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7話 訪れたバクラ
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「グレス王子殿下……それではその、二人で出掛ける日取りについては、2週間後ということでよろしいでしょうか?」
「うむ、その日なら空けておくことが出来そうだ。場所は貴族街の一本杉の前辺りで良いかな?」
「はい、畏まりました。よろしくお願いいたします……」
「いえいえ、こちらこそ」
私とグレス王子殿下は現在、二人で出掛ける日取りについて話し合っていた。いわゆる、デートの日取りというやつだ。私もグレス様も恥ずかしさから、なかなかデートとは言えなかったけれど、ジーン王女殿下が認めてくれなかった。
日取りを決めていた場所はグレス王子殿下のお部屋になる。つまり……ファルガ王国の王都コーデリーにある、ユイハンブラ宮殿内だ。久しぶりに入城の許可が出たので、私としては緊張していた。それから……今回はもう一人、同行者が居る。あ、付き人や護衛は除いてね。
「それにしても……まさか、ザック殿が私の部屋にやって来るとは思わなかったよ」
「グレス王子殿下にご挨拶に向かうのに、二回目も妹だけ、というのは失礼かと存じましたので……」
「うむ……そうか」
最初は敢えて、私だけに対応させる狙いで、ライドウ伯爵家はもぬけの殻になっていた。ザック・ライドウ兄さままで消える必要はなかった思ったけれど……まあ、ジーン王女殿下とグレス王子殿下は、その辺りはちゃんと理解してくれていた。
流石に今回は礼儀に反するという理由もあって、ザック兄さまが同行している。なぜ、兄さまが来たのかというと……グレス王子殿下とは、少しだけ因縁があって。
「しかし、こうして部屋でゆっくりと話すのは、剣術大会以来か……」
「左様でございますね、あの時はとても勉強させていただきました」
「幼少の頃から、誰よりも剣術の腕を磨いて来たつもりだったのだがな。まさか、ザック殿があそこまで強いとは思わなかった。私も決して慢心することなく、進んで行かなければ、と改めて再認識させられたよ」
「勿体ないお言葉でございます」
1年に1回行われている剣術大会。グレス王子殿下は2年連続で優勝を飾ることになった。今年の決勝の相手でザック兄さまで……思いの外、苦戦を強いられたらしい。二人はそのことについて話していた。気にせいか、目から火花を交錯させた状態で……ライバルとして、お互いに譲れないものがあるのかもしれない。
「しかし、まさかグレス王子殿下とデートの約束まで漕ぎ着けていたとは……流石だな、ミレーヌ。お前には周りを魅了する何かがあるのかもしれない」
「止めてください、ザック兄さま……もう……!」
「はははっ、済まなかった。まあ、お前が魅力的だということは私も父上、母上も良く分かっているさ。それからもちろん……グレス王子殿下もな」
「そ、それは……とても嬉しいのですが……」
そこまで面と向かって言われると、どうしても視線が逸れてしまう。逸れた視線は偶然にも、グレス王子殿下に当たっていた。
「グレス王子殿下もそのように感じられたから、妹をデートに誘ったのでしょう?」
「まあ、その通りかな。詳しい理由などについては、追々説明するさ」
「は、はい……ありがとうございます……」
グレス王子殿下も照れているようではあるけれど、前みたいに視線を逸らすことはなく、真剣な眼差しで話していた。本音……ということかしら? それにしても、デートに誘った詳しい理由って一体、何なんだろうか? 自分で言うのは恥ずかしいけれど、私の魅力? についてのことなのよね。
「あの……ところで、グレス王子殿下」
「どうしたんだ、ミレーヌ嬢?」
「はい……ええと。本日、ジーン王女殿下はどうされているのでしょうか……?」
「ああ、ジーンか。ジーンならば、自分の部屋に居ると思うぞ」
「左様でございますか……」
なるほど……私室に居るというのであれば、この前、有耶無耶になってしまったバクラ様のことを話した方が良いかもしれない。ついでと言ってしまえば失礼だけれど、せっかく、ユイハンブラ宮殿に来たのだから。
「ただ……」
「ただ? 如何なさいましたか……?」
「バクラ・クレメンス侯爵令息が、ジーンに用事があるということなのだ。そろそろ、訪れる頃合いだと思う。ジーンの部屋に行くのであれば、もう少し待ってからの方が良いだろうな」
「えっ……バクラ様が……?」
「ああ、そう聞いている」
