上 下
14 / 31

14話 サンセットの言い分 その1

しおりを挟む

「お前達! どういうつもりだ!?」

「はい? サンセット様……どういうつもりだ、とは?」


 私達は会議場から出て来たサンセット様に呼び止められた。予想はしていたけれど、ここまで怒った状態での呼び止めは予想外だ。なぜ怒っているのかは、見当が付いているけれど。


「しらばっくれるつもりか? シルバーマン公爵と私が話し、慰謝料未払い問題についても白紙になってしまうことは想定済みだっただろう!」

「いやそれは……先に言いましたよね? シルバーマン議長は退任されるって……」

「そういうことを言っているのではない!」


 サンセット様は何が言いたいのだろうか。なんだか分からなくなってしまったわ。

「虎の威を借る狐の分際で、よくも私をコケにしてくれたな! 信じられぬわ!」


 虎の威を借る狐って、私のことを言っているのかしら? なんだか暴言になって来ているけれど……大丈夫なのかな?

「お前達のことだから、慰謝料問題が解決したことをさぞや嬉しがっているのだろうな! まったく……卑しい者達だ!」

「まったくですわね……! たかが、慰謝料如きでメソメソと……本当に卑しいですわ!」

「……」


 なんだか好き勝手言われている気がする……これには流石にお父様も反撃に出た。

「メジラマ侯爵……言葉には気を付けた方が良いのではないですかな? いくら侯爵殿と言えども」

「何を言っている、マリストル伯爵? たかが伯爵の分際で、私に意見すると言うのか?」

「メジラマ侯爵も大丈夫ですか? 我が娘と息子の二人は国王陛下の実子に当たるのですが……」


 とりあえずの様子見で、お父様はゼノン国王陛下の名前を出した。サンセット様は一瞬、たじろいでいたようだけれど、すぐに言葉が返って来た。

「養子縁組が完了してかなりの年月が経っているのだろう? ウィンベルやヴィクターは伯爵家の子供という風に見られているはずだ。今更、国王陛下の名を出したところで、私が驚くとでも思っていたのか? 本当に虎の威を借ることしか出来ない連中のようだな!」

 虎の威を借る狐という言葉が本当に好きなようね。びっくりするくらいに、サンセット様にも言えることなんだけれど……。


「虎の威を借る狐でしたら、サンセット様も同じではありませんか?」

「な、なんだと!? ウィンベル、貴様っ!」

「侯爵という肩書きがないサンセット様に、一体、どれほどの人が付いて来るのでしょうか? 虎の威を借る狐というお言葉が大変好きなようですが……サンセット様もそうですよね?」

「ななっ……!」


 私はハッキリとサンセット様に言ってやった。彼は相当に怒った顔をしていたけれど、私は事実しか言っていないし。まあ、貴族は誰しも多かれ少なかれ、虎の威を借ってはいるんだけどね……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

天才少女は旅に出る~婚約破棄されて、色々と面倒そうなので逃げることにします~

キョウキョウ
恋愛
ユリアンカは第一王子アーベルトに婚約破棄を告げられた。理由はイジメを行ったから。 事実を確認するためにユリアンカは質問を繰り返すが、イジメられたと証言するニアミーナの言葉だけ信じるアーベルト。 イジメは事実だとして、ユリアンカは捕まりそうになる どうやら、問答無用で処刑するつもりのようだ。 当然、ユリアンカは逃げ出す。そして彼女は、急いで創造主のもとへ向かった。 どうやら私は、婚約破棄を告げられたらしい。しかも、婚約相手の愛人をイジメていたそうだ。 そんな嘘で貶めようとしてくる彼ら。 報告を聞いた私は、王国から出ていくことに決めた。 こんな時のために用意しておいた天空の楽園を動かして、好き勝手に生きる。

【短編】王子のために薬を処方しましたが、毒を盛られたと婚約破棄されました! ~捨てられた薬師の公爵令嬢は、騎士に溺愛される毎日を過ごします~

上下左右
恋愛
「毒を飲ませるような悪女とは一緒にいられない。婚約を破棄させてもらう!」 公爵令嬢のマリアは薬を煎じるのが趣味だった。王子のために薬を処方するが、彼はそれを毒殺しようとしたのだと疑いをかけ、一方的に婚約破棄を宣言する。 さらに王子は毒殺の危機から救ってくれた命の恩人として新たな婚約者を紹介する。その人物とはマリアの妹のメアリーであった。 糾弾され、マリアは絶望に泣き崩れる。そんな彼女を救うべく王国騎士団の団長が立ち上がった。彼女の無実を主張すると、王子から「ならば毒殺女と結婚してみろ」と挑発される。 団長は王子からの挑発を受け入れ、マリアとの婚約を宣言する。彼は長らくマリアに片思いしており、その提案は渡りに船だったのだ。 それから半年の時が過ぎ、王子はマリアから処方されていた薬の提供が止まったことが原因で、能力が低下し、容姿も豚のように醜くなってしまう。メアリーからも捨てられ、婚約破棄したことを後悔するのだった。 一方、マリアは団長に溺愛される毎日を過ごす。この物語は誠実に生きてきた薬師の公爵令嬢が価値を認められ、ハッピーエンドを迎えるまでのお話である。

