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女装と復讐 -発起編-
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詩織は、まるでみんなに報告でもするかのように、今日のことを振り返って語り始めた…。
『…瀬ヶ池に着いて…街を歩く金魚の表情は、笑顔も無くて凄く固かった…。すれ違う瀬ヶ池の女の子たちを、静かにただ黙って見詰めるその強い眼差しも…なんだか、じーっと見てたら…もの凄く寂し気に私は一瞬思えたの…』
僕も詩織の言葉を聞きながら、瀬ヶ池デビューである今日一日のことを、詩織と同じように振り返ってた…。
『…せっかく可愛いのに、もう少し笑ったら?って。でも次に行った《アンプリエ》の16階にあるカフェ・スィーツ店では、可愛い笑顔をいっぱい私に見せてくれたよね。金魚』
詩織は僕を見た。僕は今だって自然にできた笑顔を、詩織に優しく見せて返した。
『…金魚はどこにいても、一番目立ってた。お店の中ではカッコいい店員さんたち全員に凄く注目されてたしね。業務だとかって誤魔化しながら名前まで訊かれて、半分ナンパされ掛けてたっぽいよねー。へへっ』
でも詩織は、本当に言い語りたかったのは、今までのそれじゃないんだと付け加えた。
『さっきも言い掛けたけど…金魚はなんだか…不思議な魅力?みたいなものを持ってるの。男の子とか女の子とか、そういうの関係なく…金魚を見た人全員の視線を、こう…奪い集めてしまうような…あの、えぇと…こういうの何って言えばいいの…?』
何かを熱く語りたい雰囲気は伝わってくるけど、それを上手く言葉にできないでいるもどかしさも、見てて凄く伝わってくる。
『あの…とにかく《固い無表情》な時と《凄く可愛い笑顔》の時とのギャップが、金魚の魅力なの』
僕も…多分みんなも、詩織の伝えたい気持ちはもう分かってる。
『今日一日ね…金魚の目の前では絶対言えなかったけど…あの寂しそうな物思い気なときの金魚の横顔も…凄く明るく笑顔を振り撒いてくれてた時の可愛い金魚も…見てて、なぜかぎゅっと抱きしめたくなるような、そんな感情に…ほんとは何度も何度も私…襲われてた』
……えーっ!?
『…でも、そんなの恥ずかしくて、今まで絶対言えなかったし。てゆうか…何言ってんだろう…私…』
『ねぇ詩織』
詩織に声を掛けたのは…アンナさんだった。
『それは詩織だけじゃないわ。私だってそうよ。彼を初めてメイクして、あんなに可愛く素敵に大変身した時の快感は、今でも覚えてるもの』
……えぇぇーっ!?
僕は慌てて、今度は勢いよくアンナさんのほうを振り向いた…ちょっと首を捻って痛かった。
『…瀬ヶ池に着いて…街を歩く金魚の表情は、笑顔も無くて凄く固かった…。すれ違う瀬ヶ池の女の子たちを、静かにただ黙って見詰めるその強い眼差しも…なんだか、じーっと見てたら…もの凄く寂し気に私は一瞬思えたの…』
僕も詩織の言葉を聞きながら、瀬ヶ池デビューである今日一日のことを、詩織と同じように振り返ってた…。
『…せっかく可愛いのに、もう少し笑ったら?って。でも次に行った《アンプリエ》の16階にあるカフェ・スィーツ店では、可愛い笑顔をいっぱい私に見せてくれたよね。金魚』
詩織は僕を見た。僕は今だって自然にできた笑顔を、詩織に優しく見せて返した。
『…金魚はどこにいても、一番目立ってた。お店の中ではカッコいい店員さんたち全員に凄く注目されてたしね。業務だとかって誤魔化しながら名前まで訊かれて、半分ナンパされ掛けてたっぽいよねー。へへっ』
でも詩織は、本当に言い語りたかったのは、今までのそれじゃないんだと付け加えた。
『さっきも言い掛けたけど…金魚はなんだか…不思議な魅力?みたいなものを持ってるの。男の子とか女の子とか、そういうの関係なく…金魚を見た人全員の視線を、こう…奪い集めてしまうような…あの、えぇと…こういうの何って言えばいいの…?』
何かを熱く語りたい雰囲気は伝わってくるけど、それを上手く言葉にできないでいるもどかしさも、見てて凄く伝わってくる。
『あの…とにかく《固い無表情》な時と《凄く可愛い笑顔》の時とのギャップが、金魚の魅力なの』
僕も…多分みんなも、詩織の伝えたい気持ちはもう分かってる。
『今日一日ね…金魚の目の前では絶対言えなかったけど…あの寂しそうな物思い気なときの金魚の横顔も…凄く明るく笑顔を振り撒いてくれてた時の可愛い金魚も…見てて、なぜかぎゅっと抱きしめたくなるような、そんな感情に…ほんとは何度も何度も私…襲われてた』
……えーっ!?
『…でも、そんなの恥ずかしくて、今まで絶対言えなかったし。てゆうか…何言ってんだろう…私…』
『ねぇ詩織』
詩織に声を掛けたのは…アンナさんだった。
『それは詩織だけじゃないわ。私だってそうよ。彼を初めてメイクして、あんなに可愛く素敵に大変身した時の快感は、今でも覚えてるもの』
……えぇぇーっ!?
僕は慌てて、今度は勢いよくアンナさんのほうを振り向いた…ちょっと首を捻って痛かった。
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