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2話 来訪
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婚約破棄の日から数日が経過し、私は憂鬱な日々を送っていた。
お父様が心配して、私の部屋を訪ねてくれる。
「大丈夫か、ミレーヌよ……あんまり、無理をするでないぞ?」
「お父様、ありがとうございます。私は大丈夫ですので……」
「あまり、大丈夫なようには見えんが……本当に大丈夫か?」
「え、ええ……」
お父様に嘘を吐いても意味がないわね。全て見抜かれているような気がしてしまった。
「申し訳ございません……正直、憂鬱な日々を送っております……」
「なにを謝ることがある。婚約破棄をされたのだ、そうなってしまっても普通と言えるだろう」
お父様はまったく私を責めることはなかった。お父様だけでなく、お母様やお兄様も同じだったけれど……なんだか逆に悪い気がしてしまう。
バクラ・クレメンス様との婚約破棄は私にとって、想像以上のダメージとなっていた。ライドウ伯爵家にとっても婚約破棄というのは喜ばしいことではない……だから、余計にダメージになっているのだと思う。
加えて、彼の婚約者として過ごしていた半年間が全くの無駄に終わってしまったのだから……。
「ふむ、ミレーヌよ。自分を決して責めるでないぞ? お前は全く悪くないのだからな? 良いな」
「は、はい……お父様。ありがとうございます……」
「よしよし、では私は少し用事を思い出したので、失礼するぞ」
「はい……」
お父様はそこまで話し終えると、すぐに部屋から出て行った。なにか、急用を思い出したような表情を見せながら。一体、なにかしら……まあ、いいか。とにかく私は、あんまり自分を責め過ぎないようにしないと!
これが結構、難しいことではあるけれど……。
----------------------------
それからまた、何日かが経過した。
本日は穏やかに過ごせているかもしれない……特に仕事はなく、休日だからだ。こういう日こそ、ゆったりと過ごして心の疲れを癒さないといけないわね。バクラ様のことなんて、一刻も早く忘れた方が良いだろうし。
「ミレーヌ様、本日の予定について少しよろしいでしょうか?」
「あ、はい。どうかしたの?」
メイドの一人である、ルナが私の部屋に入って来た。今日の予定についての確認のようだ。でも、今日って休日だし何か重要なことってあったかしら?
「実は急遽、予定が入ったことがあります。その報告になるのですが……」
「はい。どんな予定かしら?」
「ジーン・ファルガ王女殿下のご訪問でございます」
「えっ……?」
私は最初、彼女が何を言ったのか理解出来なかった。
「も、もう一度、言ってくれないかしら……?」
「はい、畏まりました。ジーン・ファルガ王女殿下のご訪問でございます。それから……王女殿下の兄君に当たる、グレス・ファルガ王子殿下もいらっしゃるようでございます」
「……本当に?」
「はい、本当でございます」
ルナは冷静に私にそう告げる。ジーン王女殿下だけでも驚きなのに……まさか、グレス王子殿下もご訪問なさるとは。どういう反応をして良いのか分からない。
「お。お父様とお母様は……!?」
「デニス様とエルウィン夫人に関しては、屋敷にはいらっしゃいません。王女殿下達はミレーヌ様に用事があるので、問題はないとおっしゃっておりました」
「……」
絶対、問題があると思うけれど……これはきっと、狙って行われたことね。私の為ではあるんだろうけど……正直、嬉しさよりも緊張感の方が大きい。まったく、おせっかいなんだからお父様は……。
お父様が心配して、私の部屋を訪ねてくれる。
「大丈夫か、ミレーヌよ……あんまり、無理をするでないぞ?」
「お父様、ありがとうございます。私は大丈夫ですので……」
「あまり、大丈夫なようには見えんが……本当に大丈夫か?」
「え、ええ……」
お父様に嘘を吐いても意味がないわね。全て見抜かれているような気がしてしまった。
「申し訳ございません……正直、憂鬱な日々を送っております……」
「なにを謝ることがある。婚約破棄をされたのだ、そうなってしまっても普通と言えるだろう」
お父様はまったく私を責めることはなかった。お父様だけでなく、お母様やお兄様も同じだったけれど……なんだか逆に悪い気がしてしまう。
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「は、はい……お父様。ありがとうございます……」
「よしよし、では私は少し用事を思い出したので、失礼するぞ」
「はい……」
お父様はそこまで話し終えると、すぐに部屋から出て行った。なにか、急用を思い出したような表情を見せながら。一体、なにかしら……まあ、いいか。とにかく私は、あんまり自分を責め過ぎないようにしないと!
これが結構、難しいことではあるけれど……。
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それからまた、何日かが経過した。
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「ミレーヌ様、本日の予定について少しよろしいでしょうか?」
「あ、はい。どうかしたの?」
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「実は急遽、予定が入ったことがあります。その報告になるのですが……」
「はい。どんな予定かしら?」
「ジーン・ファルガ王女殿下のご訪問でございます」
「えっ……?」
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「も、もう一度、言ってくれないかしら……?」
「はい、畏まりました。ジーン・ファルガ王女殿下のご訪問でございます。それから……王女殿下の兄君に当たる、グレス・ファルガ王子殿下もいらっしゃるようでございます」
「……本当に?」
「はい、本当でございます」
ルナは冷静に私にそう告げる。ジーン王女殿下だけでも驚きなのに……まさか、グレス王子殿下もご訪問なさるとは。どういう反応をして良いのか分からない。
「お。お父様とお母様は……!?」
「デニス様とエルウィン夫人に関しては、屋敷にはいらっしゃいません。王女殿下達はミレーヌ様に用事があるので、問題はないとおっしゃっておりました」
「……」
絶対、問題があると思うけれど……これはきっと、狙って行われたことね。私の為ではあるんだろうけど……正直、嬉しさよりも緊張感の方が大きい。まったく、おせっかいなんだからお父様は……。
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