》の約束を取り付けて確認し…《僕が女装を始めた発端》《瀬ヶ池の女の子たちへの復讐が最終目的》《それに協力し、支えてくれてる仲間たち》《金魚は今では、瀬ヶ池では有名》…その全てを正直に話して教えた。
…ただじっと、僕を見ている忠彦くん。
『信吾くん。正直に教えてくれてありがとう』
僕も黙ったまま頷いた。
『でもさ、信吾くん。女の子たちに…マジで復讐したいって思うのなら…』
『?』
『…メイク、いつまでも先生に頼ってちゃ駄目だ…って私は思う…』
『えっ…!?』
そして僕は…その後の僕の人生に関わる、忘れられない大切な一言を、忠彦くんから教わることになる。
『女装した姿が、どんなに綺麗であっても、誰よりも可愛かったとしても…突き詰めて言えば…やっぱり《偽物は偽物》…』
忠彦くんは、ゆっくりと立ち上がり…目線を少し俯かせた…。
『…でもさ、偽物だって本気で本物に勝ちたいじゃん…。だから私は…絶対負けたくないから…ひたすら毎日毎日、朝も昼も夜も…メイクして、失敗して、メイクを落として、顔の肌荒れが怖かったけど…またスキンケアしながらメイクをやり直して…そうやって何回も何回も…繰り返して、メイクを頑張ってきたんだ…』
『…うん』
『高級な化粧品を使ってみたいし、それをいっぱい買い集めるために、お金も無駄だって言われるくらい、たくさん使ったよ。でもお金は足りなくなる…まだ若いからお給料は上がらない…だから一生懸命働いてきた…』
小さくて、力無くか細い声…。
過去の頑張ってきた忠彦くんの話を聞いていて…なんだか僕も切なくなってくる…。
そしてしばらく、沈黙の時間…。
僕は息を呑んで彼…彼女の次の一言を待った…。
『全てが偽物だと…心無い誰かに完全否定されても…努力を重ねて身につけた《技術》だけは…誰にも否定できない、唯一の《本物》だと思うんだ…』
『!!』
『誰も教えてくれなかった…だから独学だけど、私が今まで必死で覚えた《メイクテク》だけは、誰にも…どんな女の子たちにも文句は言わせない…言われたくない。絶対に…誰にも負ける気がしない…だから』
『!!!!!』
それを…たった数時間前に知り合ったばかりの彼に自ら、そんな簡単に教えていいものだろうか…。
仕事仲間の女の子たちに、忠彦くんから『ねぇねぇ、金魚って子知ってる?』なんてならないだろうか…。
けど忠彦くんだって、自分の大胆な秘密を僕に教えてくれたし…。
『…僕がなぜ女装してるのか…教える前に、ひとつ訊いていい?』
『うん。なに?訊きたいことって』
僕は一瞬戸惑ったけど…覚悟してやっぱり訊いた。
『忠彦くんは…金魚って女の子のこと知ってる?』
…まず先に、これを確認しておかないと、話していいかも全く判断できない。
『えっ、なに?まさか…信吾くんが…!?』
ほら、きた…!
僕の思ったとおり知ってたんだ…金魚のこと!
…今の発言、やっぱりマズかったかな…。
『…金魚って源氏名を名乗って働いてんの!?なんだぁ…同じ仕事してたかぁ』
『は?…ぇ?』
『どこのお店?時給は?流行ってるとこ?お店のルールはどう?厳しくない?』
…なんか勘違いしてない…?
『あのさ…んなわけないじゃん!』
『あははは。じゃあコスプレ趣味のほうだったかぁ。あはははは…』
あーぁ。なんだかなぁ…。
心配しただけ、無駄に疲れた…。
僕は忠彦くんに《これから話すことは秘密厳守!》の約束を取り付けて確認し…《僕が女装を始めた発端》《瀬ヶ池の女の子たちへの復讐が最終目的》《それに協力し、支えてくれてる仲間たち》《金魚は今では、瀬ヶ池では有名》…その全てを正直に話して教えた。
…ただじっと、僕を見ている忠彦くん。
『信吾くん。正直に教えてくれてありがとう』
僕も黙ったまま頷いた。
『でもさ、信吾くん。女の子たちに…マジで復讐したいって思うのなら…』
『?』
『…メイク、いつまでも先生に頼ってちゃ駄目だ…って私は思う…』
『えっ…!?』
そして僕は…その後の僕の人生に関わる、忘れられない大切な一言を、忠彦くんから教わることになる。
『女装した姿が、どんなに綺麗であっても、誰よりも可愛かったとしても…突き詰めて言えば…やっぱり《偽物は偽物》…』
忠彦くんは、ゆっくりと立ち上がり…目線を少し俯かせた…。
『…でもさ、偽物だって本気で本物に勝ちたいじゃん…。だから私は…絶対負けたくないから…ひたすら毎日毎日、朝も昼も夜も…メイクして、失敗して、メイクを落として、顔の肌荒れが怖かったけど…またスキンケアしながらメイクをやり直して…そうやって何回も何回も…繰り返して、メイクを頑張ってきたんだ…』
『…うん』
『高級な化粧品を使ってみたいし、それをいっぱい買い集めるために、お金も無駄だって言われるくらい、たくさん使ったよ。でもお金は足りなくなる…まだ若いからお給料は上がらない…だから一生懸命働いてきた…』
小さくて、力無くか細い声…。
過去の頑張ってきた忠彦くんの話を聞いていて…なんだか僕も切なくなってくる…。
そしてしばらく、沈黙の時間…。
僕は息を呑んで彼…彼女の次の一言を待った…。
『全てが偽物だと…心無い誰かに完全否定されても…努力を重ねて身につけた《技術》だけは…誰にも否定できない、唯一の《本物》だと思うんだ…』
『!!』
『誰も教えてくれなかった…だから独学だけど、私が今まで必死で覚えた《メイクテク》だけは、誰にも…どんな女の子たちにも文句は言わせない…言われたくない。絶対に…誰にも負ける気がしない…だから』
『!!!!!』
1
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説


ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。




ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる