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13話 撃沈
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「バクラ殿? よく聞きなさい」
「は、はい……ジーン王女殿下……」
「あなたの罪は決して軽いものではないわ」
「つ、罪……? 待ってください、王女殿下。私は罪になるようなことはしていませんが……」
「バクラ・クレメンス侯爵令息……犯罪と言う意味でなくとも、罪は罪よ。あなたはミレーヌの名誉を大きく傷付けたことになるのだから。一方的な婚約破棄というのは、基本的にはされた側に不名誉な噂が流れるわ。ライドウ伯爵家の名を汚した事実は、慰謝料を支払おうとなくなることはないのよ」
「で、ですが……そのくらいは、貴族として生きている以上は、起こり得ることでしょう?」
バクラ様はなんとか自分に非がないことを証明したいようだ。先ほどまで焦りに焦っていたにしては、冷静な判断が出来ているのではないだろうか。
でも、全くと言って良いほど、ジーン王女殿下に勝てる気がしない……。最初から格が違うようなそんな感じね。
そもそも、バクラ様の言い分は苦し過ぎる……貴族として生きている上で、婚約破棄を考慮に入れている人間がどのくらい居るのか……。お互いが合意の上での離婚だったらまだしも、一方的な婚約破棄なんて普通は想定しない。相手の人間性を疑う行為だから。
しかも、高位貴族になればなおさらだ。ジーン王女殿下はその辺りもバクラ様に指摘してくれた。私が言うよりも、好きな相手に言われた方が何倍も効果的でしょうね。
「そんなわけがないでしょう? 婚約破棄なんていうイベントを、どこの貴族が想定なんてするのかしら? そんな不名誉なものを戴きたいなんて、誰も思わないわよ。クレメンス侯爵にはしっかりと伝えておいた方が良さそうね」
「え、ええっ!? 父上にですか……!?」
バクラ様はまたもや汗を流し始めていた。婚約破棄の件は当然、クレメンス侯爵だって知っているはず。通常なら、そんなに驚くところではないはずだけれど……。
「ねえ、お兄様もそう思いますわよね?」
狙いすましたかのように、ジーン王女殿下はグレス王子殿下に話しかける。完全に見計らっていたわね……恐ろしいこと。
「そうだな……王家の方からもしっかりと言っておく必要はあるだろう。臣下の者達が人道を超えることを野放しにしていると、統治機構のバランスが崩れる可能性があるからな」
「ということなの、バクラ殿。しっかりと自分の責任と向き合いなさい。私に告白している暇があったらね」
「あ、ああ……そ、そんな……こんなことが……!」
完全にバクラ様は言い包められている。最早、年相応の男性には見えない……もっと老けて見えるというかなんというか。この時点で勝負ありだったけれど、ジーン王女殿下はそこでは終わらなかった。
「最後に1つ言っておくことがあります、バクラ殿」
「な、なんでしょうか……?」
ジーン王女殿下は優しい笑みをバクラ様に見せていた。天使のような微笑みだ。とても可愛らしい……あ、でもこれは……。
「私の……」
ジーン王女殿下はしゃべりかけたけれど、途中で止まってしまった……バクラ様は何事かと彼女を覗き見た。
「ジーン王女殿下、大丈夫ですか……?」
「私の大切な友人を裏切り、悲しませた罪は重いわよ!! 絶対に許せないわ! 覚悟しておきなさい!!」
「うわっ……! か、畏まりました……! もうしません……!」
「違うでしょ! 謝る相手がっ!」
「は、はい!」
暴走したジーン王女殿下に、バクラ様は恐れおののいていた。私の方向に素早く振り返ると……。
「申し訳ありませんでした! ミレーヌ嬢! あなた様を傷付けてしまったことは、しっかりと謝罪させていただきます!」
「何に対してか明確にしなさい!」
「はいっ! 身勝手な婚約破棄をしてしまい、申し訳ありませんでした! ミレーヌ嬢!」
「は、はい……ええと、なんて言ったらいいのか、分かりませんが……バクラ様も頑張ってくださいね」
「はいっ! ありがたき幸せであります!!」
ジーン王女殿下の暴走振りは、バクラ様に相当な衝撃を与えたようだ。私への謝罪も完全に敬語になっていたし……。
