119 / 490
女装と復讐 -発起編-
page.108
しおりを挟む
僕らはアンナさんの車から降りた。今日も心地好いくらいの快晴だ。日差しは暖かいし、風もそんなに冷たくない。
『じゃあ、アンナさん。行ってきます』
『ちゃんと午後4時には電話ちょうだいね』
『はーい』
いつものように、走り去るアンナさんの車を2人で見送り、僕らは《パステル・スクェア81》へと向かう。
藤浦市桜野区…早瀬ヶ池のある新井区の南隣区。藤浦市のシンボルタワーとも云える48階建ての超高層ビル《la satif emplie》が建つ商業雑居街。
この嘉久見大通り沿いには、たくさんの高級ホテルやビジネスホテル、旅館などの宿泊施設のほか、美波県警の藤浦市警察本部や藤浦消防本部、電力会社や大手建設会社、最近テレビ局と合併した大きな《藤浦FM放送ビル》などが並ぶ。
そしてパステル・スクェア81も、この大通り沿いの《嘉久見緑地公園》の敷地内にある。
平日はビジネススーツ姿の男性や女性が多く往来してるし、休日でも瀬ヶ池みたいな女の子たちの姿は、アンプリエ以外では殆ど見ないんだけど…今日なんかは特に、嘉久見大通りのあっちこっちで可愛く着飾った女の子たちを多く見掛ける。
『今日の嘉久見大通り、《G.F.アワード》の日だからか、いつもより人通りが多いねー』
『うん。特にお洒落な女の子たちを多く見るね』
…なんだか詩織は楽しそうだ。目がキラキラしてる。
『今日の《パススク81》には、女の子雑誌の取材班とか、いっぱい来てるしー』
『へぇ…そうなんだ』
『うん。《リンちゃん》が特別審査員だから余計かな、って言われてるわ』
……んん?
『リンちゃん?』
『ほらぁ、リンちゃんだよ。ここ藤浦市出身の《伊藤鈴》ちゃん』
『あー。い、伊藤鈴ね…そうそう…藤浦市出身…』
『?』
詩織が…疑いの目で僕を睨む…。
『あなた…まさか、鈴ちゃんが藤浦市出身だったってこと…知らなかったんじゃ…?』
『えっ!?…いやぁ…もちろん知ってたし…』
僕の目の前に、詩織は立ちはだかるように回り込んで、それで急に立ち止まった僕の顔を…じーっと見る…。
そもそも出身地がどうとか、って以前に…伊藤鈴っていう、その芸能人のことを…本当は僕はなにも知らない…。
『じゃあ…鈴ちゃんが、あなたの通う宮端学院大学の卒業生…先輩だってことも…?』
『…えぇっ!?』
伊藤鈴っていう、その芸能人…僕の大学の先輩だったんだ…もちろんながら、知らなかった…。
『う、うん。もちろん知ってる…僕の大学を卒…』
『はい嘘ー。今あなたは、知ったかぶりの嘘をつきましたー』
『……。』
『あれれぇ?反論は?できないでしょ。きゃはははは♪』
く…くそぅ、悔しい…!
