婚約破棄されたけど、私はあなたを信じます!

マルローネ

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17話

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「えっ……そ、そんなことが……!?」


 私はシンディの話を聞いて信じられなかった。私の婚約中にシンディと知り合い、仲良くなったことも初めて聞いたけれど……それ以上の仲に進展していたなんて。

「本当なんですか? アルフ様……」

「今さら嘘なんて言わないわよね、アルフ? あなたが私の身体をむさぼったのは紛れもない事実なんだから。あなたは私の喘ぎ声をその耳で聞いていたはずよ」

「ど、どうなんですか……?」

「その話は事実だ……本当に済まない。私は婚約者失格なんだ……」

「そ、そんな……! アルフ様……!」


 私は思わず崩れ落ちそうになった。まさかそんなことがあったなんて思わなかったから。それをこの廃屋で聞かされたのもショックだった。

「私は……悪そのものだ。テレーズに顔を向けることができないんだ……」

「あはははは! だから言ったじゃない! あなたはもう私の物だって! 私の身体を奪ったんだから、あなたに選択権なんてあるわけないわよね? 操り人形になるしか道はないのよ!」


 こんなことがあっていいんだろうか……? なんで、どうして……アルフはシンディを抱いた。これが事実だった。だからこそ、彼はシンディの言いなりになっているのだ。

 私の立場はなんだったのだろうか? 婚約中に厳しい花嫁修業をしていて、辛い時にはこの廃屋に訪れてお祈りもして。アルフのことを思い出してまた元気になって。アルフはアルフで苦労していただろうし、クロフォード家とデモン家の間に挟まれての仕事だって大変だっただろう。

 それとは別に侯爵になる為の修行みたいなものがあったはずだし。苦労の度合いで言えば彼の方が勝っているはずだ。でも、彼はシンディと浮気をしていた……この思い出の廃屋で一緒に笑い合っていた時から? いつなのかは分からないけれど、それでも浮気をしたことは事実なのだ。


「テレーズ……私のことはもう……忘れて……」

「忘れませんよ、私は。いいえ、アルフ。忘れてなんてやるもんか」

「テレーズ……?」


 初めて彼と普通に話した気がした。今まで敬語だったのが嘘みたいに。私はアルフのことを愛している。これに変わりはなかった。それに……彼は私に婚約破棄をする時、一生恨んでくれても構わないと言ったわけで。シンディの言いなりだったにしてはおかしな言動だ。普通ならばもっと酷い言葉が出て来てもおかしくないのに。

 アルフの本音は別のところにある……自分のことを忘れて欲しいなんて考えていないかもしれない。だから……。


「絶対に忘れません。あなたのことが好きですから」

「テレーズ……」

「シンディ様も今回はこれで失礼いたします」

「ちょっと、まだ話は終わってないわよ?」

「知りません」


 これ以上ここで話すことはない。思い出の場所が汚れるのも嫌だった。シンディのテンポの合わせる必要なんて微塵もない。私の反撃はここからだ。
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