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4話

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「マリス! 其方には私のとっておきを見せてやるぞ!」

「ええと……とっておきですか……?」


 婚約者としてロックリー家に派遣されたその日、私はケルヴィン様に気に入られたのか、彼の研究所に入ることを許された。ちなみに研究所という名前はケルヴィン様が勝手に呼んでいるだけらしい。使用人の人がこっそり教えてくれた。

「ここだ! といっても自室を改造した部屋に過ぎないが……ここで私は様々な研究を行っているのだ!」

「様々な研究……ですか? 確かに……」


 研究所と呼ばれる彼の自室は確かに、色々なものを研究している様子だった。見たこともない生物がビーカーに入っていたりするし……。ケルヴィン様は研究者のようだ。それを鑑みるとそのやつれた姿も納得がいく。偏屈や変人と呼ばれる所以もこの研究にあるのではないだろうか。そんな気がしてしまった。

「ここではどんな研究をしているのですか?」

「それはもう色々な研究を毎日のように行っている。近場の生物を捕らえて食料にできないか、近場の雑草から新しい特効薬を作れないかなど色々だ!」


 雑草から特効薬を作るのは納得できるけれど、近場の生物を食料にできないかの研究は、少し付いて行けなかった。いずれ来る食料問題への回答になるのだろうか?

「まあ、現在進行形の研究はどうでもいいのだ。私が試したいのは別のもの……魔法を人々の役に立てられないかだからな!」

「えっ、魔法を人々の役に……ですか?」

「その通りだ! その為に其方の協力が必要なのだ! 協力してくれないか?」

「えっ……でも……」


 私の能力は15年もの間、周りの人を怖れさせてきた。過去には事情があったとはいえ、人を傷付けている。そんな能力を活かせる場なんて……。

「私の能力は15年も前から周囲の人を怖れさせてきました。今さら何の役に立つのでしょうか……」

「そこが問題なのだ!」

「えっ? ケルヴィン様……?」


 ケルヴィン様の反応は明らかに他の人とは違っていた。少なくとも微塵も怖れを感じさせない。

「偉大なる魔法! これを研究しなくては人類に未来はないとさえ思えるがな! 恐れているだけの凡人では、その素晴らしさに辿り着くことは永遠にあるまい!」

「ケルヴィン様……」

「私が其方の能力を完璧に扱ってみせよう! 其方は運がいいぞ! この私と出会えたのだからな!」


 ケルヴィン様は私の能力……魔法の能力を研究し、掌握できるとまで考えているようだった。信じられない……こんな人はいままで出会ったことがない。呪われた過去の遺物……そんな風に言われたこともあったっけ。

「少し時間はかかるかもしれないが、其方の能力を完璧に操って見せよう! 私に全てを託すがいいぞ、マリスよ!」

 変人……確かに今のケルヴィン様を見るとそのように呼ぶのが正しいと思えてしまう。でも私は嬉しかった。私の中の魔法の能力を認めてもらえたのだから。この方に付いていきたい……私の心はその感情に満たされていた。
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