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女装と復讐 -発起編-

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『おはよう美佳ちゃん。昨日大学休んでたみたいだけど…どうしたの?』

『えっ?…別に…何でもな…』

『風邪?』


大学の大受講室。段畑状の教室の中央に、この宮端学院大学で有名な《綺麗な子》の一人、僕と同じ一年生の佐藤美佳ちゃんを発見。その隣に急いで座り、声を掛けたが…。


『んと…あ、そうそう。風邪。だから風邪が伝染うつっちゃうと悪いから今後は私に話し掛けないでね…!』

『あっ!美佳ちゃ…』


…美佳ちゃんは遠くの席へと逃げていってしまった…。
風邪が伝染ると悪いから、って気を遣ってくれるのは嬉しいけど『ね』って…断り方露骨過ぎない…?拒絶された…ガクッ。



『おーい、信吾ぉー』


…僕の名前を呼ぶ嫌な声…おかしなテンション…僕は絶対振り向かない。振り向かなくたって誰だか判るし…。
隣に座った百貫デブ…もう9月も終わるってのに、未だ噴き出す大量の汗…その暑苦しい姿…首に掛けた雑巾みたいなタオル…超キモい…。


『あのー昨夜ネトゲRPGやっててさぁー、やっと出たんだってー。狙ってた超レアな双剣がさぁー』


声を上ずらせて嬉しそうに、マニアックな話をしてくるのが尚更キモい…この百貫ゲーオタが。






美波県藤浦市。僕は中学生の頃から早瀬ヶ池に憧れていて、いつかこの街の近隣で一人暮らしを始められたらなぁ…なんてちょっと思ってた。それで高校の時の先生の薦めもあって、南区にある宮端学院大学に入学した。

…んまぁ、結局借りたアパートは、早瀬ヶ池の近隣じゃなくて、少し離れて藤浦市の西隣の佐原市だったけど。

藤浦市といえば、有名なのは…今話してた新井区の早瀬ヶ池。通称《瀬ヶ池》。東京で言えば『渋谷と六本木を掛け合わせて半分にした感じ』…って説明で解るかな?あくまでもイメージだけど。

高層ビルが幾つも建ち、お洒落な若者たち…特に女の子たち…が集結する、ファッションや流行の発信地…巨大繁華街。瀬ヶ池こそが、僕が一番憧れてた場所。

せっかく真山市押木町…いわゆる《ど田舎》…から出てきて、堂々と自慢できる大学にも入れたし、一人暮らしだって叶った。あとは可愛い女の子の友達でもできたらなぁ…最高なんだけどなぁ。




…だけど現実は、そんなに甘くはなかった…。




僕は夢を現実化するため、入学後からずっとキャンパス内のいろんな女学生に声を掛けた。可愛い女学生ばっかりだけど…。

いきなり《僕と付き合って!》じゃなくても、とりあえずは《可愛い女の子友達》1人ぐらい作ったって悪くないはず。でも、誘った女学生らからの返答っていったら、いつも…。


『あの…ごめんなさい。キャンパス内では、男の子の友達とか作っちゃダメよ!ってママに厳しく言われてるの…』


まだ、これくらいの断りかただったら優しいほう。でもそう言ってた可愛い優希ちゃんは…そのあと1ヶ月もしないうちに、この宮学のなかの先輩イケメンと…。

人前でも全く気にせず、毎日毎日イチャイチャベタベタチュッチュ♡…。付き合い始めたとか信じられない…ショック。




『男友達なら手に余るぐらい間に合ってる。他を当たって』


……とか。


『ごめんなさい。私もう付き合ってる彼氏いるし。彼氏に怒られるから』


……って断る女の子なら日常茶飯事。超キツい女の子になると……。


『……はぁ?あんたさぁ…自分の背が低いとか、ちょっと見た目キモヲタだとか…自分のことちゃんと解って私に言ってる?マジで?誘いとか冗談だよね?あはははは…』




…誘う気が冷めるどころか、逆に腹が立つ。くそぅ…少し見た目が綺麗だからって…ちょっとカッコいい男子学生らにチヤホヤされるからって…に乗んなよ!ムカつく…。

だけど、言われても反論できないこと…背が低めなのは事実…。
身長158.6cm…僕の最近の《身長コンプレックス》…。

キモオタっぽい?てのは僕のどこを見ての判断?いつも黒ぶちの眼鏡を掛けてるから?格好が少し地味で田舎ぽいから?僕はフィギュア集めとかしてないし、漫画オタクでもない。パソコンはアパートにはあるけど、ネットゲームなんてしない。なのに…。

ただ一つ、頭に浮かぶ要因にといったら…あの百貫デブの竹林吉雄だ…!
いつからか、吉雄のほうから僕に近づいて来て…。違うんだ!みんな誤解だよ!僕はあんな百貫デブとは友達でも何でもない!ただ、あいつが勝手に毎日毎日…僕に気軽に話し掛けてくるだけなんだ!本当なんだぁぁぁー!!



最近じゃ、この大学で一番の《究極のブサイク女学生》って言われてる倉ピー朋子にまで『あなたと友達になるなんて…フッ。妥協レベルよね』って…こっちからお断りだっての!この超ブサイクブツブツ顔!!

女の子なら誰だっていいってわけじゃない。僕は…特に天使のような《可愛い女の子》と友達になりたいんだ。
そのうえ、さらに『私、信吾くんのカノジョになりたい…』なんて言ってくれたら…それはそれは天に昇るような心地だね。それが僕の《次の夢》…。




















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