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最終話 その後……
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さて、その後の話を少しだけしよう。
「ホプキンス、他の隊長と協力し港建設作業を早めるように言うんだ。工期が遅れているぞ」
「畏まりました、レザード様!」
「ちょっと、レザード様! 港の作業員は使い捨てではないんでしょ。その辺りちゃんと考えているんですか!?」
「あ、当たり前だろう……アリシア……」
あの砦での一件が終わり、レザード第二王子殿下は正式に港建設の総責任者に任命された。議会での承認も今まで以上に早かったらしい。
私とケルヴィン様が見守る中、二人は抜群のコンビネーションで港の指揮をしていた。いえ、最近ではアリシアの方が権力が大きくなっている気がするけど……気のせいかしら?
「ケルヴィン様、議会への予算増額の承認……本当にありがとうございました。私やお父様だけでは、議会の承認を得るのはもっと時間が掛かったかと思いますので」
「なに、気にすることはない。国家の利益になる事業に投資することは、王族としての責務だ。むしろ、今回の視察で色々と勉強になったよ」
「勉強でございますか?」
「ああ……まだまだ、視察をしなければならない地域は多いだろう。各領主への聴取を同時並行で進めている。今回の海岸線開発のような、新事業の計画が出てくるかもしれないからな」
「なるほど……それは楽しみでございますね」
「うむ、楽しみだよ! ははははははっ」
各地方が潤えば国家全体が潤うことになる。国民が潤えば、地盤が強くなるということだ。ただ……レザード様とアリシアの仲は良くはない。元々、私への当てつけで無理やりくっついたようなものだし。
いずれは別れるのかもしれないけれど、インクルーダ家の将来の為にはこのままの仲を続けてほしいものだ。あとは私だけれど……。
「ケルヴィン様、本当によろしいのですか? 私などで……」
「そうだな。ルアナとの婚約であれば、議会もすぐに納得してくれるさ」
「それはそうかもしれませんが……」
これみよがしに自慢をする気はなけれど、公爵令嬢という肩書きは確かに王太子と並んで歩けるものだとは思う。ただ、レザード様の婚約破棄騒動があったので、あまり肩書きでの婚約というのはしてほしくなかった。
ケルヴィン様のことはもちろん信用しているけれど、こればかりは条件反射になってしまっている。
「すぐに信用出来なくても問題はないさ。これから、ゆっくりと歩んでいけばいいのだから。どうかな?」
「ケルヴィン様……はい。私の方こそよろしくお願いいたします」
「ありがとう、最高の誉め言葉だよ」
「誉め言葉でございますか? うふふふ」
「はははははっ」
私は心の底から笑うことが出来ていた。こんなに笑ったのはいつ以来だろう? アリシアの本音が聞けた夜も心は穏やかになっていたけれど、それとはまた別の笑い。
ケルヴィン様とならずっと笑顔でやっていけるかもしれない。そんな確信が私の中で渦巻いていた。
終わり
「ホプキンス、他の隊長と協力し港建設作業を早めるように言うんだ。工期が遅れているぞ」
「畏まりました、レザード様!」
「ちょっと、レザード様! 港の作業員は使い捨てではないんでしょ。その辺りちゃんと考えているんですか!?」
「あ、当たり前だろう……アリシア……」
あの砦での一件が終わり、レザード第二王子殿下は正式に港建設の総責任者に任命された。議会での承認も今まで以上に早かったらしい。
私とケルヴィン様が見守る中、二人は抜群のコンビネーションで港の指揮をしていた。いえ、最近ではアリシアの方が権力が大きくなっている気がするけど……気のせいかしら?
「ケルヴィン様、議会への予算増額の承認……本当にありがとうございました。私やお父様だけでは、議会の承認を得るのはもっと時間が掛かったかと思いますので」
「なに、気にすることはない。国家の利益になる事業に投資することは、王族としての責務だ。むしろ、今回の視察で色々と勉強になったよ」
「勉強でございますか?」
「ああ……まだまだ、視察をしなければならない地域は多いだろう。各領主への聴取を同時並行で進めている。今回の海岸線開発のような、新事業の計画が出てくるかもしれないからな」
「なるほど……それは楽しみでございますね」
「うむ、楽しみだよ! ははははははっ」
各地方が潤えば国家全体が潤うことになる。国民が潤えば、地盤が強くなるということだ。ただ……レザード様とアリシアの仲は良くはない。元々、私への当てつけで無理やりくっついたようなものだし。
いずれは別れるのかもしれないけれど、インクルーダ家の将来の為にはこのままの仲を続けてほしいものだ。あとは私だけれど……。
「ケルヴィン様、本当によろしいのですか? 私などで……」
「そうだな。ルアナとの婚約であれば、議会もすぐに納得してくれるさ」
「それはそうかもしれませんが……」
これみよがしに自慢をする気はなけれど、公爵令嬢という肩書きは確かに王太子と並んで歩けるものだとは思う。ただ、レザード様の婚約破棄騒動があったので、あまり肩書きでの婚約というのはしてほしくなかった。
ケルヴィン様のことはもちろん信用しているけれど、こればかりは条件反射になってしまっている。
「すぐに信用出来なくても問題はないさ。これから、ゆっくりと歩んでいけばいいのだから。どうかな?」
「ケルヴィン様……はい。私の方こそよろしくお願いいたします」
「ありがとう、最高の誉め言葉だよ」
「誉め言葉でございますか? うふふふ」
「はははははっ」
私は心の底から笑うことが出来ていた。こんなに笑ったのはいつ以来だろう? アリシアの本音が聞けた夜も心は穏やかになっていたけれど、それとはまた別の笑い。
ケルヴィン様とならずっと笑顔でやっていけるかもしれない。そんな確信が私の中で渦巻いていた。
終わり
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