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女装と復讐 -発起編-
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…しばらくして、詩織の可愛らしくも上品な結い髪が完成。
当のお疲れ様のアンナさんはというと…何事もなかったかのように、向こうで座り集まる大人たちの輪の中に混じって、世間話に華を咲かせている。そして、その輪の中に雄二さんもいた。
今は撮影の順番待ちをしている詩織。僕は詩織の隣にパイプ椅子を引き摺り、持ってきて座った。
『…その髪型、なんか凄く豪華。綺麗だね』
『えへへっ。だってアンナさんの《力作》だもんね。んじゃあ…アンナさんに成り代わって……んっん…コホン』
『?』
詩織は軽く咳をして一度目を閉じ、またぱちっと開いて僕を見た。
『…褒めてくれて、ありがとうね』
『あははは。雰囲気ちょっと似てるー』
『きゃははは』
僕と詩織が談笑していると、そこへ秋良さんと一緒にいた春華さんが跳んで来た。
『ちょっと、そこの可愛いお二人さん。なにを楽しそうにお喋りしてんの?』
『あの…春華さん…』
『えっ、なに?』
僕は、さっきの出来事を詩織に話していいか春華さんに訊ねた。
春華さんは一言。
『うん。別にいいんじゃない?』
許可を得たから、僕は詩織に話した。
…突然、僕の目の前に女の子が立ちはだかったこと…それは間違いなく、僕と同じ大学に通う《樋口絵里佳》だったこと…。
急に名前を訊かれた…何故か、理解不能な《名前を教える》のと《キスされる》のとの選択を迫られた…そして大ピンチってところで春華さんに救われたこと…。
『あらら。大変だったわね。ご愁傷様』
『うん…えっ?ご愁しょ…?』
『あの絵里佳って子、可愛い女の子だったら誰にでもチュウを迫るって、私もちょっと前に聞いたことがあるわ…本っ当やだやだ…』
そんな会話の最中、控え室のドアが開いた。さっき案内してくれた男性スタッフが顔を覗かせる。
『橋本さーん。撮影が終了しました』
『あらあら。じゃあ皆さん、お先に失礼するわね』
橋本さん?らしき小太りのおばさんが、控え室を出て行く。そのおばさんにスタッフが挨拶。
『お疲れ様でしたー。雄二さん、杏菜さん…2回目の撮影、いきましょうか』
『あ、はーい』
アンナさんが先に椅子から立ち上がる。
『おーし…んじゃ小娘、2回目いくか!』
『はぁーい』
雄二さん…詩織のこと《小娘》って…。
けど詩織は、小娘なんて呼ばれても《そんなの普通だよ》って表情。
僕と春華さんと秋良さんも、控え室を出て撮影室へ、詩織たちの撮影の見学に向かう。
そして、詩織の撮影準備。
詩織が、あの白いスクリーンの撮影ポイントにスタンバイ。木製の丸椅子に行儀よく座っ…?
『えっ?丸椅子!?』
『そうよ。詩織の撮影は胸から上だもの。全身撮影は要らないから』
…ふぅん。なるほど。
そう説明してくれたアンナさんの左隣に春華さん。右隣に僕が立ち、さらにその隣に秋良さん。全員が揃って撮影の様子を見ていた。
当のお疲れ様のアンナさんはというと…何事もなかったかのように、向こうで座り集まる大人たちの輪の中に混じって、世間話に華を咲かせている。そして、その輪の中に雄二さんもいた。
今は撮影の順番待ちをしている詩織。僕は詩織の隣にパイプ椅子を引き摺り、持ってきて座った。
『…その髪型、なんか凄く豪華。綺麗だね』
『えへへっ。だってアンナさんの《力作》だもんね。んじゃあ…アンナさんに成り代わって……んっん…コホン』
『?』
詩織は軽く咳をして一度目を閉じ、またぱちっと開いて僕を見た。
『…褒めてくれて、ありがとうね』
『あははは。雰囲気ちょっと似てるー』
『きゃははは』
僕と詩織が談笑していると、そこへ秋良さんと一緒にいた春華さんが跳んで来た。
『ちょっと、そこの可愛いお二人さん。なにを楽しそうにお喋りしてんの?』
『あの…春華さん…』
『えっ、なに?』
僕は、さっきの出来事を詩織に話していいか春華さんに訊ねた。
春華さんは一言。
『うん。別にいいんじゃない?』
許可を得たから、僕は詩織に話した。
…突然、僕の目の前に女の子が立ちはだかったこと…それは間違いなく、僕と同じ大学に通う《樋口絵里佳》だったこと…。
急に名前を訊かれた…何故か、理解不能な《名前を教える》のと《キスされる》のとの選択を迫られた…そして大ピンチってところで春華さんに救われたこと…。
『あらら。大変だったわね。ご愁傷様』
『うん…えっ?ご愁しょ…?』
『あの絵里佳って子、可愛い女の子だったら誰にでもチュウを迫るって、私もちょっと前に聞いたことがあるわ…本っ当やだやだ…』
そんな会話の最中、控え室のドアが開いた。さっき案内してくれた男性スタッフが顔を覗かせる。
『橋本さーん。撮影が終了しました』
『あらあら。じゃあ皆さん、お先に失礼するわね』
橋本さん?らしき小太りのおばさんが、控え室を出て行く。そのおばさんにスタッフが挨拶。
『お疲れ様でしたー。雄二さん、杏菜さん…2回目の撮影、いきましょうか』
『あ、はーい』
アンナさんが先に椅子から立ち上がる。
『おーし…んじゃ小娘、2回目いくか!』
『はぁーい』
雄二さん…詩織のこと《小娘》って…。
けど詩織は、小娘なんて呼ばれても《そんなの普通だよ》って表情。
僕と春華さんと秋良さんも、控え室を出て撮影室へ、詩織たちの撮影の見学に向かう。
そして、詩織の撮影準備。
詩織が、あの白いスクリーンの撮影ポイントにスタンバイ。木製の丸椅子に行儀よく座っ…?
『えっ?丸椅子!?』
『そうよ。詩織の撮影は胸から上だもの。全身撮影は要らないから』
…ふぅん。なるほど。
そう説明してくれたアンナさんの左隣に春華さん。右隣に僕が立ち、さらにその隣に秋良さん。全員が揃って撮影の様子を見ていた。
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