婚約破棄されたので貴族街で薬屋を始めました

マルローネ

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1話 捨てられた薬士

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「ど、どういうことでしょうか……トトメス様?」

「今言った通りだ。お前の薬士としての技術は私が受け継いでいくことにした。お前はもう用なしということだ」

 何を言われているのか最初は分からなかった。侯爵令息であり私の婚約者でもあるトトメス・クインシー様に呼ばれたわけで。他愛もない話を想像していたから……。

「私の技術を……」

「受け継いだということだ」

 意味がわらかない。私の薬士としての技術を受け継ぐ? なぜそんな話になっているのだろうか。

「なかなか難しかったぞ、お前の技術を真似するのは。流石はアリッサ・マクレガーといったところか」


 アリッサ・マクレガーは私の名前だ。私の技術を真似した? いつどこで……?

「まさか調合中にやたらと監視員の人が多かったのは……」

「そういうことだ。お前の技術を盗ませていたのだ」


 マクレガー家は昔から薬士としての家系として有名だった。子爵家になるけれどその中では地位も高いのではないだろうか。しかし、最近はその技術を受け継ぐ人はいなくて……私は久しぶりに才能があったみたい。だから、昔から調合の勉強をしていた。

 17歳になり一人前として認められた暁にトトメス様との婚約話が出て来たのだ。


 お父さんやお母さんは喜んでくれていたけど……これは。


「お前の技術を貰い受け、王家に進言するつもりだ。大量の薬をつくり大儲けそようとな。私の地位もさらに上がるだろう」

「そんな……それで用なしというのは……」


 技術を盗まれたことも驚きだったけれど、それ以上に心配なのはそのことだった。


「言葉の通りだ。これでお前とは婚約破棄できる」

「婚約破棄って……そんな!」

「ただの子爵令嬢と私では不釣り合いだろう? 我慢ならなかったんだ。愛人としてなら登用してやってもいいぞ」

「ふざけないでください!」

「ははは、そう言うと思ったよ。さっさと出て行け、邪魔なだけだ」

「トトメス様……! 本気なんですか……!」


 彼は静かに首を縦に振った。全く悪びれる様子もなく……。私は涙が出そうになった……あの優しかった彼は全部演技だったのだろうか? 信じられない、技術だって盗まれるし……。


「お前の薬の調合技術を使って大量生産の予定があるんだ。お前はもう用なし……クインシー家の繁栄に役立ってくれたことは感謝しているよ。それではな」


 その後は何を言っても無駄だった。トトメス様、いや、トトメスは全く話を聞いてくれなかったから。私は理不尽に婚約破棄されたことになる……。
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