しまった……まさか、こんなにもタイミングが重なってしまうなんて……かと言って、バクラ様と対峙するのも気が引けてしまうし。グレス王子殿下の言う通り、少しだけ時間をずらした方が良いのかもしれないわね。
「うむ、その日なら空けておくことが出来そうだ。場所は貴族街の一本杉の前辺りで良いかな?」
「はい、畏まりました。よろしくお願いいたします……」
「いえいえ、こちらこそ」
私とグレス王子殿下は現在、二人で出掛ける日取りについて話し合っていた。いわゆる、デートの日取りというやつだ。私もグレス様も恥ずかしさから、なかなかデートとは言えなかったけれど、ジーン王女殿下が認めてくれなかった。
日取りを決めていた場所はグレス王子殿下のお部屋になる。つまり……ファルガ王国の王都コーデリーにある、ユイハンブラ宮殿内だ。久しぶりに入城の許可が出たので、私としては緊張していた。それから……今回はもう一人、同行者が居る。あ、付き人や護衛は除いてね。
「それにしても……まさか、ザック殿が私の部屋にやって来るとは思わなかったよ」
「グレス王子殿下にご挨拶に向かうのに、二回目も妹だけ、というのは失礼かと存じましたので……」
「うむ……そうか」
最初は敢えて、私だけに対応させる狙いで、ライドウ伯爵家はもぬけの殻になっていた。ザック・ライドウ兄さままで消える必要はなかった思ったけれど……まあ、ジーン王女殿下とグレス王子殿下は、その辺りはちゃんと理解してくれていた。
流石に今回は礼儀に反するという理由もあって、ザック兄さまが同行している。なぜ、兄さまが来たのかというと……グレス王子殿下とは、少しだけ因縁があって。
「しかし、こうして部屋でゆっくりと話すのは、剣術大会以来か……」
「左様でございますね、あの時はとても勉強させていただきました」
「幼少の頃から、誰よりも剣術の腕を磨いて来たつもりだったのだがな。まさか、ザック殿があそこまで強いとは思わなかった。私も決して慢心することなく、進んで行かなければ、と改めて再認識させられたよ」
「勿体ないお言葉でございます」
1年に1回行われている剣術大会。グレス王子殿下は2年連続で優勝を飾ることになった。今年の決勝の相手でザック兄さまで……思いの外、苦戦を強いられたらしい。二人はそのことについて話していた。気にせいか、目から火花を交錯させた状態で……ライバルとして、お互いに譲れないものがあるのかもしれない。
「しかし、まさかグレス王子殿下とデートの約束まで漕ぎ着けていたとは……流石だな、ミレーヌ。お前には周りを魅了する何かがあるのかもしれない」
「止めてください、ザック兄さま……もう……!」
「はははっ、済まなかった。まあ、お前が魅力的だということは私も父上、母上も良く分かっているさ。それからもちろん……グレス王子殿下もな」
「そ、それは……とても嬉しいのですが……」
そこまで面と向かって言われると、どうしても視線が逸れてしまう。逸れた視線は偶然にも、グレス王子殿下に当たっていた。
「グレス王子殿下もそのように感じられたから、妹をデートに誘ったのでしょう?」
「まあ、その通りかな。詳しい理由などについては、追々説明するさ」
「は、はい……ありがとうございます……」
グレス王子殿下も照れているようではあるけれど、前みたいに視線を逸らすことはなく、真剣な眼差しで話していた。本音……ということかしら? それにしても、デートに誘った詳しい理由って一体、何なんだろうか? 自分で言うのは恥ずかしいけれど、私の魅力? についてのことなのよね。
「あの……ところで、グレス王子殿下」
「どうしたんだ、ミレーヌ嬢?」
「はい……ええと。本日、ジーン王女殿下はどうされているのでしょうか……?」
「ああ、ジーンか。ジーンならば、自分の部屋に居ると思うぞ」
「左様でございますか……」
なるほど……私室に居るというのであれば、この前、有耶無耶になってしまったバクラ様のことを話した方が良いかもしれない。ついでと言ってしまえば失礼だけれど、せっかく、ユイハンブラ宮殿に来たのだから。
「ただ……」
「ただ? 如何なさいましたか……?」
「バクラ・クレメンス侯爵令息が、ジーンに用事があるということなのだ。そろそろ、訪れる頃合いだと思う。ジーンの部屋に行くのであれば、もう少し待ってからの方が良いだろうな」
「えっ……バクラ様が……?」
「ああ、そう聞いている」
しまった……まさか、こんなにもタイミングが重なってしまうなんて……かと言って、バクラ様と対峙するのも気が引けてしまうし。グレス王子殿下の言う通り、少しだけ時間をずらした方が良いのかもしれないわね。
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