女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

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女装と復讐 -発起編-

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12月第2週の金曜日。僕は石油ファンヒーターのスイッチを入れ、自分の部屋の真ん中に立ち、周りをぐるりと見て確認する。


『大丈夫大丈夫。部屋は片付いてて綺麗だ。準備オッケ…ん?ちょっ、待てよ…』


クンカクンカ…クンクン。部屋の匂いを嗅いで回る。匂いはどうだろう…臭くない?気になるから…いちおう《石けんの香りの消臭スプレー》しとこうか…。部屋中あっちこっち…プシュー。

壁掛け時計を見る…午後7時をちょっと過ぎた頃。
…そろそろ来るはず。


《コンコンコン♪》


玄関のドアをテンポ良くノックする音。き、来たぁ…!!


『こんばんはー』

『はい!今…開けます…』


僕はタタッと駆けて玄関へ急ぎ、ガチャリとドアを開けた。


『こんばんは。秋良さ…えっ?』

『あー。こんばんはー。はじめまして』


開けたドアの隙間から、初めて見る綺麗なお姉さんが顔を覗かせた。


『君が…信吾くん?』

『あ…はい』

『あれぇ?噂の金魚ちゃんは?』

『………えっ!?』

『あっははは』


春華さんはケラケラと笑いながら、足元に置いていた小さな圧力鍋をグイッと手渡した。


『部屋にコンロはあるよね?おでん作ってきたの』


僕は無意識にそれを受け取る。


『あ…ありがとうございます。で…秋良さんは?』

『この辺りってさ、ほんと適当な駐車場がないよね』


あー。なるほど。車を停める場所を探してるのかな。


『ねぇ、部屋に入ってもいい?外寒っ…』

『あっ!すみません!どうぞ』

『んじゃ、遠慮なくお邪魔しまーす』


玄関から廊下を進み、部屋に入ると、春華さんは着ていた暖かそうな純白の毛皮のロングコートを脱いだ。


『あのハンガー借りてもいい?』

『あ、どうぞどうぞ』


僕は圧力鍋をガスコンロへ置き、火を着けて部屋に急ぎ戻る。
壁に立て掛けてあった脚部折りたたみ式の小さなテーブルを用意し、部屋の真ん中へ配置。

そのテーブルの正面にゆっくりと、春華さんは正座した。


『よいしょ…っと。信吾くんもここに座って』


座った右隣のカーペットをポンポンと軽く叩く春華さん。
僕は言われたとおり、そこに正座で座る。


『ねぇ…もうちょっとこっちに来なきゃ見られないでしょ…?』


その一言に僕が躊躇していると、逆に春華さんのほうが座ったまま擦り寄ってきた。


『んじゃ…あっち向いて。体ごと』


横を向いた僕の左の耳たぶを、春華さんは右手の親指と人差し指でぐりぐりと揉んでみる。

うわぁ…アンナさん以来、久しぶりに…また綺麗なお姉さん登場…ドキドキドキドキ。
ちょうど?アンナさんと詩織を足して割った感じ…。


『どう?耳たぶ痛くない?』

『…はい。気持ちいいです…』

『あははは♪』


……ほ、本当に耳が…気持ちいい…ドキドキドキドキ。






















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