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5話

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「レナン・メイブール伯爵か……ジプシーが婚約をした相手だな?」

「そうですね、はい……」

「レナン様……私の妹に対して酷い目に遭わせてくれた相手ですわ」


 シエスタ姉さんもかなりの言いようだった。アルマーク様も怒りに満ちているようだ。それは非常に嬉しいことなのだけれど……。なんだか申し訳ない気持ちでもある。

「アルマーク様、すみません……こんな自分の話しかできなくて……」


 自分の話で持ちきりなのは申し訳なかった。せっかく楽しい場のはずなのに……暗くなってしまうみたいで。でも、アルマーク様はまったく頷いていなかった。あれ……?

「気にする必要はないよ、ジプシー。私は怒っているんだレナン・メイブールに関してね。この感情はなんとも言い難いものではあるが……」

「アルマーク様……ありがとうございます」

「いや、気にする必要はないよ」


 アルマーク様はどこまでも優しかった。周囲を見ると私達の会話を見ている人達がいるけれど、それすら気にならない程に嬉しかった。なんて言えばいいのか……味方になってくれる人がいるとここまで心強いんだ。自殺未遂を考えていた自分を卑下したくなるほどだわ。


「あらあら、なんだかとても良い雰囲気ですね」

「ん? シエスタ……? なにを言っているんだ?」

「えっ、姉さん……?」


 そんな私達を見ていたのはシエスタ姉さんだった。いつものようにいたずらっぽく笑っているわ。なんだか嫌な予感がしてしまうのだけれど……。

「このパーティーでは私はどうやらお邪魔のようですわね。それならそうと言ってくださればいいのに……」

「いえ、姉さん。なにを言っているの?」

「シエスタ……どうしたんだ?」


 姉さんの言っている意味が分からなかった。彼女は何を言っているんだろうか?

「いえいえ、お二人の邪魔は致しませんので……私は一人でパーティーを楽しみたいと思いますわ」

「な、なに……?」

「ね、姉さん……!」

「うふふふふふふ、ごゆっくり~~~~」


 シエスタ姉さんはそのままの勢いで去って行った……残されたのは気まずい雰囲気になった私達だけ。どうしたらいいのかしら……?
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