女装と復讐は街の華

女装と復讐 -発起編-

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詩織が振り向いて、僕のほうを見た。


『じゃあ、あなたの女の子メイクの顔、本当に可愛いから認めてあげる。体型もスレンダーだし、確かにいい線いけると思う。けど…』


……そして詩織は軽く腕を組んで、目を細めて睨むように、僕をじーっと見る。


『あなた、ほんとに瀬ヶ池で《唯一の嬢傑ヒロイン》になれるの？』

『《唯一の嬢傑ヒロイン》？…さぁ』

『さぁ、じゃないわよ』


ただ僕は、自身の《復讐》のために女装するんだ。《瀬ヶ池で唯一の嬢傑ヒロイン》になれるの？…ってなに？どういうこと？

詩織は、アンナさんと同じことを僕に言った。
瀬ヶ池で有名になる…つまりヒロインになる、ってのは容易いことではない…と。


『それじゃ、そろそろ夜も深まってきたし…このビジネスの話の概要等をまとめましょう』


……ビジネスの話？？
アンナさんがそう言ったすぐに、秋良さんが口を挟んだ。


『なぁ、アンナさん。つうか俺たちは、この信吾の《あのクソ生意気なガキ娘らへの復讐》を完璧に達成させる為に補助することと《男だとバレさせない為》に集められた…ってのはもう先に聞いてるけど』

『うん。そうね。だけどそれだけじゃないわ』


アンナさんは続けて言った。


『秋良くんも、みんなも…信吾くんへの提供品は《全て無料投資》ってことでお願いね』


アンナさんの一言に、みんな黙り込んでしまった。


…瀬ヶ池のヒロイン…ビジネスの話…無料投資…。
僕の《復讐劇》を中心に、なんだかもの凄いプロジェクトが動き始めようとしている？…そんな気がした。


『さて…信吾くん』

『ぁ、はい』


アンナさんは、今度は僕を見た。


『女の子たちの集まる瀬ヶ池で、全てがバレてしまったら、あなたは…それはそれは酷い目に遭わせられる…ってのは私、話したわよね？』

『は、はい…ちゃんと聞きました』


アンナさんの真剣な眼指しが、僕の両目を指し貫くかのように思えた。


『でも安心して。私たちが、そうならないように体を張ってでも、あなたをちゃんと護るから』


一瞬、ニコッと笑ってくれたアンナさん。ちょっと緊張してた僕は…アンナさんのその笑顔に、ただ黙ってウンウンウンウンと、頷くことしかできなかった。


『それとね…。あなたが復讐を達成するためには《誰よりもお洒落であること》と《誰よりも可愛く目立つこと》そして《女の子たち全員の注目を集めること》…この全てが必須よ』


僕が復讐を達成するためには…あの、お洒落で固めたハイレベルな女の子たちの集まる瀬ヶ池で…誰よりもお洒落で…誰よりも目立って…注目を集めなければならない…。

そんな凄いこと、僕にできるだろうか…ゴクリ。