女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -躍動編-

page.138

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『…そんな凄い《おばタク》なのに、私たちなんかが乗っても良かったの?…大丈夫なの?』


僕もだけど、詩織だってそう心配してる。

そろそろ新井早瀬駅も近くなってきた。あの先に見える次の交差点を左に曲がれば、もう駅前の大通……えっ!?


『そんな心配はいいのよ。菊ちゃんからのご紹介だったし、それに私の方から《請けさせて》って、反対にお願いしたんだもの』

『……あの…』

『え?』


一瞬…車内の会話が途切れて静まった。


『…瀬ヶ池の大通りの交差点…もう過ぎちゃったんだけど…』

『えぇっ!?』


詩織はびっくりしてる。けど岡ちゃんは落ち着いてる。


『うん。いいのよ。私はあなた達を直接、ハイカラ通りまで送っていくつもりだったから』






さっきの交差点から幾つ目だろうか…。
《おばタク》は、とある交差点をやっと左折した。

更に、今見えるあの交差点から向こう…あの繁華街ゲートをくぐれば《ハイカラ通り》だ。






…ゲートを潜った《おばタク》は、すぐに適当な場所を見付け、路肩に寄せて停車。ハイカラ通りの入り口…既に目の前は女の子だらけ。


『岡ちゃん、料金は今いくら払えばいいの?』


詩織がそう訊く。


『この車は、外観はタクシーにしてるけど、さっき言ったとおり私は《ハイヤー》なんだから、利用料金は後払いでいいのよ』

『あ、そうなんだぁ。じゃあ…岡ちゃん、どうもありがとう』


そう言って、詩織はドアのオープナーに手を掛け、開けようとした。


『待って!詩織ちゃん!』

『!?』


詩織が驚き余って、慌てて手を離し、引っ込める。


『降りる前に…私の電話番号を登録しておいてもらえる?』

『あー。はーい』


…考えればそうだ。帰りも岡ちゃんに迎えに来てもらわなければならないんだから。
岡ちゃんは自分のスマホを上着の内ポケットから出し、詩織もiPhoneをバッグから取り出した。


『じゃあ…詩織ちゃん、いい?』

『はい。準備OK』

『えぇと…090の…』






『…詩織ちゃん、番号の間違いはない?』

『と思うけど…じゃあ岡ちゃん、再確認のために、もう一回番号言ってみて』

『うん。090…』


…長くなりそうだ。そう思いながら窓から外をチラリと見た。
まだまばらだけど、少しずつ…女の子たちが足を止め、集まりはじめてる…。

《集まる》というより、クルマの周りをぐるりと《囲まれてる》って感じ…。






















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