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6章 パーティー ①
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「アルガス様、お待たせいたしました」
「ああ、リューナか。急に呼び出してしまって済まない」
「いえ、お気になさらないでください」
「そう言ってもらえると助かるよ」
あの婚約破棄の日から数日が経過していた。私は貴族街にある森林公園に、アルガス様から呼び出された。特に用件を伺ったわけではないけれど、どういう内容かは、言われなくてもわかっている。
「デルタ・マックス伯爵令息のことについてだが……」
「はい」
やっぱりデルタのことみたいね。予想していた通りだけれど、自分の予想が当たって嬉しくなってしまう。
「デルタのことを調べたのだが……どうやら今度、貴族街にある会場でパーティーを開くようだ」
「パーティーですか?」
「ああ、そのようだ。なんでも、自分の婚約者を紹介する為のパーティーだとか……」
婚約者のお披露目パーティーというわけ? 私を振った直後だというのに、随分早く新しい婚約者を発表するのね……。まあ、私の時はそんなパーティーなんてなかったけれど。さしずめ、デルタの本命の相手というところかしら?
「しかし、そのようなパーティーは……」
「うむ、其方の面子もあるだろうしな。しかし、敢えて出席してみるのも良いと思わないか?」
「出席……ですか?」
私の問いかけに、アルガス様は満面の笑みで答えてくれた。
「その通りだ。このまま元老院に直談判をしてもいいのだが……其方としても、パーティーは気にならないか?」
「そうですね……確かに少し、気になります……」
デルタに対して嫉妬の感情があるわけではないけれど、婚約破棄をしておいて、平然とパーティーを開催する神経には脱帽するところがある。アルガス様の言う通り、どういう内容なのか、とても気になるところではあった。
「……確かに、気にはなりますが……でも……」
「大丈夫だ、リューナ。私が付いているんだからな」
とても頼もしい言葉が聞こえた気がした。気にはなるけれど出席するのは怖い……そんな私の負の感情を、一気に取り払ってくれる言葉でもあった。アルガス様が一緒に行ってくれる……これほど、頼もしいことが他にあるかしら? いえ、ないわね。
「もしも、何か不名誉な事態になったとしても、私が其方を守ってみせるさ。それとも……私程度の護衛では不安だろうか? 不安というのであれば、私直属の護衛も同伴させるが」
そう言うと、アルガス様は指を軽く鳴らして見せる。その指鳴らしに呼応するかのように、忍び装束に身を包んだ人たちが姿を現した。さすがは侯爵様……直属の護衛ということかしら。
「あ、いえ……とんでもないです。アルガス様のお言葉は非常に嬉しく思います」
「そうか、では……」
「はい、私も気にはなるので、出席したいと思います」
デルタがどのような言葉をパーティーで漏らすのか、相手は一体どんな人なのか……確かに興味は尽きない。一人で参加する気にはなれないけれど、アルガス様が同伴していただけるなら百人力だわ。私は出席する意志を強く固めることにした。
「ああ、リューナか。急に呼び出してしまって済まない」
「いえ、お気になさらないでください」
「そう言ってもらえると助かるよ」
あの婚約破棄の日から数日が経過していた。私は貴族街にある森林公園に、アルガス様から呼び出された。特に用件を伺ったわけではないけれど、どういう内容かは、言われなくてもわかっている。
「デルタ・マックス伯爵令息のことについてだが……」
「はい」
やっぱりデルタのことみたいね。予想していた通りだけれど、自分の予想が当たって嬉しくなってしまう。
「デルタのことを調べたのだが……どうやら今度、貴族街にある会場でパーティーを開くようだ」
「パーティーですか?」
「ああ、そのようだ。なんでも、自分の婚約者を紹介する為のパーティーだとか……」
婚約者のお披露目パーティーというわけ? 私を振った直後だというのに、随分早く新しい婚約者を発表するのね……。まあ、私の時はそんなパーティーなんてなかったけれど。さしずめ、デルタの本命の相手というところかしら?
「しかし、そのようなパーティーは……」
「うむ、其方の面子もあるだろうしな。しかし、敢えて出席してみるのも良いと思わないか?」
「出席……ですか?」
私の問いかけに、アルガス様は満面の笑みで答えてくれた。
「その通りだ。このまま元老院に直談判をしてもいいのだが……其方としても、パーティーは気にならないか?」
「そうですね……確かに少し、気になります……」
デルタに対して嫉妬の感情があるわけではないけれど、婚約破棄をしておいて、平然とパーティーを開催する神経には脱帽するところがある。アルガス様の言う通り、どういう内容なのか、とても気になるところではあった。
「……確かに、気にはなりますが……でも……」
「大丈夫だ、リューナ。私が付いているんだからな」
とても頼もしい言葉が聞こえた気がした。気にはなるけれど出席するのは怖い……そんな私の負の感情を、一気に取り払ってくれる言葉でもあった。アルガス様が一緒に行ってくれる……これほど、頼もしいことが他にあるかしら? いえ、ないわね。
「もしも、何か不名誉な事態になったとしても、私が其方を守ってみせるさ。それとも……私程度の護衛では不安だろうか? 不安というのであれば、私直属の護衛も同伴させるが」
そう言うと、アルガス様は指を軽く鳴らして見せる。その指鳴らしに呼応するかのように、忍び装束に身を包んだ人たちが姿を現した。さすがは侯爵様……直属の護衛ということかしら。
「あ、いえ……とんでもないです。アルガス様のお言葉は非常に嬉しく思います」
「そうか、では……」
「はい、私も気にはなるので、出席したいと思います」
デルタがどのような言葉をパーティーで漏らすのか、相手は一体どんな人なのか……確かに興味は尽きない。一人で参加する気にはなれないけれど、アルガス様が同伴していただけるなら百人力だわ。私は出席する意志を強く固めることにした。
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