28 / 41
28話 誘拐事件 その2
しおりを挟む
「さて、どこから話せばよいのやら……」
「色々ありましたから。難しいですわね……」
誘拐事件の話を議会内でするわけにはいかなかったので、私達は移動することになった。私達が向かった場所はマグナ宮殿の応接室だ。やはりこういう場所が一番しっくりくる。
マグナ宮殿で仕事をしているメイド達から、飲み物などが振る舞われ、私とカイン様はザルバック国王陛下のお話に注力した。
「22年前、リリアーヌは隣国のロア王国の王女だった。これは知っていると思うがな」
「はい、存じております」
「同じく、存じております」
私とカイン様はほとんど同時に頷いた。この辺りは貴族教育の中で自然と出て来る内容だ。南の国境線を越えたところに位置するロア王国。南の辺境伯であるガゼル・ヴァイスハイト様が、その間を守っていることになる。
リリアーヌ様の出生の関係から、辺境伯の地位の高さも自然と学習できるはずなんだけれど……マリア姉さまはきっと、そのあたりをサボったんでしょうね。
「当然、私とリリアーヌの結婚が両国間の交友を深める為の政略結婚であると叩かれた件も知っているだろう?」
「はい、知っております」
「伺っております」
両国間の交友を深める為の政略結婚……現在、我がサイドル王国とロア王国の友好関係にある。22年以上前には戦争をしていた時代もあったらしいけど、現在の仲は良好と言えるだろう。ロア王国の特産品も入ってくるし、私達の土地で熟成する野菜なども、向こうへと届けられる。
当時の風潮、貴族制度がどういうものだったを詳細に把握するのは難しいけれど、政略結婚自体が叩かれる風潮だったとは考えられない。私達貴族は、国民の為にも愛のない婚約だってするからだ。
だとしたら……ザルバック国王陛下とリリアーヌ王妃様に対するバッシングは、彼ら二人に対する個人攻撃みたいなものか。それとも……サイドル王国か、ロア王国の王家の転覆を狙う組織の陰謀か……。
「カイン、テレーズ嬢よ。不思議に思うだろう?」
「左様でございますね……当時の時代を考慮しても、お二人の結婚に対して政略結婚だ! という言葉が飛び交うことに違和感を覚えます。何か陰謀めいたものを感じますね」
流石はカイン様だった。しっかりと把握されている。
「そういうことだ。私はその時は必死で火消しを行ったものだが……それ自体が、奴らの思惑だったのだろうな」
「奴ら? 奴らとは……?」
「私のことを誘拐した者達のことですよ」
カイン様の質問に答えたのはリリアーヌ様だった。彼女は平静を装っているけれど、どこか寂しそうな怒りに満ちているような……そんな微妙な表情をしていた。
「色々ありましたから。難しいですわね……」
誘拐事件の話を議会内でするわけにはいかなかったので、私達は移動することになった。私達が向かった場所はマグナ宮殿の応接室だ。やはりこういう場所が一番しっくりくる。
マグナ宮殿で仕事をしているメイド達から、飲み物などが振る舞われ、私とカイン様はザルバック国王陛下のお話に注力した。
「22年前、リリアーヌは隣国のロア王国の王女だった。これは知っていると思うがな」
「はい、存じております」
「同じく、存じております」
私とカイン様はほとんど同時に頷いた。この辺りは貴族教育の中で自然と出て来る内容だ。南の国境線を越えたところに位置するロア王国。南の辺境伯であるガゼル・ヴァイスハイト様が、その間を守っていることになる。
リリアーヌ様の出生の関係から、辺境伯の地位の高さも自然と学習できるはずなんだけれど……マリア姉さまはきっと、そのあたりをサボったんでしょうね。
「当然、私とリリアーヌの結婚が両国間の交友を深める為の政略結婚であると叩かれた件も知っているだろう?」
「はい、知っております」
「伺っております」
両国間の交友を深める為の政略結婚……現在、我がサイドル王国とロア王国の友好関係にある。22年以上前には戦争をしていた時代もあったらしいけど、現在の仲は良好と言えるだろう。ロア王国の特産品も入ってくるし、私達の土地で熟成する野菜なども、向こうへと届けられる。
当時の風潮、貴族制度がどういうものだったを詳細に把握するのは難しいけれど、政略結婚自体が叩かれる風潮だったとは考えられない。私達貴族は、国民の為にも愛のない婚約だってするからだ。
だとしたら……ザルバック国王陛下とリリアーヌ王妃様に対するバッシングは、彼ら二人に対する個人攻撃みたいなものか。それとも……サイドル王国か、ロア王国の王家の転覆を狙う組織の陰謀か……。
「カイン、テレーズ嬢よ。不思議に思うだろう?」
「左様でございますね……当時の時代を考慮しても、お二人の結婚に対して政略結婚だ! という言葉が飛び交うことに違和感を覚えます。何か陰謀めいたものを感じますね」
流石はカイン様だった。しっかりと把握されている。
「そういうことだ。私はその時は必死で火消しを行ったものだが……それ自体が、奴らの思惑だったのだろうな」
「奴ら? 奴らとは……?」
「私のことを誘拐した者達のことですよ」
