女装と復讐は街の華

女装と復讐 -発起編-

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僕はなんだか心がへし折れて、少しぼろぼろになりながら帰路についた。半分沈みかけた太陽…早瀬ヶ池は、見る景色全てが真っ赤に染まっていた。
午後５時20分過ぎの、新井早瀬駅まで伸びる大通りに沿う広い歩道。それと車道とを仕切るように大きな街路樹が、ずーっと向こうまで真っ直ぐに、一定間隔を規則的に保って綺麗に並んでいる。

見渡せば今だって、僕の周りにたくさんいるお洒落な女の子たちが自信有り気に、歩くヒールの音を高鳴らせ響かせながら、僕とすれ違い…または背後から追い越してゆく…。

もういい…見たくない。僕を見て笑いたいんだろ?笑えばいいよ…PARCOん中でも「メダカだ！」って何度も何度も何度も…指差されたよ…。

ずっとこの街は、本当に僕の憧れだった。けれど本物の…今の現実のこの街は、こんな低身長で田舎者で、黒ぶち眼鏡小僧の僕を、優しくなんて受け入れてはくれなかった…ほんとに戦場だった。周りは敵だらけだ…畜生。

ふと正面から歩いてくる女の子２人組。ツンとした冷たい《上から目線》で、僕を見ながらニヤニヤと…嘲笑って向かってくる。僕はすれ違いざまに、そいつらをキツく睨んでやった。


『あははは。メダカの分際でー。どうせまた、私らみたいなお洒落な子たちに相手にされなかったからって、僻ひがみ妄想でもしちゃってるんじゃないの？ほんとキモい奴ー』

『あっはははは。だよねー。ダッサダサな自分の身分をわきまえて睨めってのー。あはははは』



『……くっ！！！』



僕は勢いよく振り返った。高笑いするあの憎々しい２人の後ろ姿が、どんどんと遠ざかり小さくなってゆく。
急に心がぐっと絞め付けられる思いがした…完敗だ。
歩道の路面に長く長く延びる自分の影。それに視線を落とし…溢れ出ようとする涙を、必死に…必死に堪えた…。

瀬ヶ池のあちこちでナンパしているイケメン達のように、いやらしい下心をもって声掛けしてたわけじゃないのに…。ただ純粋に、天使のような…西森さんみたいな…可愛い女の子の友達が欲しかっただけ…だったのに。酷過ぎる…。



『ねぇ、そこの黒ぶちお兄ちゃん』



…もうキャンパス内でも無理。早瀬ヶ池でも無理…これからどうしよう…。絶望感で頭がクラクラする…。



『ちょっと！あんた！私が呼んでんのが聞こえないっての！？』


『…えっ！？』



慌てて頭を上げ、前を向くと…そこに立っていたのは…昼にラーメン屋《甘心麺》で見た《着物姿のオカマのおっさん》だった…。


『………？』