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9話 ジーンとバクラ その2
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バクラ侯爵令息視点……。
ジーン王女殿下は気のせいか、とても怒っているように感じられた……。
「そういうことだったのね? おかしいと思ったのよ、彼女……ミレーヌが振られた理由を話そうとしていなかったから」
「じ、ジーン王女殿下……無礼を働いたということであれば、先にお詫び申し上げます……すみません!」
「侯爵令息ともあろう者が、意味もなく頭を下げるようじゃ、どうしようもないわね」
私は先にジーン王女殿下に頭を下げたが、彼女はまったく許してくれる素振りがない。いや、許す許さないの次元にはなっていないと言った方が正しいかもしれない。ジーン王女殿下はなぜかミレーヌの名前を出して、ワナワナと震えているのだから……。
「あなたがミレーヌと婚約をしていたことは知っているわ」
「は、はい……何度かの会話の中でもお伝えしておりましたよね?」
「そうだったわね……」
ジーン王女殿下の表情はさらに鋭くなっているが、彼女は何が言いたいのだろうか? 意味が分からなかった。というより、ジーン王女殿下とミレーヌは知り合いだったのか? それがまず、驚きだが……。
「そんなことよりも、ジーン王女殿下。私との婚約の約束をしていただけませんでしょうか?」
「そんなこと……?」
「私はあなたとの舞踏会での交流を経て、揺るぎない信頼関係を構築できたと自負しております! 何卒、よろしくお願いいたします……!」
私は再度、頭を90度に曲げて挨拶をした。これでもう、完璧だろう……ミレーヌの件が気になるところではあるが、それは後程でも問題はないはず。
「そうね……まずは、あなたの告白への返事を返すとしましょうか」
「はい! 光栄でございます、ジーン王女殿下!」
かなり強気で攻めてみたが、こうした男性は今までの人生の中でほとんど居なかったはず……私の作戦は成功したと言えるだろう。
「……ん?」
顔を上げて勝利を確信した私だったが、改めてジーン王女殿下を見て凍り付いてしまった。彼女はまったく笑っていなかったのだ。怒りの形相が消えたと言えば聞こえは良いかもしれないが……真顔の方がある意味では怖い。
「おめでたいわね、バクラ侯爵令息。まさか、あんな舞踏会での表面的な会話だけでその気になっていたなんて。本当におめでたいと言えるわ。揺るぎない信頼関係の構築……? あなたと? 笑わせないでちょうだい」
「じ、ジーン王女殿下……?」
何かがおかしい……どうしてこんなことになっているんだ? 本来ならば、ジーン王女殿下と私は抱き合って、お互いの愛を語っていても不思議ではないはずなのに……。
-------------------------
ミレーヌ視点……。
「ここですよね、ジーン王女殿下のお部屋は」
「そうだな……執事の話では、既にバクラ・クレメンス侯爵令息を通しているようだ。おそらくは中で話が始まっていると考えられるな」
「なるほど、そうですか……」
バクラ様が既に告白を終えているとしたら、現在はどのような事態になっているのか。話の途中でお部屋に入るのも気が引けるけれど、話がいつまで続くのか分からないので、このまま待っているのはもっと厳しい。
私はグレス王子殿下の許可を取って、ジーン王女殿下の部屋のドアをノックした。
ジーン王女殿下は気のせいか、とても怒っているように感じられた……。
「そういうことだったのね? おかしいと思ったのよ、彼女……ミレーヌが振られた理由を話そうとしていなかったから」
「じ、ジーン王女殿下……無礼を働いたということであれば、先にお詫び申し上げます……すみません!」
「侯爵令息ともあろう者が、意味もなく頭を下げるようじゃ、どうしようもないわね」
私は先にジーン王女殿下に頭を下げたが、彼女はまったく許してくれる素振りがない。いや、許す許さないの次元にはなっていないと言った方が正しいかもしれない。ジーン王女殿下はなぜかミレーヌの名前を出して、ワナワナと震えているのだから……。
「あなたがミレーヌと婚約をしていたことは知っているわ」
「は、はい……何度かの会話の中でもお伝えしておりましたよね?」
「そうだったわね……」
ジーン王女殿下の表情はさらに鋭くなっているが、彼女は何が言いたいのだろうか? 意味が分からなかった。というより、ジーン王女殿下とミレーヌは知り合いだったのか? それがまず、驚きだが……。
「そんなことよりも、ジーン王女殿下。私との婚約の約束をしていただけませんでしょうか?」
「そんなこと……?」
「私はあなたとの舞踏会での交流を経て、揺るぎない信頼関係を構築できたと自負しております! 何卒、よろしくお願いいたします……!」
私は再度、頭を90度に曲げて挨拶をした。これでもう、完璧だろう……ミレーヌの件が気になるところではあるが、それは後程でも問題はないはず。
「そうね……まずは、あなたの告白への返事を返すとしましょうか」
「はい! 光栄でございます、ジーン王女殿下!」
かなり強気で攻めてみたが、こうした男性は今までの人生の中でほとんど居なかったはず……私の作戦は成功したと言えるだろう。
「……ん?」
顔を上げて勝利を確信した私だったが、改めてジーン王女殿下を見て凍り付いてしまった。彼女はまったく笑っていなかったのだ。怒りの形相が消えたと言えば聞こえは良いかもしれないが……真顔の方がある意味では怖い。
「おめでたいわね、バクラ侯爵令息。まさか、あんな舞踏会での表面的な会話だけでその気になっていたなんて。本当におめでたいと言えるわ。揺るぎない信頼関係の構築……? あなたと? 笑わせないでちょうだい」
「じ、ジーン王女殿下……?」
何かがおかしい……どうしてこんなことになっているんだ? 本来ならば、ジーン王女殿下と私は抱き合って、お互いの愛を語っていても不思議ではないはずなのに……。
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ミレーヌ視点……。
「ここですよね、ジーン王女殿下のお部屋は」
「そうだな……執事の話では、既にバクラ・クレメンス侯爵令息を通しているようだ。おそらくは中で話が始まっていると考えられるな」
「なるほど、そうですか……」
バクラ様が既に告白を終えているとしたら、現在はどのような事態になっているのか。話の途中でお部屋に入るのも気が引けるけれど、話がいつまで続くのか分からないので、このまま待っているのはもっと厳しい。
私はグレス王子殿下の許可を取って、ジーン王女殿下の部屋のドアをノックした。
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