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22話 ジクトと語らう
しおりを挟む「サンセット・メジラマ侯爵との件は本当に気の毒だったな」
「ええ、ありがとう。結構、大変なことだったけど、なんとか解決したわ」
「本当に解決したのか?」
私達はその後、サンセット様の件について話し合っていた。舞踏会で語らう内容でもないけれど、自然の成り行きで……
まだ、彼らへの罰が決まったわけではないので、解決と言うわけではないだろう。ただし、ゼノン国王陛下にその辺りは一任してあるので、実質的には解決しているも同然だ。サンセット様とシリス様の二人は連行されて行ったしね。
「サンセット様も今頃は牢獄行きになっているんじゃないからしら」
「本当の意味で投獄はされてはいないだろうが、事実上は投獄と変わらないだろうな。お前の話を聞く限り」
「そうよね……」
サンセット様もシリス様も屋敷に軟禁状態になっているだろう。さらに、彼らの父君や母君に叱責されているはず。特にシリス様は公爵家に知られることを大変恐れていたしね……自業自得とはいえ、辛い目に遭っていることだろう。
「では今のところは、どんな罰が下るのかを待っている状態というわけか」
「そういうことになるわね」
「ふむ……いっそのこと、メジラマ侯爵家もトークン公爵家も没落させれば良いと思うがな」
「ちょっとちょっと、ジクト。それは穏やかではないわよ? 二人の家族には罪があるわけじゃないのだし……」
流石に一族郎党没落はどうかと思えた……可哀想という感情が生まれるわけではないけれど。
「それはそうかもしれないが、連帯責任というのはどうしても発生してしまうだろ? 俺としては、ウィンベルに対する不敬罪で投獄、一族郎党を貴族の地位から追放で良いと思ってしまうよ。彼らは貴族の格式を著しく下げたのだからな。議会との癒着なんて許されることではないし」
「それはそうかもしれないけれど……」
話を聞く限りではメジラマ家の方は、少なくとも以前から癒着があったように思える。それは、サンセット様の前の代から続いていたのだろう。シルバーマン議長以前の議会とも黒い関係性があったのかもしれない。まあ、今回の一件でその辺りも明るみになるだろうけれど。
「シルバーマン議長達、若しくはそれ以前の議会との癒着があり、さらに不敬罪なども加味されれば……本当にメジラマ侯爵の家はなくなってしまうかもしれないわね」
「その通りだ。俺はそれを言っているのさ」
一族郎党全てに責任があるとは思っていないけれど、そう考えるとメジラマ侯爵家は没落する未来もあるように思えて来た。それは私が望む望まないの問題ではないのだ。あとはゼノン様が不敬罪を無理矢理にでもねじ込むかどうかに掛かっているのかもしれない。
「ああ、ウィンベル。あれを見てみろ」
「どうしかしたの、ジクト?」
急にジクトが舞踏会会場の中央付近を指差した。そちらに視線を向けると、何名かのカップルが踊りを披露している。特におかしなところがあるようには思えないけれど……。
「ほら、よく見てみろ。ヴィクター殿が踊っているぞ」
「あら、本当に……」
先ほど、何名かの女性に囲まれていた兄さまだけれど、その中の一人と踊っているようだった。ヴィクター兄さまはゼノン様に運命の相手を紹介しないと駄目だから必死なんだろうけど……おそらく、他の女性貴族とも一通り踊るのでしょうね。スケコマシというか、女たらしというか……まったく。
「なかなか、楽しそうだな」
「楽しく踊っているようには見えるわね」
「ふふ、ならば俺達も真似をしてみないか?」
「えっ? 真似をしてみないかって……」
私とジクトも踊ってみるということ? ジクトが一緒に舞踏会で踊ると言うことがどういう意味なのかを知らないわけがない。私は少し気持ちが高ぶっていた。
私やヴィクター兄さまの護衛が後ろの方で笑顔になっているけれど……この現場の状況は、ゼノン様に伝わりそうね。ヴィクター兄さまにも運命の相手を見つける勝負みたいなものを突き付けられた気がするし、ここはジクトと踊るのが得策だと納得することにした。
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