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女装と復讐 -発起編-
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『…実は…私は本当なら、まだイギリスに語学留学中のはずでした。来月…というか、来年1月に帰国する予定だったんですけど…』
彩乃は続けて《G.F.アワードにノミネートされたことを聞いて急遽、帰国を早めた》ことを観客席のみんなに伝えた。
『…だって…まさか、あのたくさんのお洒落な女の子たちの中から選んでもらえて…お姉ちゃんも立った、このステージに私も立てるなんて…それは夢のようだったし、叶って凄く嬉しかったし…一生に一度のことだし…』
最後に『ありがとうございました』と一言言い、マイクスタンドから一歩下がると、彩乃は深々とお辞儀をした。
えっ?…もう終わり?自己紹介とかは?
観客や審査員の方たちに向かって頭を下げた彩乃。
突然言い忘れた何かを思い出したのか、観客席から盛大な拍手が湧くなか慌ててもう一度、マイクスタンドへと駆け戻る。
『ごめんなさい…急に思い出しちゃって。あ、あの…最後に一言いいですか?』
次に続く彩乃の一言に関心を寄せているのか…拍手はいったん止んで会場内は再び、しんと静まり返った。
『私は…お姉ちゃんは今でも《瀬ヶ池で1番の女の子》だって思っています。けど…お姉ちゃん、6年前に瀬ヶ池を卒業して…芸能界に行っちゃった…』
んん?…急に、なんの話?
『…だから、今度は私が…お姉ちゃんみたいに《この街で1番の女の子だね》って言われるようになりたいです。頑張りたいです!』
…はぁぁっ!?
『金魚ッ!』
僕は慌てて、再び詩織の横顔を見た…詩織もすぐ振り向いて、僕らは互いを見合った。
『今の…ちゃんと聞いてたよね!?』
『うん』
あの子…伊藤鈴の妹、丹波彩乃も《瀬ヶ池で1番の女の子》を狙ってる!?
僕だって…金魚だって1番を狙ってる。だけど、金魚には《他の女の子たちより可愛い》って以外、特に特徴がないというか…太刀打ちする《手段》がない…。
…どういうことか、って?
じゃあ例えば、その得意の《可愛いという方向性》で、金魚が彩乃に勝てるのか!?
いや…勝てる気なんてしない。だって、彩乃は《本物の天使みたいに可愛い》実姉、伊藤鈴にそっくりじゃん…。
加え併せて言えば…彩乃は《本物の女の子》だけど、金魚は女装しただけの《偽物》…。
僕の頭の中で、不安が更に不安を煽り…この体は誰にも分からないくらい、小さく震えだした…。
『金魚…負けないでね!絶対、瀬ヶ池で1番になるんだもんね!』
それを今訊かれても…『うん』とは…はっきりと詩織に答えてあげられなかった…。
自信に満ちた誇らしげな笑顔で、ステージの中央に立つ彩乃。
対して未だ不安気に、その実の妹を見詰めている姉、伊藤鈴…。
彩乃は続けて《G.F.アワードにノミネートされたことを聞いて急遽、帰国を早めた》ことを観客席のみんなに伝えた。
『…だって…まさか、あのたくさんのお洒落な女の子たちの中から選んでもらえて…お姉ちゃんも立った、このステージに私も立てるなんて…それは夢のようだったし、叶って凄く嬉しかったし…一生に一度のことだし…』
最後に『ありがとうございました』と一言言い、マイクスタンドから一歩下がると、彩乃は深々とお辞儀をした。
えっ?…もう終わり?自己紹介とかは?
観客や審査員の方たちに向かって頭を下げた彩乃。
突然言い忘れた何かを思い出したのか、観客席から盛大な拍手が湧くなか慌ててもう一度、マイクスタンドへと駆け戻る。
『ごめんなさい…急に思い出しちゃって。あ、あの…最後に一言いいですか?』
次に続く彩乃の一言に関心を寄せているのか…拍手はいったん止んで会場内は再び、しんと静まり返った。
『私は…お姉ちゃんは今でも《瀬ヶ池で1番の女の子》だって思っています。けど…お姉ちゃん、6年前に瀬ヶ池を卒業して…芸能界に行っちゃった…』
んん?…急に、なんの話?
『…だから、今度は私が…お姉ちゃんみたいに《この街で1番の女の子だね》って言われるようになりたいです。頑張りたいです!』
…はぁぁっ!?
『金魚ッ!』
僕は慌てて、再び詩織の横顔を見た…詩織もすぐ振り向いて、僕らは互いを見合った。
『今の…ちゃんと聞いてたよね!?』
『うん』
あの子…伊藤鈴の妹、丹波彩乃も《瀬ヶ池で1番の女の子》を狙ってる!?
僕だって…金魚だって1番を狙ってる。だけど、金魚には《他の女の子たちより可愛い》って以外、特に特徴がないというか…太刀打ちする《手段》がない…。
…どういうことか、って?
じゃあ例えば、その得意の《可愛いという方向性》で、金魚が彩乃に勝てるのか!?
いや…勝てる気なんてしない。だって、彩乃は《本物の天使みたいに可愛い》実姉、伊藤鈴にそっくりじゃん…。
加え併せて言えば…彩乃は《本物の女の子》だけど、金魚は女装しただけの《偽物》…。
僕の頭の中で、不安が更に不安を煽り…この体は誰にも分からないくらい、小さく震えだした…。
『金魚…負けないでね!絶対、瀬ヶ池で1番になるんだもんね!』
それを今訊かれても…『うん』とは…はっきりと詩織に答えてあげられなかった…。
自信に満ちた誇らしげな笑顔で、ステージの中央に立つ彩乃。
対して未だ不安気に、その実の妹を見詰めている姉、伊藤鈴…。
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