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女装と復讐 -発起編-

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しばらく黙って聞いてたけど、今度は僕が詩織に反論した。


『あのさ…ゴールキーパーみたいだとか、ヒントワードみたいって言うけど、それは仕方ないじゃん』

『仕方ない?へぇー…じゃなんで仕方ないの?』


詩織が目をぱちくりさせてテーブルの上で腕を組み、僕の目をじっと見てきた。


『だって女の子ら、僕が声を掛けても止まりも見向きもせず、無視してスタスタと歩き過ぎて行ってしまうんだからさ!』


…だから両手をいっぱいに伸ばして、進路妨害してたみたいになったし、言葉も《何かのクイズのヒント》みたいに端的になってしまったんだ…と。そして僕はこのまま釈明を続けた。


『つまり…女の子らが僕を避けず、ちゃんと僕の声掛けを聞いてくれて会話が成立してれば、僕はこんな悪いイメージで有名には成らなかったはずなのに』

『なになに?じゃあつまり、あなたが有名になったのは、女の子たちのせいだっての?あなたのおかしなナンパのやり方が先でしょ!?』


…しばらくその論争は続いた。結局《鶏が先か、卵が先か》みたいな、終わらない水掛け論となってしまった。

僕は自分のことを言われている筈なのに、なんか他人事のように可笑しくなってきて…というか、詩織が先にお腹を抱えて笑い始めたから?…僕ら2人は周りの女の子たちの視線も気にせず、ケラケラと大笑い。


『きゃはははは…はぁ…。あーはは…。いっぱい笑っちゃった。でもね…今はちゃんと、あなたの事を《大切なパートナー》だって認めてるから。安心して』


笑い涙を手で拭って…落ち着いた詩織の真面目な表情。僕も笑いが止まって、真面目に頷いて応える。

あ…カウンターから、さっきとは別のイケメン店員が、銀色の丸いトレイにカップを2つ乗せて、こっちへ来るのが見えた。



『あの…ホットのミルクココアをお持ち致しました…』

『わぁー。温かくて美味しそう…ね。金魚』


僕は詩織に頷きながら、店員に…。


『ありがとう』


そう礼を言ってあげたんだけど…ミルクココアをテーブルに置いても、黙って僕と詩織の顔をゆっくりと交互に見ているだけで、一向に戻ろうとしない…?
僕は詩織と、首をかしげながら互いを見合った。


『…?』
『??』


『ほら、沢木、はやくどけよ!』

『あー…悪い』


次にやってきた店員…この店の店員はイケメン揃いか。
こりゃ、このお店が女の子たちに人気なのは、美味しいケーキやスィーツだけじゃないな?…なんてそう思ったり。


『オレンジ風味のエクレアと苺のミルフィーユと…チョコレートのモンブランケーキをお持ち致しました…』


店員がテーブルに、次々と並べて置いていく。
それが済むと今度は突然、照れ臭そうにニヤニヤし始めたイケメン店員…。
このお店は、こんな変な店員ばっかりか…?


『あ、あの…ご注文は以上でよろしいでしょうか…』

『…はい』
『大丈夫でーす』


この店員もさっきの店員みたく、また動かず立ち尽くしている…。


『…いや…ぁ…あのー…』

『?』
『?』


僕と詩織は、また見合った。そして揃って店員を観察するかのように見た。


『あの…なにか?』

『いや…お客さま…お、お二人とも、あの…もの凄くかっ…か、可愛いですね…』


…………はーぁ!?


『し…しっ失礼しました!』


その…おかしな店員は、大袈裟に謝って、慌てて戻っていった…。























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