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女装と復讐 -発起編-
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瀬ヶ池のハイカラ通り…正式名称《駒見町》…狭い区画に、高層ビルから小さな雑居ビルまでもが、窮屈そうに敷き詰め合って立ち並ぶ歴史ある街。
詩織や僕のお母さんがまだ10代だった頃には、既にハイカラ通りと呼ばれていたらしい。
当時からお洒落な若い女の子らが集まる場所だったのも、今と何も変わらない。
『詩織…今までの瀬ヶ池の街以上に僕らを見る女の子たちの目線が…凄くキツいね…』
『そうね。たぶん私たち、やっぱりここでも目立ってる…他の子たちと比べても負けてない、ってことかもね』
『…うん』
『…女の子たちからキツく注目されて…私、とーっても気持ちいいなー♪』
『……。』
不安気な僕とは相反して、まるで楽しそうな詩織…。
『…あなたは私を見るときは、いっぱい笑顔を見せてくれてとても可愛いのに、やっぱり私以外の瀬ヶ池の女の子たちを見るときは…相変わらず凄く冷静で無表情なのね』
僕は、僕らを睨むように見てくる女の子らを睨み返しながら、詩織を見ずに頷いた。
『でも、今改めて見るとね、金魚の《可愛さ》と《無表情》のそのギャップが何故か上手く釣り合って、人の目を惹きつけてる…てゆうか、不思議な魅力なんだって思ったの。実は《それで良かったんだ》って』
僕が黙って何も返事をしなくても、詩織は続けて僕に語り続けた。
『…このハイカラ通りに一歩入ったら、絶対に気持ちだけは負けちゃダメ。気持ちで負けたら、もう二度とここには戻って来られなくなるから』
『うん。大丈夫。僕は全てを覚悟して、今ここにいるんだから』
『へぇ…そう。じゃあ安心ね』
僕の目の前を通り過ぎようとしている、ちょっと背が高くて、派手な服装の女の子2人組。
『ちょっとちょっと!ねぇ…ほら、あの子…瀬ヶ池で見るの初めてじゃない?』
その1人が僕を指差す。
『あー。ほんとだ。初めてだね。ちょっと他の子より可愛く見えるけど』
『どうせ可愛さだけに自信があって、それでちょっと瀬ヶ池に遊びに来てみた田舎っ子でしょ?』
『あははははー。だから見たことなかったのね。なるほどーそれ言えてるー』
『はははははは…』
…その行き去った女の子らを、僕は目で追うことさえしなかった。僕から言わせれば《眼中にない》2人だったから。
魅力のない歩き方…品のない喋り…ただ派手なだけで、お洒落をはき違えてる格好…。
何より、あの子らのメイクと髪型をアンナさんが今見たら、何って言っただろう…間違いなく酷評するんだろうけど。
『詩織…今の、あの2人に僕は…絶対に負けてなかったよね…?』
『なに言ってんの。当たり前でしょ!あんな言葉はただの醜い《負け惜しみ》よ。こんなに可愛い金魚の相手にもならないわ』
怒ったぐらいにして、詩織が笑顔で言ってくれた。
『うん…ありがとう。詩織』
詩織や僕のお母さんがまだ10代だった頃には、既にハイカラ通りと呼ばれていたらしい。
当時からお洒落な若い女の子らが集まる場所だったのも、今と何も変わらない。
『詩織…今までの瀬ヶ池の街以上に僕らを見る女の子たちの目線が…凄くキツいね…』
『そうね。たぶん私たち、やっぱりここでも目立ってる…他の子たちと比べても負けてない、ってことかもね』
『…うん』
『…女の子たちからキツく注目されて…私、とーっても気持ちいいなー♪』
『……。』
不安気な僕とは相反して、まるで楽しそうな詩織…。
『…あなたは私を見るときは、いっぱい笑顔を見せてくれてとても可愛いのに、やっぱり私以外の瀬ヶ池の女の子たちを見るときは…相変わらず凄く冷静で無表情なのね』
僕は、僕らを睨むように見てくる女の子らを睨み返しながら、詩織を見ずに頷いた。
『でも、今改めて見るとね、金魚の《可愛さ》と《無表情》のそのギャップが何故か上手く釣り合って、人の目を惹きつけてる…てゆうか、不思議な魅力なんだって思ったの。実は《それで良かったんだ》って』
僕が黙って何も返事をしなくても、詩織は続けて僕に語り続けた。
『…このハイカラ通りに一歩入ったら、絶対に気持ちだけは負けちゃダメ。気持ちで負けたら、もう二度とここには戻って来られなくなるから』
『うん。大丈夫。僕は全てを覚悟して、今ここにいるんだから』
『へぇ…そう。じゃあ安心ね』
僕の目の前を通り過ぎようとしている、ちょっと背が高くて、派手な服装の女の子2人組。
『ちょっとちょっと!ねぇ…ほら、あの子…瀬ヶ池で見るの初めてじゃない?』
その1人が僕を指差す。
『あー。ほんとだ。初めてだね。ちょっと他の子より可愛く見えるけど』
『どうせ可愛さだけに自信があって、それでちょっと瀬ヶ池に遊びに来てみた田舎っ子でしょ?』
『あははははー。だから見たことなかったのね。なるほどーそれ言えてるー』
『はははははは…』
…その行き去った女の子らを、僕は目で追うことさえしなかった。僕から言わせれば《眼中にない》2人だったから。
魅力のない歩き方…品のない喋り…ただ派手なだけで、お洒落をはき違えてる格好…。
何より、あの子らのメイクと髪型をアンナさんが今見たら、何って言っただろう…間違いなく酷評するんだろうけど。
『詩織…今の、あの2人に僕は…絶対に負けてなかったよね…?』
『なに言ってんの。当たり前でしょ!あんな言葉はただの醜い《負け惜しみ》よ。こんなに可愛い金魚の相手にもならないわ』
怒ったぐらいにして、詩織が笑顔で言ってくれた。
『うん…ありがとう。詩織』
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