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女装と復讐 -躍動編-
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詩織がダイニングから持ってきてくれた椅子に座り、大人しくアンナさんにメイクされている…振袖姿の僕。
詩織も僕と同じく、ダイニングから持ってきたもう1つの椅子に行儀よく座って、黙ってメイクされている僕を今度は見守ってくれている。
ナオさんだって腕を組み、立ったまま興味津々って感じで僕を見ている。
『ふぅ…はい。金魚のメイク終了。振袖に合う髪結いセットメイクしたウィッグを被せて…振袖金魚の完成。じゃ、立ってちゃんとナオにご披露してみる?』
僕の振袖の柄は《百花繚乱》というらしい…確かに豪華で綺麗。
後ろ髪を結われたウィッグは、その後ろ髪を留めるように、大きな藤の紫の花の髪刺で飾られていた。
僕は立ち上がる補助のために差し伸べられた、アンナさんの右手に自分の左手を乗せ重ねて、よいしょと立ち上がる。
『金魚!…こっち見て♪』
僕は、僕を呼んだ詩織のほうへ、体ごとゆっくりと向けた。
『きゃはは。凄いねー!金魚可愛ーい♪』
自分のiPhoneで、振袖姿の僕を撮る詩織。詩織の笑顔に釣られて、僕もまた笑顔になってしまった。
…そしてもう一度体をひねって、改めてナオさんの方へ体ごと向く。
『どう?ナオ。この子がさっきの信吾くんだとは思えないでしょ?』
僕は今度は体裁悪そうに…ちらっとナオさんを見た。
『うん…思えない。ほんと信じらんない。でも、さっきの男の子の面影も、微かにだけどしっかりと残ってる…なのに普通の女の子以上に…完璧にもの凄く可愛い振袖姿の女の子に仕上がってる…』
アンナさんは少し自慢気な微笑みで、僕のメイク顔を間近で覗き込んでいるナオさんを見ている。
『…こんなに間近で見てるのに…この子が男の子だなんて全っ然判らない。さすがアンナ…凄いよ』
『あの…ナオ。悪いんだけど…今見たことは、誰にも話さないで…』
少し真顔に戻ったアンナさんは、ナオさんの隣に立ってそうお願いした。
『うん、解ったわ。この男の子に、どんな秘密があるのか知らないけど…アンナのお願いだもの。誰にも話さないから』
『ありがとう。ナオ』
…僕はまた振り返り、詩織の隣へと…そろりそろりと歩き寄った。そして小声で詩織に訊く…。
『…ねぇ、ナオさんって…アンナさんとどんな関係の人なの…?』
『なんで直接訊かずに私に訊くの?ナオさんは、アンナさんの使ってる化粧品の販売店のオーナーさん!』
『ちょ…声大きいって…詩織…!』
振り向いたら…ナオさんとアンナさんが揃って、ハッとした顔で僕を見てたし…。
『……。』
有坂奈緒さん、29歳。
国内・海外メーカーを問わず、多くのブランド化粧品を取り扱う化粧品店《BlossoM.》の女性オーナー。
アンナさんとは美容専門学校当時からの親友で、付き合いはもう10年以上になるらしい。
『…でね。結局…私が《ビューティー・アドバイザー》になる《お店を持ちたい》なんて言ったもんだから…アンナが《じゃあ…私は美容師になる》って…』
ナオさんが語ってる最中、それを慌てたようにアンナさんが止めに入った。
『…そんな話はもういいってば。ナオ。あなたと話してると、いつもそんな古い話になる…』
『うん…本当は、アンナがBAやりたかったんだよね…。ごめんね…アンナ』
詩織も僕と同じく、ダイニングから持ってきたもう1つの椅子に行儀よく座って、黙ってメイクされている僕を今度は見守ってくれている。
ナオさんだって腕を組み、立ったまま興味津々って感じで僕を見ている。
『ふぅ…はい。金魚のメイク終了。振袖に合う髪結いセットメイクしたウィッグを被せて…振袖金魚の完成。じゃ、立ってちゃんとナオにご披露してみる?』
僕の振袖の柄は《百花繚乱》というらしい…確かに豪華で綺麗。
後ろ髪を結われたウィッグは、その後ろ髪を留めるように、大きな藤の紫の花の髪刺で飾られていた。
僕は立ち上がる補助のために差し伸べられた、アンナさんの右手に自分の左手を乗せ重ねて、よいしょと立ち上がる。
『金魚!…こっち見て♪』
僕は、僕を呼んだ詩織のほうへ、体ごとゆっくりと向けた。
『きゃはは。凄いねー!金魚可愛ーい♪』
自分のiPhoneで、振袖姿の僕を撮る詩織。詩織の笑顔に釣られて、僕もまた笑顔になってしまった。
…そしてもう一度体をひねって、改めてナオさんの方へ体ごと向く。
『どう?ナオ。この子がさっきの信吾くんだとは思えないでしょ?』
僕は今度は体裁悪そうに…ちらっとナオさんを見た。
『うん…思えない。ほんと信じらんない。でも、さっきの男の子の面影も、微かにだけどしっかりと残ってる…なのに普通の女の子以上に…完璧にもの凄く可愛い振袖姿の女の子に仕上がってる…』
アンナさんは少し自慢気な微笑みで、僕のメイク顔を間近で覗き込んでいるナオさんを見ている。
『…こんなに間近で見てるのに…この子が男の子だなんて全っ然判らない。さすがアンナ…凄いよ』
『あの…ナオ。悪いんだけど…今見たことは、誰にも話さないで…』
少し真顔に戻ったアンナさんは、ナオさんの隣に立ってそうお願いした。
『うん、解ったわ。この男の子に、どんな秘密があるのか知らないけど…アンナのお願いだもの。誰にも話さないから』
『ありがとう。ナオ』
…僕はまた振り返り、詩織の隣へと…そろりそろりと歩き寄った。そして小声で詩織に訊く…。
『…ねぇ、ナオさんって…アンナさんとどんな関係の人なの…?』
『なんで直接訊かずに私に訊くの?ナオさんは、アンナさんの使ってる化粧品の販売店のオーナーさん!』
『ちょ…声大きいって…詩織…!』
振り向いたら…ナオさんとアンナさんが揃って、ハッとした顔で僕を見てたし…。
『……。』
有坂奈緒さん、29歳。
国内・海外メーカーを問わず、多くのブランド化粧品を取り扱う化粧品店《BlossoM.》の女性オーナー。
アンナさんとは美容専門学校当時からの親友で、付き合いはもう10年以上になるらしい。
『…でね。結局…私が《ビューティー・アドバイザー》になる《お店を持ちたい》なんて言ったもんだから…アンナが《じゃあ…私は美容師になる》って…』
ナオさんが語ってる最中、それを慌てたようにアンナさんが止めに入った。
『…そんな話はもういいってば。ナオ。あなたと話してると、いつもそんな古い話になる…』
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