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女装と復讐 -発起編-
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僕は詩織の背後に、アンナさんがこっちへ向かって来るのが視界の端に見えた。
それに気付きながらも、アンナさんを直接見ないよう気をつけながら、小声で慌てて詩織にそのことを伝える。
『詩織の後ろ!アンナさんがこっちに来てる!』
『…えっ!』
『いい?そんな暗い顔、絶対アンナさんに見せちゃ駄目だよ!』
『あ、うん…』
少し戸惑っているような表情の詩織。
アンナさんはもう、詩織のすぐ後ろに迫っていた。
『詩織、最後の撮影、行ける?』
『あ、はーい』
背後のアンナさんの声に、詩織は満面の笑顔で振り返った。
『遅いよぉ、アンナさん。でもやっと帰れるー』
『遅くなってごめんね。じゃあ…撮影が済んだら、みんなで何か美味しいもの食べに行きましょう』
『やったー♪』
本当はそんな気分でもないのに…頑張って一生懸命、明るく元気に振る舞って見せている詩織。
控え室を出てゆく詩織の、後ろ姿を見送りながら僕は思い返してた…。
僕が…金魚がこの瀬ヶ池で1番になるって約束、もちろん忘れてなんかないよ。
今日集まってたような、自分たちが一番可愛いんだって酷い勘違いをして天狗になってる、ああいう瀬ヶ池の女の子らの鼻柱をへし折ってやるために、金魚は立ち上がったんだから。
だから詩織、安心して。
そのために金魚は必ず、瀬ヶ池で1番の女の子になる。
けど…詩織は一番大事なことを忘れてる。いや、間違ってるっていうのかな。
前にも少し言ったけど…金魚《だけ》が1番になったって意味がない。
金魚と詩織の《2人が揃って"瀬ヶ池で1番"》になるんだ。
どっちが1番で、どっちが2番とかじゃなくて。
だって金魚と詩織は…お互いを支え合い、この街の1番を目指す大切な一蓮托生の《パートナー》なん…。
『あのー。すみませーん…早く控え室から出てくださーい』
『ちょっと金魚!聞こえないの!?』
『!?』
スタッフの男性と、左手に大きな化粧箱を下げたアンナさんのその声に、僕は我に返った。
『撮影が済んだら、もうそのまま帰るんだから、早く控え室から出て』
『あっ、ごめんなさーい…』
ふと控え室の中をぐるりと見回すと…ありゃ、だーれもいない…。
やっと全ての撮影が済んで《笹川ビルディング》を出たのが…カルティエの腕時計で確認…午後5時23分。もう街はすっかり暗い。
『雄二さん、今から何食いに行きます?』
…ついさっきの、車の停めてあった地下駐車場にて。秋良さんが雄二さんに訊いてた。
『あ?俺は何でもいいよ。小娘ども、お前らは何が食いたい?』
『んー…』
『えっ?』
僕と詩織は顔を見合わせた。
『ね…どうする?金魚』
『えぇ?僕も…お寿司でも何でもいいよ』
『ちょっと金魚、ちゃんと考えてよ!お寿司でも何でもいいよ、って…その答え方ってどうなの!』
…ってことで、お寿司に決定した。
それに気付きながらも、アンナさんを直接見ないよう気をつけながら、小声で慌てて詩織にそのことを伝える。
『詩織の後ろ!アンナさんがこっちに来てる!』
『…えっ!』
『いい?そんな暗い顔、絶対アンナさんに見せちゃ駄目だよ!』
『あ、うん…』
少し戸惑っているような表情の詩織。
アンナさんはもう、詩織のすぐ後ろに迫っていた。
『詩織、最後の撮影、行ける?』
『あ、はーい』
背後のアンナさんの声に、詩織は満面の笑顔で振り返った。
『遅いよぉ、アンナさん。でもやっと帰れるー』
『遅くなってごめんね。じゃあ…撮影が済んだら、みんなで何か美味しいもの食べに行きましょう』
『やったー♪』
本当はそんな気分でもないのに…頑張って一生懸命、明るく元気に振る舞って見せている詩織。
控え室を出てゆく詩織の、後ろ姿を見送りながら僕は思い返してた…。
僕が…金魚がこの瀬ヶ池で1番になるって約束、もちろん忘れてなんかないよ。
今日集まってたような、自分たちが一番可愛いんだって酷い勘違いをして天狗になってる、ああいう瀬ヶ池の女の子らの鼻柱をへし折ってやるために、金魚は立ち上がったんだから。
だから詩織、安心して。
そのために金魚は必ず、瀬ヶ池で1番の女の子になる。
けど…詩織は一番大事なことを忘れてる。いや、間違ってるっていうのかな。
前にも少し言ったけど…金魚《だけ》が1番になったって意味がない。
金魚と詩織の《2人が揃って"瀬ヶ池で1番"》になるんだ。
どっちが1番で、どっちが2番とかじゃなくて。
だって金魚と詩織は…お互いを支え合い、この街の1番を目指す大切な一蓮托生の《パートナー》なん…。
『あのー。すみませーん…早く控え室から出てくださーい』
『ちょっと金魚!聞こえないの!?』
『!?』
スタッフの男性と、左手に大きな化粧箱を下げたアンナさんのその声に、僕は我に返った。
『撮影が済んだら、もうそのまま帰るんだから、早く控え室から出て』
『あっ、ごめんなさーい…』
ふと控え室の中をぐるりと見回すと…ありゃ、だーれもいない…。
やっと全ての撮影が済んで《笹川ビルディング》を出たのが…カルティエの腕時計で確認…午後5時23分。もう街はすっかり暗い。
『雄二さん、今から何食いに行きます?』
…ついさっきの、車の停めてあった地下駐車場にて。秋良さんが雄二さんに訊いてた。
『あ?俺は何でもいいよ。小娘ども、お前らは何が食いたい?』
『んー…』
『えっ?』
僕と詩織は顔を見合わせた。
『ね…どうする?金魚』
『えぇ?僕も…お寿司でも何でもいいよ』
『ちょっと金魚、ちゃんと考えてよ!お寿司でも何でもいいよ、って…その答え方ってどうなの!』
…ってことで、お寿司に決定した。
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