女装と復讐は街の華

女装と復讐 -躍動編-

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…詩織が？卑怯者…？

どんな女の子が、こんな書き込みをしてるのか知らないけど…ネットの匿名性を利用して、その陰で質の悪い誹謗中傷してるほうが、僕から言わせたらよっぽど卑怯者。
そんなのに詩織のことを卑怯者だとか言われたくない…！

それに…詩織がスカウトデビューを省いて専属モデルデビューできたのは、容姿やセンスなどの《素質》や《天性》が詩織にはあったから。どんな勘違いなんだか。

遅かれ早かれ…詩織はアンナさんの知謀な計らいによって美容院クローシュ・ドレの専属モデルになってただろう。
スカウトデビューしてからだとか、時間を掛けてそんな遠回りをするより、この方が近道だし簡単でいいじゃん。

まぁ…好き勝手に金魚のことは、あれこれ書き込めばいいよ。僕は受け流すことくらいはできるから。
けれど、詩織を悪く言うのだけは…金魚は許さない。絶対に。



【ああいう金魚みたいな可愛い顔してる子ってさぁ、だいたいオトコ好き多いんだよねー】

【そうそう。分かるわー。実際あの子、好きそうな顔してるもんねー。瀬ヶ池のイケメンナンパくん何人と「じゃれ合った」か分からないねー】



…はぁ？
金魚がオトコ好き？ナンパ男らとじゃれ合った？…本当にくだらなすぎて、苦笑すらできませんけど。

僕はもう一度、壁掛け時計を見た…８時43分。春華さんが来るまでは、もう少し時間がある…かな。
じゃ、僕はサイト書き込み巡回ついでに《パレット》も確認しておこうか。



【《池川》釣り上げた奴が瀬ヶ池のKING《金魚》】



…えぇ。
なにこれ。金魚を釣り上げた奴が瀬ヶ池の王？…ってこの、バカ丸出しのトピック名…。

でも…ちょっと気になる…？
気持ち悪さに身をブルっと震わせながら…確認のため、ダブルクリッ…止めとこう。
見たら絶対後悔しそうだ…本当にキモすぎ。

瀬ヶ池のナンパ男たち諸君へ。金魚を本気で釣ろうとか思ってるのなら、心置きなく全員この世から滅んでください。By金魚。



《コンコンコン♪》



あ…来た。春華さんだ。
玄関ドアを開けたら…やっぱり。


『こんばんはー信吾くん。今夜は外…すっごく風が強くてめちゃくちゃ寒いよ！』

『あぁ！どうぞ！部屋は暖めてありますから！』

『うん。ありがと♪』


春華さんは急いでブーツを脱いで、猛ダッシュで石油ファンヒーターの前へ。


『あー…生き返るー。暖かーい♪』






『…春華さん、ピアスの穴の安定…どうですか？』

『うん。順調みたいだね』


…だけど、赤姫と黒助くんの金魚ピアスを左耳に下げて連れて歩くには、あと２週間は待ったほうがいいらしい。

金魚それぞれが僕の親指の爪ぐらいの、小さなガラス製の２匹だけど、今の耳のピアス穴の安定状況では《まだ少し重い》からだとか。