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7話 ガスト王子殿下の現状 その1

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 ガスト王子殿下視点……。


「ガスト王子殿下……その、デキてしまったようです」

「なんだと……?」


 私に話しかけているのは、メイドの一人であるミリアムだ。最近の私のお気に入りの一人であった女だ。彼女からデキてしまったとい言葉を聞いた。デキてしまったというのは、つまりは赤子を身籠ったということだろう。タイミング的に考えても相手は私しか居ないはずだ。

 しかし……デキてしまったのか。安全日などあまり充てにならんな。いや、それ以外の日でもやっていたのは事実だが。


「そうか、まあデキてしまったのは仕方あるまい」

「あ、あの……私はどうなるのでしょうか? まさか、メイドをクビになってしまうのですか……?」

「ふん、まあクビにはしない。だが、このことは他言無用だ。分かったな?」

「は、はい……しかし、どうすればいいのでしょうか……? 隠し通せることではないと思うのですが……」

「それは、お前が心配することではない。いいか? 私が許可を出すまでは黙っておけ」

「か、畏まりました……」


 ミリアムは自信を失くした様子で部屋から出て行った。あの女は一応、子爵令嬢の立場にはあるのだが、現在は私の専属メイドの一人になっている。三女か何かのはずだから、将来を有望視されていないのだ。だからこそ、私の元でメイドをさせた方が、ミリアムの家系の名も上がると父親からは思われているらしい。

 その時点で幸の薄い女というわけだ。まあ、一般人よりはマシだろう。宮殿内で仕えている限りは衣食住に困ることはない。その上、給金まで貰えて私の相手まで出来るのだからな。私の相手が出来る者は美人に限るが。


「しかし……ミリアムに子供がデキたか。私の跡取りと考えれば、そう悪い話ではないが……」


 このガスト・モリアーヌ第二王子の息子……由緒ある血統書付きと変わらない。ミリアムはまあ、家柄としては微妙だが、あの通り非常に美人だからな。私も将来はモリアーヌ王国の国王になる可能性があるのだし、子供の一人くらい囲っていても問題はないだろう。

 父上に今の段階で知られるとマズイが……まあ、一人くらいなら誤魔化すことは可能か。


「ガスト様、少々、よろしいでしょうか?」

「ん? その声はルミーか? 入れ」

「失礼いたします」


 そんな時、違う女性の声が入口から聞こえて来た。あの声は夜街で働いている、娼婦のルミー・コンパクトだ。抜群のスタイルの女……ミリアムとは別の意味でインパクトがあり、お気に入りの一人だった。

 ルミーは挨拶と共に入って来たが、なんだか険しい顔をしているな……どうかしたのか?


「ガスト様にお伝えしなければいけないことが、出来たんですけど……」

「なんだ? 急ぎの用か何かか?」


 今日、ルミーを呼んだつもりはない。それなのに彼女は私の前に居る。急ぎの用事以外には考えられなかった。用もなく王子の部屋を訪れる一般人など、居るわけがないからな。


「はい、急用でございます。実は、ガスト様との子がデキてしまったようでして……」

「なんだと……?」


 先ほどミリアムから、全く同じ内容を聞いた気がするが……なんだこれは? デジャブか?
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