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『故郷』フェルデン
01.木の棒を振りつづけて二十年、なんか真空波がでた
しおりを挟む「都にでて、兵士になる」。子どもの頃からそんなことばかり言っていたミゲル・エルビティも、今年の収穫季で二十三歳を迎えた。
人里離れた山奥の村では、畑に小型モンスターが出没することもよくある話。だから村の男の子には、それなりに戦えるよう幼い頃からモンスターを追い払う術を教える。
ミゲルも例外ではなく、三歳の頃から樫の木を削って作った棒を「鍛錬に使いなさい」と与えられて、他の大人たちに指導されるがまま素振りをつづけていた。
来る日も来る日も、ミゲルは畑仕事の手伝いや家畜の世話を見る合間をぬっては、真面目に素振りをつづけた。
何ヶ月も、何年も、何十年も……。
素振りをはじめて四年ほど経った頃だろうか。少しずつ村の外のことを知っていった彼に、目標ができた。
辺境にある村はたまに小型モンスターが現れるくらいで、あとは大した災害にも見舞われず平和なものだが、都のほうでは違うらしい。
人の体躯をゆうに越える中型モンスターや大型モンスターが現れたり、悪いことを考える輩がいるのだとか。
そんな脅威から人々を守るのが、王国軍の兵士。この存在が、幼いミゲルには眩しかった。
素振りをはじめて十年ほど経った頃には、もうミゲルの決意は固まっていた。
村をでて、都にいって王国軍の兵士になる。その一心で、毎日毎日素振りに明け暮れた。
素振りをはじめて十五年ほど経てば、彼ももう十八歳。
段々と素振りに違和感を持ちはじめた。
だが村の大人たちも、ミゲル自身も、どこまでいったって素人の寄せ集め。素振り以外の方法を知らない。
無駄なことは考えるべきではないと、また素振りに明け暮れた。
素振りをはじめて二十年、つい最近のこと。
真空波が木の棒から放たれて、隣山が真っ二つになった。
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