なぜか最後は敬礼までしていた、バクラ様。ジーン王女殿下に撃沈された瞬間であった。
「は、はい……ジーン王女殿下……」
「あなたの罪は決して軽いものではないわ」
「つ、罪……? 待ってください、王女殿下。私は罪になるようなことはしていませんが……」
「バクラ・クレメンス侯爵令息……犯罪と言う意味でなくとも、罪は罪よ。あなたはミレーヌの名誉を大きく傷付けたことになるのだから。一方的な婚約破棄というのは、基本的にはされた側に不名誉な噂が流れるわ。ライドウ伯爵家の名を汚した事実は、慰謝料を支払おうとなくなることはないのよ」
「で、ですが……そのくらいは、貴族として生きている以上は、起こり得ることでしょう?」
バクラ様はなんとか自分に非がないことを証明したいようだ。先ほどまで焦りに焦っていたにしては、冷静な判断が出来ているのではないだろうか。
でも、全くと言って良いほど、ジーン王女殿下に勝てる気がしない……。最初から格が違うようなそんな感じね。
そもそも、バクラ様の言い分は苦し過ぎる……貴族として生きている上で、婚約破棄を考慮に入れている人間がどのくらい居るのか……。お互いが合意の上での離婚だったらまだしも、一方的な婚約破棄なんて普通は想定しない。相手の人間性を疑う行為だから。
しかも、高位貴族になればなおさらだ。ジーン王女殿下はその辺りもバクラ様に指摘してくれた。私が言うよりも、好きな相手に言われた方が何倍も効果的でしょうね。
「そんなわけがないでしょう? 婚約破棄なんていうイベントを、どこの貴族が想定なんてするのかしら? そんな不名誉なものを戴きたいなんて、誰も思わないわよ。クレメンス侯爵にはしっかりと伝えておいた方が良さそうね」
「え、ええっ!? 父上にですか……!?」
バクラ様はまたもや汗を流し始めていた。婚約破棄の件は当然、クレメンス侯爵だって知っているはず。通常なら、そんなに驚くところではないはずだけれど……。
「ねえ、お兄様もそう思いますわよね?」
狙いすましたかのように、ジーン王女殿下はグレス王子殿下に話しかける。完全に見計らっていたわね……恐ろしいこと。
「そうだな……王家の方からもしっかりと言っておく必要はあるだろう。臣下の者達が人道を超えることを野放しにしていると、統治機構のバランスが崩れる可能性があるからな」
「ということなの、バクラ殿。しっかりと自分の責任と向き合いなさい。私に告白している暇があったらね」
「あ、ああ……そ、そんな……こんなことが……!」
完全にバクラ様は言い包められている。最早、年相応の男性には見えない……もっと老けて見えるというかなんというか。この時点で勝負ありだったけれど、ジーン王女殿下はそこでは終わらなかった。
「最後に1つ言っておくことがあります、バクラ殿」
「な、なんでしょうか……?」
ジーン王女殿下は優しい笑みをバクラ様に見せていた。天使のような微笑みだ。とても可愛らしい……あ、でもこれは……。
「私の……」
ジーン王女殿下はしゃべりかけたけれど、途中で止まってしまった……バクラ様は何事かと彼女を覗き見た。
「ジーン王女殿下、大丈夫ですか……?」
「私の大切な友人を裏切り、悲しませた罪は重いわよ!! 絶対に許せないわ! 覚悟しておきなさい!!」
「うわっ……! か、畏まりました……! もうしません……!」
「違うでしょ! 謝る相手がっ!」
「は、はい!」
暴走したジーン王女殿下に、バクラ様は恐れおののいていた。私の方向に素早く振り返ると……。
「申し訳ありませんでした! ミレーヌ嬢! あなた様を傷付けてしまったことは、しっかりと謝罪させていただきます!」
「何に対してか明確にしなさい!」
「はいっ! 身勝手な婚約破棄をしてしまい、申し訳ありませんでした! ミレーヌ嬢!」
「は、はい……ええと、なんて言ったらいいのか、分かりませんが……バクラ様も頑張ってくださいね」
「はいっ! ありがたき幸せであります!!」
ジーン王女殿下の暴走振りは、バクラ様に相当な衝撃を与えたようだ。私への謝罪も完全に敬語になっていたし……。
なぜか最後は敬礼までしていた、バクラ様。ジーン王女殿下に撃沈された瞬間であった。
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