王女と婚約するからという理由で、婚約破棄されました

マルローネ

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10話 ジーン王女殿下の怒り その1

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 バクラ・クレメンス侯爵令息視点……。


「まずはバクラ殿……結論から言っておくわね」

「は、はい……ジーン王女殿下……」


 ジーン王女殿下の口調は冷たくも淡々としていた。その言葉を聴いている私は、思わず背筋が寒くなってしまいそいそうだ。


「私があなたと婚約することはあり得ないわ」

「えっ……ジーン王女殿下? それは一体、どういうことでしょうか……!?」


 おかしいぞこれは……確かに、ジーン王女殿下は過去の舞踏会で私に惚れているはずだった。そのくらいの手応えを、彼女との会話で感じていたのに……ジーン王女殿下のこの態度は何なのだ?

「ジーン王女殿下……私はあなた様との信頼関係を舞踏会での会話で構築出来たと確信しておりますが……」

「バクラ殿……あの程度の会話で私との信頼関係を構築出来たと、本気で思っているのだとしたら、あなたは相当に自信過剰な性格と見ることが出来るわね」

「な、なんですと……?」


 まさか……あの私の博識を持っての話は全て空回りしていたというのか? いや、そんなはずは……。


「勘違いして欲しくないのは、以前の舞踏会でのあなたの好感度が低かったというわけではありませんことよ? ただし、現段階で告白をしてくるというのは、時期尚早な気が致しますわね」

「……!!」


 つまり、私はタイミングを間違えたということなのか……? ジーン王女殿下との関係構築の強化を図るには、まだ早かったと……彼女はそう言っているのだろう。しまった……早すぎたのか!

「あなたが何をするでもなく、もっと私との時間を大切に育んでいれば、私が告白に対して頷いていた可能性もあったでしょう」

「今は……今からではもう遅いということなのでしょうか……?」

「バクラ・クレメンス侯爵令息……あなたは、決してやってはいけないことをしてしまったわ」

「やってはいけないこと……?」

「ええ、私の大切な友人であるミレーヌを捨てたことよ」

「な、なんと……!」


 ミレーヌはやはり、ジーン王女殿下の友人に該当していたのだ。この情報を事前に仕入れていなかったのは誤算だった……しかも、あの気難しいことで有名なジーン王女殿下が「大切な友人」とまで言わしめる程なのだ。

 ミレーヌとジーン王女殿下との関係性はそれ程に深いということを意味する。

「だから……バクラ殿。私があなたの告白に頷くことは決してないわ」

「じ、ジーン王女殿下……それでは……!」

「それに加えて、身勝手な婚約破棄であの子、ミレーヌを悲しませた。この罪は非常に重いですわよ?」


 ジーン王女殿下は目が据わっているように見えた。もしかすると私は、命の危険が出てきているのではないか……? 私の顔からは多くの汗が流れ始めていた……。
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