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3話

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(ニック視点)


 ふふふ、ようやくエリザとの婚約破棄の理由を作ることが出来たぞ。家宝の壺を犠牲にしてしまったのは惜しかったが、それだけの価値はあるというものだ。エリザとの婚約は1年ほど前から決まっていたが、私は納得していなかった。

 特にエリザが嫌いだとかそういうことではない。私はまだまだ遊びたかったのだ。特に市民街に行って遊ぶことは本当に楽しかったからな。貴族街では体験できないことも多かった。だから、私はエリザと結婚して、そういう遊びがやりにくくなるのは非常に困っていたからな。


 色々な婚約破棄の方法を考えた。しかし、エリザは変に優秀だったのだ。仕事をサボることもしなければ、花嫁修業も問題なくこなしてきた。彼女との婚約破棄の方法、手段はどんどん限られていった。私は浮気……いや、女遊びをまだまだやりたかった。私もまだ10代だからな。何かに縛られるのはごめんだったのだ。


 そして、考え付いたのがこの方法だ。少々、強引な手段ではあったが、効果はテキメンだった。エリザの屋敷に訪れて直接糾弾、証人も適当に立てて証拠も完璧にそろえた。

 エリザとは婚約破棄ができ、金も手に入る。さらにはエリザを犯罪者として牢獄に入れられるのだ。これで私が行った家宝の壺破壊は彼女の手によるものとして裁かれていくだろう。完璧な手段だった。


-----------------------------

(エリザ視点)


「エルグ……」

「エリザ、久しぶりだな。まさかこんな事態に巻き込まれているとは思わなかったけど、今日、この屋敷に来ていて正解だったよ」


 エルグは私の味方をしてくれている。きっと、濡れ衣だということも信じてくれているのだろう。これはとてもありがたいことだ。

「エルグ殿、エリザの味方をしているようだが、それがどういうことか分かっているのか? 犯罪者の味方をする侯爵令息として噂されてしまうぞ?」


 ここにきて、ニック様は脅しまで掛けて来た。これはどう考えてもおかしい……私のことを陥れようとしているのではないだろうか? 恨まれることをした覚えはないけれど、家宝の壺を壊した云々の話も変だ。急にこんな話が出て来るなんて……しかも、ありえない証人まで用意されている。

「ええ、確かに噂されてしまいますね。この話が……家宝の壺が壊されたのが、自作自演ではなかった場合は、ですが」

「なんだと?」


 自作自演……私もその疑いは持っていた。同時にこれだけの事件なら、ニック様レベルの人が動いていないと起こり得ない。私が犯人ではないのだから、他の誰かがその壺を壊したということになる。その場合の最有力候補はニック様本人だった。というか、それしか考えられない。彼は最初から私を犯人にしようと企んでいるのだろう。
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