婚約破棄されましたけど、御先祖様のおかげで『わたくしは』救われました

アソビのココロ
恋愛
「カトリーナ・アークビショップ。私はそなたとの婚約を破棄する!」 侯爵令嬢カトリーナはオリヴァー第二王子に婚約破棄されてしまうが、何故か正気を失ったオリヴァーは廃嫡されてしまう。一方正妃クリスティンに気に入られていたカトリーナは?

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

ダンスパーティーで婚約者から断罪された挙句に婚約破棄された私に、奇跡が起きた。

ねお
恋愛
 ブランス侯爵家で開催されたダンスパーティー。  そこで、クリスティーナ・ヤーロイ伯爵令嬢は、婚約者であるグスタフ・ブランス侯爵令息によって、貴族子女の出揃っている前で、身に覚えのない罪を、公開で断罪されてしまう。  「そんなこと、私はしておりません!」  そう口にしようとするも、まったく相手にされないどころか、悪の化身のごとく非難を浴びて、婚約破棄まで言い渡されてしまう。  そして、グスタフの横には小さく可憐な令嬢が歩いてきて・・・。グスタフは、その令嬢との結婚を高らかに宣言する。  そんな、クリスティーナにとって絶望しかない状況の中、一人の貴公子が、その舞台に歩み出てくるのであった。

【一話完結】才色兼備な公爵令嬢は皇太子に婚約破棄されたけど、その場で第二皇子から愛を告げられる

皐月 誘
恋愛
「お前のその可愛げのない態度にはほとほと愛想が尽きた!今ここで婚約破棄を宣言する!」 この帝国の皇太子であるセルジオが高らかに宣言した。 その隣には、紫のドレスを身に纏った1人の令嬢が嘲笑うかのように笑みを浮かべて、セルジオにしなだれ掛かっている。 意図せず夜会で注目を浴びる事になったソフィア エインズワース公爵令嬢は、まるで自分には関係のない話の様に不思議そうな顔で2人を見つめ返した。 ------------------------------------- 1話完結の超短編です。 想像が膨らめば、後日長編化します。 ------------------------------------ お時間があれば、こちらもお読み頂けると嬉しいです! 連載中長編「前世占い師な伯爵令嬢は、魔女狩りの後に聖女認定される」 連載中 R18短編「【R18】聖女となった公爵令嬢は、元婚約者の皇太子に監禁調教される」 完結済み長編「シェアされがちな伯爵令嬢は今日も溜息を漏らす」 よろしくお願い致します!

聖女の能力で見た予知夢を盗まれましたが、それには大事な続きがあります~幽閉聖女と黒猫~

猫子
恋愛
「王家を欺き、聖女を騙る不届き者め! 貴様との婚約を破棄する!」  聖女リアはアズル王子より、偽者の聖女として婚約破棄を言い渡され、監獄塔へと幽閉されることになってしまう。リアは国難を退けるための予言を出していたのだが、その内容は王子に盗まれ、彼の新しい婚約者である偽聖女が出したものであるとされてしまったのだ。だが、その予言には続きがあり、まだ未完成の状態であった。梯子を外されて大慌てする王子一派を他所に、リアは王国を救うためにできることはないかと監獄塔の中で思案する。 ※本作は他サイト様でも掲載しております。

婚約破棄されました。あとは知りません

天羽 尤
恋愛
聖ラクレット皇国は1000年の建国の時を迎えていた。 皇国はユーロ教という宗教を国教としており、ユーロ教は魔力含有量を特に秀でた者を巫女として、唯一神であるユーロの従者として大切に扱っていた。 聖ラクレット王国 第一子 クズレットは婚約発表の席でとんでもない事を告げたのだった。 「ラクレット王国 王太子 クズレットの名の下に 巫女:アコク レイン を国外追放とし、婚約を破棄する」 その時… ---------------------- 初めての婚約破棄ざまぁものです。 --------------------------- お気に入り登録200突破ありがとうございます。 ------------------------------- 【著作者:天羽尤】【無断転載禁止】【以下のサイトでのみ掲載を認めます。これ以外は無断転載です〔小説家になろう/カクヨム/アルファポリス/マグネット〕】

処理中です...