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女装と復讐 -発起編-

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『はぁ~ぁ…っと。ようやく…この日が来たな』


ロングソファーに座り、伸びをしたあと脚を組んだ秋良さんがそう言う。


『どう?信吾。秋良さんがデザインして、俺が縫製したそのワンピース』


啓介さんに渡された、大きな鞄を覗くと…僕の瀬ヶ池デビュー用のワンピース。あの日、このワンピースのデザイン画が見られなくて、ずっと気になってたんだけど…やっと見られる。


『はい。凄く良いと思います』


…あれ?鞄の中には、まだ何か入ってる…?


『つか信吾、早く着替えてきてよー』

『あ…うん』


僕は詩織に頷いた。


『着替えが済んだら、私を呼んでね』


そうアンナさんが続けて付け加える。僕は急いで、あの特別客室に駆け込んだ。






啓介さんが作ってくれた、女装専用の《黒色の調短丈トランクス》に穿き替え、灰桜色の、腰部が少し絞まったワンピース…裾元に茶色の野薔薇の柄?の刺繍が一周している…これを着て…。


『柔らかくて温かい…うゎ!僕の太ももが半分丸出しなんですげど…』


んまぁ、ミニスカートで慣れてはいたけど…。でも、ちょっと丈が気になる…短め。
あと…えぇと?鞄の中には…。


『琥珀色の、スウェード生地の可愛いショートコート』


早速ワンピースの上に着てみると…上半身をきゅっと締め付けるような感覚…。裾丈は僕のヘソよりも少し上…これもまた短い。
襟元と、十分な長さの袖口には、雪のように真っ白で柔らかなふわふわファーが、ふんだんに施されている…贅沢。




今日は黒スト無し…らしい。素足によれよれの靴下のまま、扉の隙間から顔だけ出してアンナさんを呼ぶ。


『アンナさーん…』

『あーはいはい。靴下はこれ履いて。あと、このファーのブーツもね』


履くと膝下丈のロングブーツ。コートと同じく琥珀色の、毛足の短いファーのヒールブーツだ。






メイクもウィッグも無事に終了。アンナさんが部屋から先に出て、皆に完成したことを報告する。
扉の向こうから聞こえてくる拍手と歓声。


『信吾くん、出てきて』


ブーツの足音をコツコツと鳴らしながら、僕はみんなの前に立った。
わあーっとまた湧き上がる歓声。


『おいおい。お前…ほんとに体細ぇなあ!』

『わぁ!金魚凄く可愛いー!そのショートコートいいなぁー!』




秋良さんも詩織も啓介さんも褒めてくれた。
僕は『こんな可愛い衣装を…ありがとうございます』と、秋良さんと啓介さんにお礼を言った。























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