婚約破棄されたけど、私はあなたを信じます!

マルローネ

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9話 シンディが訪れる

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「ごきげんよう、二人とも。シンディ・クロフォードよ。まあ、名乗る必要なんてないと思うけれど、一応ね」

「シンディ様……ようこそいらっしゃいました」

「ごきげんよう、シンディ様」


 私とデュラン兄さんは驚きを隠せない状態だったけれど、なんとか挨拶を済ませた。なぜこんなところに……お父様にも問いかけたかったけれど、お父様の立場では通さないわけにはいかないだろう。


「座っても宜しいでしょうか?」

「私の家ではないのだから、好きにしたらいいんじゃないの?」


 私も兄さんも応接室の椅子に座った。お父様は……私達の横に座った。


「突然、訪ねて来たのに入れてくださって感謝しますわ。リジェント伯爵。いえ……マーヴェラス様」


 マーヴェラス・リジェント……私の父親の名前である。

「いえ、とんでもないことです。シンディ様……お越しいただいてありがとうございました」

「うふふ、ありがとう」


 お父様は気のない格式的な返事をしたけれど、そんなことはシンディ様も分かっているようだった。何も気にしている様子を見せていない。彼女の両隣には護衛兼執事? のような屈強な男性陣が構えていた。

「さてと、無駄話は好きではないでしょうから、建設的な話をしましょうか」

「シンディ様はどうしてここへ来たのですかな? アルフ様はいらっしゃらないようですが……」


 お父様がまずは切り出した。シンディ様はすぐには答えない。

「……」

「聞いておられますか、シンディ様?」


「聞いているわよ、デュラン。どうかしたの? 焦っているように思えるのだけれど……うふふ」

「……言いますね」


 挑発的なシンディ様の言葉だった。デュラン兄さんは焦って話したことを後悔している。このやり取りだけでも、シンディ様の器の大きさが垣間見えた気がした。

「私がここに来た理由は、アルフとの婚約が決まったからなの」

「えっ……? アルフ様との婚約……?」


 そうなるだろうとは思っていたけれど、ここでは初耳だった。


「ええ、まあね。私もアルフも愛し合っているから……それに、貴族の階級的にもお互いに良い関係が築けそうでしょう? 国王陛下も許可してくれたわ」

「そんな……バカな……」

「本当のことよ。ギゼル国王陛下からしたら、私達の結婚は賞賛すべきことなんでしょうね」


 私とアルフの婚約は破棄されたというのに、その直後のシンディとの婚約はOKされたということか。どうなっているの? 彼女は国王陛下になにを言ったの……?

 いえ、それ以上にお父様はどうしたのだろうか……婚約破棄の件はお父様が行ったはずだけれど。私にはもう何が正しいのか判断できなかった。
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