33 / 490
女装と復讐 -発起編-
page.18
しおりを挟む
僕は急にコンビニから出てきたスーツ姿の男性と、ぶつかりそうになりながらも角を曲がった。よく見ると…大きなビルが所狭しと並んでて、ここはオフィス街っぽい。
瀬ヶ池の高層ビル街ほどじゃないけれど、凄く高いビルとビルとの隙間に、アンナさんのお洒落な白い美容院《クローシュ・ドレ》がある。
今夜も明かりを路上に注ぐ、美容院の店内が隅々まで見える大きなガラス壁。それを見上げながら玄関へと続く階段を静かに上がり、お店の扉をゆっくりと開けた。
『いらっしゃいま……えっと、お客さま…ご来店予約、入れられていましたか…?』
『えっ?よ、予約!?』
レジの傍にいた従業員のお姉さんに、僕はそう訊かれて驚き、返答に困った。
『あ、いいのよ。尚美ちゃん』
アンナさんは、高校生くらいの若い女の子の髪を、ドライヤーで仕上げている最中だった。
『尚美ちゃん、ちょっと代わって』
『はい』
アンナさんがお客様の女の子に軽く頭を下げ『申し訳ございません』と一言言うのが聞こえた。
尚美というお姉さん従業員と交代し、僕をチラリと見ると《どうぞ。こちらへ》みたいな身振りで、あの【V.I.P. ROOM】の扉の前で待ってくれているアンナさん。
僕を素早く特別客室に誘い込むと、アンナさんもすぐに入って扉をパタンと静かに閉めた。
『じゃ、とりあえずそこに座って』
僕は特別客室の中央にある、あの椅子にまた座った。その僕の左横に立つアンナさん。
『まず…私、まだあなたの名前を聞いてなかったわ。教えてくれる?』
『はい。岩塚信吾です』
『…見掛けによらず、凄く強そうなカッコいい名前ね』
誉めたように聞こえるが、いかにも《名前負けしている》なんて言いたい気だ。
…気にしないけど。
『じゃあ、信吾くん。私に聞いてもらいたい話ってなに?』
『その前に…アンナさんにひとつ訊いてもいいですか?』
『……えぇ。どうぞ』
僕は小さく深呼吸し息を整えて…それから話し出した。
『…アンナさんは《瀬ヶ池のメダカ》を知ってますか…?』
『瀬ヶ池のメダカ?』
アンナさんは軽く腕を組み、少し考え思い出そうとしている素振りを見せた。
『…あ、それなら一度だけ聞いたことあるかな。私が実の妹みたいに可愛がってる子からね。でも詳しくは…』
『僕のことです』
僕が《メダカ》と呼ばれ始めるまでの経緯を、順を追って説明を始めた…。
…田舎者の僕は中学生の頃から早瀬ヶ池に憧れ、瀬ヶ池の近隣に住みたいと思うようになり、藤浦市内のとある大学に入学した…思い描いてたような一人暮らしも始め、そして…可愛い女の子の友達が欲しい、と思った…。
瀬ヶ池の高層ビル街ほどじゃないけれど、凄く高いビルとビルとの隙間に、アンナさんのお洒落な白い美容院《クローシュ・ドレ》がある。
今夜も明かりを路上に注ぐ、美容院の店内が隅々まで見える大きなガラス壁。それを見上げながら玄関へと続く階段を静かに上がり、お店の扉をゆっくりと開けた。
『いらっしゃいま……えっと、お客さま…ご来店予約、入れられていましたか…?』
『えっ?よ、予約!?』
レジの傍にいた従業員のお姉さんに、僕はそう訊かれて驚き、返答に困った。
『あ、いいのよ。尚美ちゃん』
アンナさんは、高校生くらいの若い女の子の髪を、ドライヤーで仕上げている最中だった。
『尚美ちゃん、ちょっと代わって』
『はい』
アンナさんがお客様の女の子に軽く頭を下げ『申し訳ございません』と一言言うのが聞こえた。
尚美というお姉さん従業員と交代し、僕をチラリと見ると《どうぞ。こちらへ》みたいな身振りで、あの【V.I.P. ROOM】の扉の前で待ってくれているアンナさん。
僕を素早く特別客室に誘い込むと、アンナさんもすぐに入って扉をパタンと静かに閉めた。
『じゃ、とりあえずそこに座って』
僕は特別客室の中央にある、あの椅子にまた座った。その僕の左横に立つアンナさん。
『まず…私、まだあなたの名前を聞いてなかったわ。教えてくれる?』
『はい。岩塚信吾です』
『…見掛けによらず、凄く強そうなカッコいい名前ね』
誉めたように聞こえるが、いかにも《名前負けしている》なんて言いたい気だ。
…気にしないけど。
『じゃあ、信吾くん。私に聞いてもらいたい話ってなに?』
『その前に…アンナさんにひとつ訊いてもいいですか?』
『……えぇ。どうぞ』
僕は小さく深呼吸し息を整えて…それから話し出した。
『…アンナさんは《瀬ヶ池のメダカ》を知ってますか…?』
『瀬ヶ池のメダカ?』
アンナさんは軽く腕を組み、少し考え思い出そうとしている素振りを見せた。
『…あ、それなら一度だけ聞いたことあるかな。私が実の妹みたいに可愛がってる子からね。でも詳しくは…』
『僕のことです』
僕が《メダカ》と呼ばれ始めるまでの経緯を、順を追って説明を始めた…。
…田舎者の僕は中学生の頃から早瀬ヶ池に憧れ、瀬ヶ池の近隣に住みたいと思うようになり、藤浦市内のとある大学に入学した…思い描いてたような一人暮らしも始め、そして…可愛い女の子の友達が欲しい、と思った…。
1
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説


ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。




ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる