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11話 頼りない その1

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 まさか、ガスト様がそんなに節操がなかったなんて……いえ、よくよく考えたら、そうなっても不思議ではなかったと思うけれど。

 私と婚約していた時は、ガスト様の女性を自室に呼ぶ頻度と言えばそれはもう……凄まじいものがあった気がするしね。

「ははっ、笑ってしまいそうになりますね……」

「そうだろう、クライブ殿? 私としても笑ってしまうよ……ふはははっ!」

「いえ、誰も褒めてませんが……」


 ガスト様はあまり焦っていないのか、陽気に笑ってみせている。現状を理解していないわけではなさそうだけれど……大丈夫なのかな?

「それで……何人くらいをその、ええと……」

「結局、10人という規模になってしまってな……いやはや、これは参った参った。この私としたことが……作り過ぎてしまったというわけだ」

「じゅ、10人……!?」


 私とクライブは同時に叫んでしまった。まさか、そんな数になっているとは……。


「そ、それで……どうなさるおつもりなのですか……? そんな人数はとても隠せないと思いますが……」

「そうだな、私の遺伝子を持つ子供達になるわけだし、中絶をするというのも忍びない。どうしようかと考えていたのだ。そして、この場に来たと言うわけだ」


 どういう考えで、私のところに来るという結論になったのかは、理解しかねるけど……とりあえず、お子さん達を生ませる考えはあるわけね。しかし、第二王子殿下の遺伝子を持った子供が同時期に10人も生まれるとなるなんて……王族の方々はどのように考えているのかしら?

「その子供達は1年程で生まれることになるわけだが……その後の匿う先として、ヴェール家に頼みたいのだ」

「はい……? どういう意味でしょうか……?」


 第二王子殿下の子供達を私達が匿う……? 全く意味が分からない。なぜ、ヴェール家がその子たちを匿わないといけないの?


「なぜ、私達がそのようなことをしないといけないのでしょうか……? 話の先が見えてこないのですが……」

「話の先などない。ここでおしまいだ、父上にこんなことが知られるとマズイことくらい、お前なら分かるだろう? ならば、元婚約者の身として何をしないといけないか……そのくらいの理解が出来ないのか?」

「ええ……」


 なんだかとんでもないことを聞いてしまった気がする。同時に聞いていたクライブも驚いている様子だ。


「ガスト王子殿下は、ヴェール家に生まれて来るお子様を匿うようにおっしゃいましたが、匿うと言っても誰の子であるのかは、いずれ聞かれることになるでしょう。その時はどうするのですか?」

「まあ、その辺りはそっちで勝手に決めてくれ。ルリアが生んだことにしてもいいわけだしな」

「ガスト様、流石にそれは……」

「なんだ? なにか文句でもあるのか?」


 いくら第二王子殿下でも、言って良いことと悪いことがある。彼はほとんど何も考えていないように思えた。ほとんど、こちらに丸投げだし。

「素晴らしい遺伝子を持った、第二王子殿下のお子様が誕生するのですから、むしろ大々的に発表するのは如何ですか? 他国の貴族との結婚を見据えるという手段もありますし」

 クライブは建設的な意見を述べているように思う。まあ、課題もありそうだけれど、周辺国家との関係性の構築と言う意味合いでは悪くないかもしれないわね。と、いうより、そのくらいしか手段がないかもしれない……。


「ば、馬鹿を言うな……! そんなことをすれば、兄上や父上達に知られることになるではないか……! もしも、私がそんなことをしていると知られたら……!」


 その部分でまだ迷っていたのこの人は? どう考えても隠し通せることではないのに、そんなことにも頭が回っていないのか……。流石はガスト第二王子殿下様ね、びっくりするくらい頼りないわ。
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