伊藤鈴、24歳。一応…今大人気の《アイドル》だけど、バラエティ番組や、美味しいお店ご紹介のレポーターなどで活躍しているせいか、どちらかというと《芸能人》って印象のほうが強い。
んまぁ…そんな伊藤鈴ちゃんのことを、このときの僕はなにも知らなかったんだけど。
『ほら、見えてきたよ。《パステル・スクェア81》』
中低層ビルたちが整列して並ぶ、大通り沿いのその一区画が、6mほどぱあっと広く開けている。その入口から奥は、更に広大に開けていて《都心の癒しの地》とでも言えるかのような、美しく植林された豊かな緑地公園となっていた。
園内の道々は全てアスファルトが設けられて敷かれ、車も入園許可さえ取得すれば容易に緑地公園内を徐行し通行できる。
そして緑地公園の先に、建物と隣接したドーム型のガラス屋根《パステル・スクェア81》が、とても美しくキラリと輝いて、遠くに見えている。
『じゃあ、アンナさん。行ってきます』
『ちゃんと午後4時には電話ちょうだいね』
『はーい』
いつものように、走り去るアンナさんの車を2人で見送り、僕らは《パステル・スクェア81》へと向かう。
藤浦市桜野区…早瀬ヶ池のある新井区の南隣区。藤浦市のシンボルタワーとも云える48階建ての超高層ビル《la satif emplie》が建つ商業雑居街。
この嘉久見大通り沿いには、たくさんの高級ホテルやビジネスホテル、旅館などの宿泊施設のほか、美波県警の藤浦市警察本部や藤浦消防本部、電力会社や大手建設会社、最近テレビ局と合併した大きな《藤浦FM放送ビル》などが並ぶ。
そしてパステル・スクェア81も、この大通り沿いの《嘉久見緑地公園》の敷地内にある。
平日はビジネススーツ姿の男性や女性が多く往来してるし、休日でも瀬ヶ池みたいな女の子たちの姿は、アンプリエ以外では殆ど見ないんだけど…今日なんかは特に、嘉久見大通りのあっちこっちで可愛く着飾った女の子たちを多く見掛ける。
『今日の嘉久見大通り、《G.F.アワード》の日だからか、いつもより人通りが多いねー』
『うん。特にお洒落な女の子たちを多く見るね』
…なんだか詩織は楽しそうだ。目がキラキラしてる。
『今日の《パススク81》には、女の子雑誌の取材班とか、いっぱい来てるしー』
『へぇ…そうなんだ』
『うん。《リンちゃん》が特別審査員だから余計かな、って言われてるわ』
……んん?
『リンちゃん?』
『ほらぁ、リンちゃんだよ。ここ藤浦市出身の《伊藤鈴》ちゃん』
『あー。い、伊藤鈴ね…そうそう…藤浦市出身…』
『?』
詩織が…疑いの目で僕を睨む…。
『あなた…まさか、鈴ちゃんが藤浦市出身だったってこと…知らなかったんじゃ…?』
『えっ!?…いやぁ…もちろん知ってたし…』
僕の目の前に、詩織は立ちはだかるように回り込んで、それで急に立ち止まった僕の顔を…じーっと見る…。
そもそも出身地がどうとか、って以前に…伊藤鈴っていう、その芸能人のことを…本当は僕はなにも知らない…。
『じゃあ…鈴ちゃんが、あなたの通う宮端学院大学の卒業生…先輩だってことも…?』
『…えぇっ!?』
伊藤鈴っていう、その芸能人…僕の大学の先輩だったんだ…もちろんながら、知らなかった…。
『う、うん。もちろん知ってる…僕の大学を卒…』
『はい嘘ー。今あなたは、知ったかぶりの嘘をつきましたー』
『……。』
『あれれぇ?反論は?できないでしょ。きゃはははは♪』
く…くそぅ、悔しい…!
伊藤鈴、24歳。一応…今大人気の《アイドル》だけど、バラエティ番組や、美味しいお店ご紹介のレポーターなどで活躍しているせいか、どちらかというと《芸能人》って印象のほうが強い。
んまぁ…そんな伊藤鈴ちゃんのことを、このときの僕はなにも知らなかったんだけど。
『ほら、見えてきたよ。《パステル・スクェア81》』
中低層ビルたちが整列して並ぶ、大通り沿いのその一区画が、6mほどぱあっと広く開けている。その入口から奥は、更に広大に開けていて《都心の癒しの地》とでも言えるかのような、美しく植林された豊かな緑地公園となっていた。
園内の道々は全てアスファルトが設けられて敷かれ、車も入園許可さえ取得すれば容易に緑地公園内を徐行し通行できる。
そして緑地公園の先に、建物と隣接したドーム型のガラス屋根《パステル・スクェア81》が、とても美しくキラリと輝いて、遠くに見えている。
1
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
女ハッカーのコードネームは @takashi
一宮 沙耶
大衆娯楽
男の子に、子宮と女性の生殖器を移植するとどうなるのか?
その後、かっこよく生きる女性ハッカーの物語です。
守護霊がよく喋るので、聞いてみてください。
後悔と快感の中で
なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私
快感に溺れてしまってる私
なつきの体験談かも知れないです
もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう
もっと後悔して
もっと溺れてしまうかも
※感想を聞かせてもらえたらうれしいです
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる