女装と復讐は街の華

木乃伊(元 ISAM-t)

文字の大きさ
上 下
81 / 490
女装と復讐 -発起編-

page.70

しおりを挟む
僕と詩織の目の前のテーブルにカクテルグラスが2つ、トンと置かれた。グラスの中にはココア色のカクテル。


『?』
『?』


置いたのは秋良さんだ。


『おーし…お前ら。俺からの祝い酒だ。今夜は遠慮なく飲みまくれー!ほら!』


秋良さんが『俺の奢りだから心配すんな』って言ってくれるのは嬉しいんだけど、それ以前に…。


『秋良くん…私たちまだ未成年なんだけど…』

『んな固いこと言うなって。お前ら19だろ?』


僕と詩織は互いの顔を見て確認した。


20ハタチと19なんて、そんなもん大して変わんねーよ。だから俺が飲酒を許可する』

『…なにそれ』


秋良さんからの祝い酒…。
僕は秋良さんと詩織のやり取りを横目に、意を決して両手でグラスを持ち、唇を湿らすように、ほんの少しだけ味わってみた………あ!これチョコレートみたいな味がする…甘い。思ったより飲みやすいかも…!


『ちょっと…金魚!』


僕は意を決してそのココア色のカクテルを一気に半分飲んだ。
(※飲酒は20歳になるまで本当はダメです。未成年者はそれまで我慢しようね。)



『おぉ!さすがだなぁ信吾!』

『秋良くん!金魚が酔い潰れちゃったらどーするの!!』


…なんだか、急に…頭が凄く重く……なにこれ…?


『大丈夫だよ。ちゃんと俺が家まで送ってやるから』

『…いくら女装とはいえ…秋良くんがこんなに可愛い金魚を家まで送るってこと自体が、危険だってのに…』

『あ??詩織、何って?何か言ったか?』

『いーえ。何も言ってませーん』


…なんか…詩織と…秋良さんが………言い合いしてる…?


『ばか野郎!詩織!本当は聞こえてたぞ!金魚がいくら可愛いってもなぁ、そこまで見境な……』

『えっ?ちょっ待っ…金魚…金魚!…きん…』



『…………。』










…ふと目が覚めると…あれ?見慣れた天井が見える…。
あ…ここ、間違いなく僕の部屋だ。

まずベッドの上で上体を起こした。そして部屋の壁掛け時計を見る…もうすぐお昼近くの11時か。
どうやら…僕はあのお酒の一口で酔っ払ってしまったらしい。それで誰かがアパートまで送ってくれたみたい。
アンナさんかな?それとも…秋良さん?記憶が何もない…。


『…あっ!!』


ベッドから立ち上がったとき…僕はそれに気付いた。
僕は女装のワンピース姿のまま寝てた…。振り返ると枕の上にロングヘアーのウィッグ。そして、枕元に僕の学生証。

うわぁぁ…ヤバい!
アンナさんの美容院に、僕の衣服も伊達眼鏡も置いてきたままだ!これじゃ明日、大学に着ていく《まともな服》も無いぞこりゃ…。

気が動転して、一旦は慌ててバタバタと洗面所へ向かうけど…そういや、顔も洗えない…。
今の状況では、もうこの女装姿のままで衣服を取りに行くしかない。顔なんて洗ったら…メイク…どうする…。

僕はもう一度ベッドに行き、ウィッグをバッと手に取って洗面所へとまた戻った。
洗面台の鑑を覗く…良かった。メイクは崩れてない。そのままだ。

僕は無造作にウィッグを被り、下手なりにもなんとかウィッグを整える。

…よし。取りに行こう。
いや待て。この格好でも歯磨きぐらいはできる。

僕は気合を込めて、歯ブラシと歯磨き粉を手に持ち、鏡に映る金魚に向かってウンと頷いた。






準備万端。僕はブーツを履き、恐る恐る玄関から通路に顔を出すと…?


『あら?…んまぁ!!』

『!!!!』


アパートの大家のおばちゃんと目が合ってしまった…!!





















しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

あざといが過ぎる!

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:26

二階から育毛剤

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

~The Tree of Lights~

現代文学 / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:1

追放されたおれが、女になって四姉妹と夢をつかむまで

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:11

妄想の中のテロリストはいつも学校を襲っている

青春 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:77

処理中です...