女装と復讐は街の華

女装と復讐 -発起編-

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…そして、僕の《生まれて初めて》のメイクアップが始まった。

アンナさんは眼鏡を外し、まずは大きな鏡の横にある照明のスイッチを入れた。鏡を囲むLEDの電球、天井や壁に設置された、幾つかのスポットライトが僕を照らした。

次に、脂とり紙やウェットティッシュ？みたいなので、僕の顔の全体を拭いてくれた。それが何だか心地いい…。

そして乾いた柔らかなタオルで、僕の顔を優しく撫でて…僕の顔を一度覗き込んでからちょっと一瞬、何かを考えてすぐ…クリームみたいなの？を僕の額と両頬と顎、鼻頭にペタペタと置き、それをアンナさんは指で延ばす…。

…僕はメイクされているあいだ、僕の顔を真剣な表情で何度か覗き込み、その凄く長い髪をゆさゆさと揺らめかせながら、忙しそうに右に左に行き来する、アンナさんの顔を追って見つめてた。

うわ…アンナさん超綺麗…美人過ぎる…ドキドキドキドキ。

しんと静まりかえった室内に、ワゴンから道具を取り、使った道具をまた置く、カチャカチャという音が響く。

…最後に？目を閉じた僕の上瞼うわまぶたをさっと塗り、上と下の唇も小さな筆？で塗って…。


『あら…いつの間にか、もうメイク終わっちゃった…』


僕のすぐ目の前で、パチパチと何度かまばたきをし、アンナさんは一歩引いて…もう一度僕の顔を見た。
……もう終わった？

鏡を見ると、アンナさんは僕の後ろで、菊江さん…と呼ばれてたオカマのおっさん…と、抱きしめ合っていた。


『あーもう…菊江さーん』

『なによー？アンナちゃんったら』

『メイクしているあいだ…私、ずっと胸がドキドキドキドキしてたぁ』


…え？アンナさんもドキドキ？


『私…初めてのお客さまの時ぐらいメイク中、凄く夢中だったぁ。もう最っ高…気持ちいい…』


まだ抱きしめ合ってるお二人方…でもパッと離れてアンナさんは、僕の横に来た。


『あなたのすっぴん顔のベースの破壊力ときたら凄かったわ！』

『えっ？』



…破壊力って…。



『どう？今のメイクした自分の顔を見て。これが本物の男の子の顔だなんて思えないでしょ？』

『……あの…』

『えっ、何？』


鏡に映る僕の顔…見えないことはない。けど…何だかぼやーっとしている。僕の眼鏡…。


『あっ！ごめんなさい。椅子から立ち上がって、もっと鏡に近づいてみて』


アンナさんにそう言われ、僕は椅子から立ち上がり、ゆっくりと鏡に近づいた…！


『…どう？』

『これ…本当に、僕の顔ですか？』


僕は振り向いてアンナさんのほうを見た。少しぼやけてアンナさんと菊江さんが立っているのが見える。


『うん。もうドキドキが止まらないくらい可愛いでしょ？…うふふ』


…えーっ！？
僕はもう一度、鏡を見た。