カイン様の質問に答えたのはリリアーヌ様だった。彼女は平静を装っているけれど、どこか寂しそうな怒りに満ちているような……そんな微妙な表情をしていた。
59
あなたにおすすめの小説
妹の嘘を信じて婚約破棄するのなら、私は家から出ていきます
天宮有
恋愛
平民のシャイナは妹ザロアのために働き、ザロアは家族から溺愛されていた。
ザロアの学費をシャイナが稼ぎ、その時に伯爵令息のランドから告白される。
それから数ヶ月が経ち、ザロアの嘘を信じたランドからシャイナは婚約破棄を言い渡されてしまう。
ランドはザロアと結婚するようで、そのショックによりシャイナは前世の記憶を思い出す。
今まで家族に利用されていたシャイナは、家から出ていくことを決意した。
君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました
水谷繭
恋愛
メイベル・ホワイトは目立たない平凡な少女で、美人な姉といつも比べられてきた。
求婚者の殺到する姉とは反対に、全く縁談のなかったメイベル。
そんなある日、ブラッドという美少年が婚約を持ちかけてくる。姉より自分を選んでくれたブラッドに感謝したメイベルは、彼のために何でもしようとひたすら努力する。
しかしそんな態度を重いと告げられ、君といると疲れると言われてしまう。
ショックを受けたメイベルは、ブラッドばかりの生活を改め、好きだった魔法に打ち込むために魔術院に入ることを決意するが……
◆なろうにも掲載しています
虐げられた令嬢は、耐える必要がなくなりました
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私アニカは、妹と違い婚約者がいなかった。
妹レモノは侯爵令息との婚約が決まり、私を見下すようになる。
その後……私はレモノの嘘によって、家族から虐げられていた。
家族の命令で外に出ることとなり、私は公爵令息のジェイドと偶然出会う。
ジェイドは私を心配して、守るから耐える必要はないと言ってくれる。
耐える必要がなくなった私は、家族に反撃します。
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
初恋を諦めたあなたが、幸せでありますように
ぽんちゃん
恋愛
『あなたのヒーローをお返しします。末永くお幸せに』
運命の日。
ルキナは婚約者候補のロミオに、早く帰ってきてほしいとお願いしていた。
(私がどんなに足掻いても、この先の未来はわかってる。でも……)
今頃、ロミオは思い出の小屋で、初恋の人と偶然の再会を果たしているだろう。
ロミオが夕刻までに帰ってくれば、サプライズでルキナとの婚約発表をする。
もし帰ってこなければ、ある程度のお金と文を渡し、お別れするつもりだ。
そしてルキナは、両親が決めた相手と婚姻することになる。
ただ、ルキナとロミオは、友人以上、恋人未満のような関係。
ルキナは、ロミオの言葉を信じて帰りを待っていた。
でも、帰ってきたのは護衛のみ。
その後に知らされたのは、ロミオは初恋の相手であるブリトニーと、一夜を共にしたという報告だった――。
《登場人物》
☆ルキナ(16) 公爵令嬢。
☆ジークレイン(24) ルキナの兄。
☆ロミオ(18) 男爵子息、公爵家で保護中。
★ブリトニー(18) パン屋の娘。
殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。
和泉鷹央
恋愛
雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。
女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。
聖女の健康が、その犠牲となっていた。
そんな生活をして十年近く。
カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。
その理由はカトリーナを救うためだという。
だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。
他の投稿サイトでも投稿しています。
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
両親に溺愛されて育った妹の顛末
葉柚
恋愛
皇太子妃になるためにと厳しく育てられた私、エミリアとは違い、本来私に与えられるはずだった両親からの愛までも注ぎ込まれて溺愛され育てられた妹のオフィーリア。
オフィーリアは両親からの過剰な愛を受けて愛らしく育ったが、過剰な愛を受けて育ったために次第に世界は自分のためにあると勘違いするようになってしまい……。
「お姉さまはずるいわ。皇太子妃になっていずれはこの国の妃になるのでしょう?」
「私も、この国の頂点に立つ女性になりたいわ。」
「ねえ、お姉さま。私の方が皇太子妃に相応しいと思うの。代わってくださらない?」
妹の要求は徐々にエスカレートしていき、最後には……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる