上 下
4 / 5

4話 連絡

しおりを挟む

「エンブリオ侯爵は身勝手な婚約破棄をしただけでなく、慰謝料すら払わないと言ったのか?」

「左様でございます。慰謝料は支払わないと……」

「なんということだ。まさか、侯爵の立場にある者がそんな基本的なことを疎かにするとは……」


 マークス様はクロッセ様の身勝手な振る舞いをとても残念に思っているようだった。まあ、普通に考えればおかしなことだ。

「アルド殿が対策を練っているようだが、それでも無理な場合は私が何とかしてみよう」

「マークス様、よろしいのですか?」

「ああ、大船に乗ったつもりでいてくれ」

「わ、分かりました……ありがとうございます」

 これは驚いた……慰謝料の問題について、王子殿下が助けになってくれるとは。これ以上ない程に頼りになる存在なのだから。

「しかし、マークス様。どうして私の為にそこまでしてくれるのですか?」

「ん? まあ、その辺りは追々説明しよう」

 あれ? なんだかマークス様の顔が赤いような……それにはぐらかされてしまったわ。

「私も意外と忙しい身なのでな。カミーユの様子も見れたことだし、私はそろそろ失礼させてもらおうか」

「あ、畏まりました。その……わざわざ、来ていただいて本当にありがとうございます!」


 私は精一杯頭を下げてお礼を言った。こんな言葉では言い表せない程に嬉しいけれど、今の私に出来ることはこれくらいだ。

「はは、本当なら気にするなと言いたいところだが、せっかくのカミーユからのお礼だ。ありがたく受け取っておくよ」

「はい、マークス様。あの……また、会えるでしょうか?」

「ああ、そうだな。私もカミーユの様子は定期的に見たいと思っているし……こちらに居る、ゼランと相談してくれ」


 マークス様がそう言うと、ゼラン様が前に出て来た。彼と相談すれば良いのかしら?

「私はマークス様の付き人として同行しております。マークス様への連絡係も行っておりますので……必要な場合は私にご連絡くださいませ。マークス様とお会いになられる際の日程調整など、ご相談させていただきますので……」

「畏まりました。よろしくお願いいたしますね、ゼラン様」

「こちらこそよろしくお願い致します、カミーユ様」


 マークス様に会いたければ、まずは子爵令息のゼラン様を通せば良いわけね。これは嬉しいことを聞いたわ。

 その後、私はゼラン様から連絡先を教わった。宮殿に直接連絡しても良いし、ゼラン様の屋敷に連絡しても良いとのことだった。これからはゼラン様と会うことが多くなりそうね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄令嬢ですけど、幼馴染王子と結ばれました~私を捨てた公爵様のことはもう知りません~

ルイス
恋愛
オルガス王国の貴族で、伯爵令嬢という立場にあったマドレーヌ。 公爵と婚約をしていたが、身勝手な理由により婚約破棄を言い渡されてしまった。 そんな彼女を救うのは、幼馴染でもあり第一王子殿下のカール。 二人は幼少の頃のような関係に戻り、幸せを享受していくのだった。周囲の助けも借りながら……。 一方で婚約破棄を言い渡した公爵はこれが原因となり、黒い噂などが出回ることになり……。

悪役?令嬢の矜持

柚木ゆず
恋愛
「サラ・ローティシアル! 君との婚約は、この瞬間を以て破棄する!!」  ローティシアル伯爵令嬢のサラ。彼女の婚約者であるヘクターは心変わりをしており、今の想い人と交際を行うためサラの罪を捏造していました。  その結果サラは大勢の前で婚約破棄を宣言され、周囲からは白目で見られるようになってしまうのですが――。 「お待ちくださいまし。わたくし、今のお話は納得できませんわ」  そんな時でした。  サフェタンエス侯爵令嬢、アリーヌ。いつも激しくサラをライバル視をしていたはずの人が、二人の間に割って入ったのでした。

婚約破棄までの半日をやり直す話

西楓
恋愛
侯爵令嬢のオリヴィアは婚約者の王子にパーティーで婚約破棄を宣言され、国外追放となる。その途中で野盗に襲われて命を落としたと思ったら、パーティーの朝に戻っていた。

私のせいで婚約破棄ですか? 思い当たることがないのですが? 番外編

柚木ゆず
恋愛
私のせいで婚約破棄ですか? 思い当たることがないのですが? の番外編(補完編)です。

幼馴染の忠告を無視した令息の、その後

柚木ゆず
恋愛
 ストーリーに関係するとある演出のためいったん完結表示になりますが、明日以降も投稿をさせていただきます。  レリスタル子爵令嬢アリアーヌの幼馴染であり婚約者でもある、ラヴァロック子爵令息コンスタン。思いやりがあり優しかったコンスタンは、偶然大金を手にしてしまったことで変わってしまいます。  金遣いが荒くなり、自分よりお金を持っていない人間を見下すようになる。  そのせいで他貴族から反感を買ったりしてしまっていると知ったアリアーヌは、言動を改めるよう説得します。  ですがコンスタンは話を聞かないどころか、逆上してアリアーヌに怪我を負わせてしまいます。  その結果アリアーヌとコンスタンは婚約を解消することとなり、アリアーヌの優しさを踏みにじったコンスタンはやがて――

まさか、今更婚約破棄……ですか?

灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
チャールストン伯爵家はエンバー伯爵家との家業の繋がりから、お互いの子供を結婚させる約束をしていた。 エンバー家の長男ロバートは、許嫁であるチャールストン家の長女オリビアのことがとにかく気に入らなかった。 なので、卒業パーティーの夜、他の女性と一緒にいるところを見せつけ、派手に恥を掻かせて婚約破棄しようと画策したが……!? 色々こじらせた男の結末。 数話で終わる予定です。 ※タイトル変更しました。

魅了魔法に掛かっていた私は被害者だと元婚約者が復縁を求めてきますが、貴方が魅了魔法に掛かっていた事はみんな知っていましたよ?

庚寅
恋愛
この作品は更新を終了することに致しました。 ここまでのご愛読ありがとうございましたm(_ _)m ✱話の展開速度等が気になる方は、完結表示が付いてから読まれる事をお勧め致します。 「リリーシア嬢!私は貴方との婚約をこの場を以て破棄する!」  ババーン!とでも効果音の付きそうな程に大袈裟な身振りで、彼の人は宣言した。 「婚約破棄、ですか。その意味を理解した上でのお言葉ですか? セリアージュ殿下」 「もちろんだ! 国の第一王子である私の婚約者という立場に在りながら、妃教育を受けることも無く茶会ばかり催しているような者は私の婚約者には相応しくない! そんな王子妃の資質の欠片もないような貴方との婚約は今この時を以て破棄だ! 私はこの、ミリアと婚約する!」 そうですか、宜しいのですね。 それではわたくしは自分の国へと帰らせて頂きます。 自国のただの貴族令嬢との婚約など破棄しても問題ないと公衆の面前で婚約破棄を言い渡した王子と、婚約破棄を言い渡された他国の姫君のお話。 タイトル通り ざまぁするのが中心のお話し。 思いの外説明に文字数を使いそうなので、ショートショートから短編へと表記変更させて頂きました。 ✱✱✱✱✱✱✱✱ ここまでの読者様が読んでくださるとは思わず、流行りに乗っかり気楽にたまに更新位の気持ちで書き始めたので、更新が不定期ですみません。 昨夜HOTランキング2位にいるのを発見し、思わず震えてしまいました…。 感想や誤字報告、ご指摘などありがとうございます。 近況の方は別作品の小噺等で活用しているので、ここで挨拶をさせて頂きます。 感想にはネタバレも含まれる事があるので一律お返事は控えさせて頂きますが、応援とても嬉しいです。ありがとうございます。 指摘や誤字報告にのみの返事になるのが申し訳無いのですが、全て目を通し、反映させて頂いております。 稚拙な文でご不快に思われる方もいるかと思いますが、モチベーションのやりくりをしながら完結まで書きたいと思っておりますので、引き続きご覧頂ければ幸いです。 読んでくださる皆様に心からの感謝を。

処理中です...