王女と婚約するからという理由で、婚約破棄されました

マルローネ

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11話 ジーン王女殿下の怒り その2

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「どうぞ、入って来てください」

 私がノックをした時、ジーン王女殿下の冷静な言葉が返って来ていた。でも、私はその言葉に違和感を感じる。普段の感情とは違うのではないか……私にはそう思えてならなかったからだ。まあ、バクラ様が中に居るのだとしたら当然なのかもしれないけれど……私は心配になってすぐに入ることにした。

「失礼いたします、ジーン王女殿下」

「失礼するよ、ジーン」

「ミレーヌ……それに、お兄様まで……」


 私とグレス王子殿下はジーン王女殿下の私室へと足を踏み入れた。中は以前のように綺麗で広かったけれど……汗を流したバクラ様の姿が周囲の清潔さとはかけ離れているような気がしてしまった。

「バクラ様……お久しぶりですね」

「ミレーヌ……? あ、ああ……そうだね……」


 状況的に考えて、バクラ様はジーン王女殿下への告白を終えたのかしら……それからは、ジーン王女殿下から叱責を受けていた。こんなところかしらね。ジーン王女殿下の護衛も二人立っていた。あり得ないとは思うけれど、逆上したバクラ様がジーン王女殿下を襲った時には、問答無用で拘束する役割を担っているのだと思う。

 いえ、この状況でジーン王女殿下に襲い掛かったりしたら、その場で殺されるかもしれないけれどね。


「ジーン王女殿下……バクラ様と一緒だったのですね」

「ええ、彼から先ほど告白を受けたところなの」

「あ……そうなんですね……」


 しまった……やっぱり遅かったか……。


「申し訳ありません、ジーン王女殿下……報告を失念しておりまして……」

「まあ、別にそのくらい構わないわ。小市民的なあなたですもの……失敗は付き物という感じね」

「そう言っていただき光栄でございます」

「別に誉めてないけど……」

「わかっております。個人的にジーン王女殿下に言われるが嬉しいだけです」


 あれ……? 私って別に特殊性癖とかはないわよね? 大丈夫よね、このくらい……。

「……ミレーヌって、時々、M気質が垣間見れるわよね……」

「えっ? そ、そんなことありませんよ……!」

 S気質がありそうなジーン王女殿下に引かれてしまっている……これは由々しき事態だわ!

「……」

 グレス王子殿下や護衛の方々も微笑ましく見てくれている中、汗だくになりながら明らかに笑っていない人物が一人……もちろん、それはバクラ様だ。

「まあ、ちょうど良いわ。これからバクラ殿への断罪の続きを行おうとしていたところなの。二人にも同席してもらっていた方が良いわね」

「なっ……ジーン王女殿下……!?」


 ここに来て、バクラ様はさらに汗だくになっていた。この清潔感溢れる空間とは、さらに乖離していく感じだ。とりあえず私の役目は、バクラ様の行く末を生温かく見ていくということで良いのかしらね。
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