9 / 20
9話 シンディが訪れる
しおりを挟む
「ごきげんよう、二人とも。シンディ・クロフォードよ。まあ、名乗る必要なんてないと思うけれど、一応ね」
「シンディ様……ようこそいらっしゃいました」
「ごきげんよう、シンディ様」
私とデュラン兄さんは驚きを隠せない状態だったけれど、なんとか挨拶を済ませた。なぜこんなところに……お父様にも問いかけたかったけれど、お父様の立場では通さないわけにはいかないだろう。
「座っても宜しいでしょうか?」
「私の家ではないのだから、好きにしたらいいんじゃないの?」
私も兄さんも応接室の椅子に座った。お父様は……私達の横に座った。
「突然、訪ねて来たのに入れてくださって感謝しますわ。リジェント伯爵。いえ……マーヴェラス様」
マーヴェラス・リジェント……私の父親の名前である。
「いえ、とんでもないことです。シンディ様……お越しいただいてありがとうございました」
「うふふ、ありがとう」
お父様は気のない格式的な返事をしたけれど、そんなことはシンディ様も分かっているようだった。何も気にしている様子を見せていない。彼女の両隣には護衛兼執事? のような屈強な男性陣が構えていた。
「さてと、無駄話は好きではないでしょうから、建設的な話をしましょうか」
「シンディ様はどうしてここへ来たのですかな? アルフ様はいらっしゃらないようですが……」
お父様がまずは切り出した。シンディ様はすぐには答えない。
「……」
「聞いておられますか、シンディ様?」
「聞いているわよ、デュラン。どうかしたの? 焦っているように思えるのだけれど……うふふ」
「……言いますね」
挑発的なシンディ様の言葉だった。デュラン兄さんは焦って話したことを後悔している。このやり取りだけでも、シンディ様の器の大きさが垣間見えた気がした。
「私がここに来た理由は、アルフとの婚約が決まったからなの」
「えっ……? アルフ様との婚約……?」
そうなるだろうとは思っていたけれど、ここでは初耳だった。
「ええ、まあね。私もアルフも愛し合っているから……それに、貴族の階級的にもお互いに良い関係が築けそうでしょう? 国王陛下も許可してくれたわ」
「そんな……バカな……」
「本当のことよ。ギゼル国王陛下からしたら、私達の結婚は賞賛すべきことなんでしょうね」
私とアルフの婚約は破棄されたというのに、その直後のシンディとの婚約はOKされたということか。どうなっているの? 彼女は国王陛下になにを言ったの……?
いえ、それ以上にお父様はどうしたのだろうか……婚約破棄の件はお父様が行ったはずだけれど。私にはもう何が正しいのか判断できなかった。
「シンディ様……ようこそいらっしゃいました」
「ごきげんよう、シンディ様」
私とデュラン兄さんは驚きを隠せない状態だったけれど、なんとか挨拶を済ませた。なぜこんなところに……お父様にも問いかけたかったけれど、お父様の立場では通さないわけにはいかないだろう。
「座っても宜しいでしょうか?」
「私の家ではないのだから、好きにしたらいいんじゃないの?」
私も兄さんも応接室の椅子に座った。お父様は……私達の横に座った。
「突然、訪ねて来たのに入れてくださって感謝しますわ。リジェント伯爵。いえ……マーヴェラス様」
マーヴェラス・リジェント……私の父親の名前である。
「いえ、とんでもないことです。シンディ様……お越しいただいてありがとうございました」
「うふふ、ありがとう」
お父様は気のない格式的な返事をしたけれど、そんなことはシンディ様も分かっているようだった。何も気にしている様子を見せていない。彼女の両隣には護衛兼執事? のような屈強な男性陣が構えていた。
「さてと、無駄話は好きではないでしょうから、建設的な話をしましょうか」
「シンディ様はどうしてここへ来たのですかな? アルフ様はいらっしゃらないようですが……」
お父様がまずは切り出した。シンディ様はすぐには答えない。
「……」
「聞いておられますか、シンディ様?」
「聞いているわよ、デュラン。どうかしたの? 焦っているように思えるのだけれど……うふふ」
「……言いますね」
挑発的なシンディ様の言葉だった。デュラン兄さんは焦って話したことを後悔している。このやり取りだけでも、シンディ様の器の大きさが垣間見えた気がした。
「私がここに来た理由は、アルフとの婚約が決まったからなの」
「えっ……? アルフ様との婚約……?」
そうなるだろうとは思っていたけれど、ここでは初耳だった。
「ええ、まあね。私もアルフも愛し合っているから……それに、貴族の階級的にもお互いに良い関係が築けそうでしょう? 国王陛下も許可してくれたわ」
「そんな……バカな……」
「本当のことよ。ギゼル国王陛下からしたら、私達の結婚は賞賛すべきことなんでしょうね」
私とアルフの婚約は破棄されたというのに、その直後のシンディとの婚約はOKされたということか。どうなっているの? 彼女は国王陛下になにを言ったの……?
いえ、それ以上にお父様はどうしたのだろうか……婚約破棄の件はお父様が行ったはずだけれど。私にはもう何が正しいのか判断できなかった。
0
お気に入りに追加
282
あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」
結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は……
短いお話です。
新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。
4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる