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6話 幸せのケーキ
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「ズルいわ……クライブ。そういう告白の仕方は……」
「ははは、済まない、ルリア。君をからかったつもりじゃないんだ。その……改めて、僕の言葉を思い出して欲しかったというのと、もう一度、告白をしたかったからね。今日、するつもりはなかったんだけど、そういう雰囲気なのかなって考えてしまったわけだ」
「クライブ……」
そういう雰囲気か……確かに軽い気持ちで私があの時の話をしたのが悪かったわね。でも、さっきの言葉は冗談なんかじゃなく本気。それだけは確信することが出来た。それだけでも、とても嬉しい気持ちになってしまった。
「それで、僕の告白の点数はどのくらいかな?」
「点数には出来ないわね。私は以前、あなたの告白を断ってしまったのだし……そんな資格はないわ」
「でも、今はガスト王子殿下とは別れているじゃないか。一方的な婚約破棄なわけだし」
それは確かにそうね。別にガスト様のことを考える必要なんて、もうないわけだし。それどころか、早く忘れてしまいたいまであるし。
でも、クライブとの恋愛……私にその資格はあるのかしら?
「クライブ、あなたさえ良ければ、私と付き合ってくださいますか?」
「ルリア……喜んで」
今、答えを出さないという選択肢も確かにあったと思う。でも、私はこの感情を大切にしたかった。思い立った時がもっとも吉日なのだ。ましてや、彼からは二度目の告白になるのだし……流石にお待たせさせるのは申し訳なかった。どのみち、私の答えは時間を空けたところで変わらないだろうしね。
「ルリア……」
「クライブ……」
自然と私とクライブの距離が縮まっていく……瞳だけで会話をしているようだ。相手が何をしようとしているのか、手に取るように分かるというか。この流れはキスかしらね。
お互いその距離まで近づいた時……私室のドアがノックと共に開かれた。
「失礼いたします。ルリア様、クライブ様……あら? これは失礼致しました」
「シューミート!?」
タイミングを見計らって入って来たのか、私達はキスの直前だった。普段はクールな彼女の口元が緩んでいるのが分かる。
「これは……申し訳ございませんでした。もう少し後に入ってくるべきでしたね」
「そういう変な謝罪はよいから……」
絶対にシューミートは分かってやっている。もしかしたらキスだけでなく、私達が上手くいったことも分かっているのかもしれない。なぜなら……彼女はケーキを持っていたからだ。
「偶然、ケーキを作ってみたのですが……よろしければ、如何でございますか?」
「シューミート……まったく……」
私はなんだか肩の力が抜けてしまった。シューミートは陰ながら私達の様子を見ていたのだる。それで、ケーキまで作ってくれたというわけか。流石にここまでしてくれたら、怒る気にはならない。
なぜなら……ケーキには私とクライブの顔を模した飾り付けまでしてあったのだから。その飾り付けはしっかりとキスしている状態だった。シューミートなりのイタズラ心というわけだろうか。
私もクライブもシューミートもなんだかんだ、イタズラが好きみたいね……。
「はははっ、なんだか彼女には全く敵わないよ……全て見透かされていた気分だ」
「私もよクライブ……」
「ふふふ、褒め言葉として受け取っておきます。それでは、切り分けますね」
その後、私とクライブはシューミートが出してくれたケーキを食べることになった。キスの味、ではなかったけれど甘くて美味しい香りが口の中を覆ったのだった。
それにしても、クライブの話で少しだけ出ていた王族のことだけれど。結局その日は、その話の続きをすることはなかった。どうでも良いけれど、ガスト様はなんだかとんでもないことに巻き込まれそうな気がするわ。大丈夫なのかしら……?
「ははは、済まない、ルリア。君をからかったつもりじゃないんだ。その……改めて、僕の言葉を思い出して欲しかったというのと、もう一度、告白をしたかったからね。今日、するつもりはなかったんだけど、そういう雰囲気なのかなって考えてしまったわけだ」
「クライブ……」
そういう雰囲気か……確かに軽い気持ちで私があの時の話をしたのが悪かったわね。でも、さっきの言葉は冗談なんかじゃなく本気。それだけは確信することが出来た。それだけでも、とても嬉しい気持ちになってしまった。
「それで、僕の告白の点数はどのくらいかな?」
「点数には出来ないわね。私は以前、あなたの告白を断ってしまったのだし……そんな資格はないわ」
「でも、今はガスト王子殿下とは別れているじゃないか。一方的な婚約破棄なわけだし」
それは確かにそうね。別にガスト様のことを考える必要なんて、もうないわけだし。それどころか、早く忘れてしまいたいまであるし。
でも、クライブとの恋愛……私にその資格はあるのかしら?
「クライブ、あなたさえ良ければ、私と付き合ってくださいますか?」
「ルリア……喜んで」
今、答えを出さないという選択肢も確かにあったと思う。でも、私はこの感情を大切にしたかった。思い立った時がもっとも吉日なのだ。ましてや、彼からは二度目の告白になるのだし……流石にお待たせさせるのは申し訳なかった。どのみち、私の答えは時間を空けたところで変わらないだろうしね。
「ルリア……」
「クライブ……」
自然と私とクライブの距離が縮まっていく……瞳だけで会話をしているようだ。相手が何をしようとしているのか、手に取るように分かるというか。この流れはキスかしらね。
お互いその距離まで近づいた時……私室のドアがノックと共に開かれた。
「失礼いたします。ルリア様、クライブ様……あら? これは失礼致しました」
「シューミート!?」
タイミングを見計らって入って来たのか、私達はキスの直前だった。普段はクールな彼女の口元が緩んでいるのが分かる。
「これは……申し訳ございませんでした。もう少し後に入ってくるべきでしたね」
「そういう変な謝罪はよいから……」
絶対にシューミートは分かってやっている。もしかしたらキスだけでなく、私達が上手くいったことも分かっているのかもしれない。なぜなら……彼女はケーキを持っていたからだ。
「偶然、ケーキを作ってみたのですが……よろしければ、如何でございますか?」
「シューミート……まったく……」
私はなんだか肩の力が抜けてしまった。シューミートは陰ながら私達の様子を見ていたのだる。それで、ケーキまで作ってくれたというわけか。流石にここまでしてくれたら、怒る気にはならない。
なぜなら……ケーキには私とクライブの顔を模した飾り付けまでしてあったのだから。その飾り付けはしっかりとキスしている状態だった。シューミートなりのイタズラ心というわけだろうか。
私もクライブもシューミートもなんだかんだ、イタズラが好きみたいね……。
「はははっ、なんだか彼女には全く敵わないよ……全て見透かされていた気分だ」
「私もよクライブ……」
「ふふふ、褒め言葉として受け取っておきます。それでは、切り分けますね」
その後、私とクライブはシューミートが出してくれたケーキを食べることになった。キスの味、ではなかったけれど甘くて美味しい香りが口の中を覆ったのだった。
それにしても、クライブの話で少しだけ出ていた王族のことだけれど。結局その日は、その話の続きをすることはなかった。どうでも良いけれど、ガスト様はなんだかとんでもないことに巻き込まれそうな気がするわ。大丈夫なのかしら……?
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