上 下
6 / 12

6章 パーティー ①

しおりを挟む
「アルガス様、お待たせいたしました」

「ああ、リューナか。急に呼び出してしまって済まない」


「いえ、お気になさらないでください」

「そう言ってもらえると助かるよ」


 あの婚約破棄の日から数日が経過していた。私は貴族街にある森林公園に、アルガス様から呼び出された。特に用件を伺ったわけではないけれど、どういう内容かは、言われなくてもわかっている。


「デルタ・マックス伯爵令息のことについてだが……」

「はい」


 やっぱりデルタのことみたいね。予想していた通りだけれど、自分の予想が当たって嬉しくなってしまう。


「デルタのことを調べたのだが……どうやら今度、貴族街にある会場でパーティーを開くようだ」

「パーティーですか?」


「ああ、そのようだ。なんでも、自分の婚約者を紹介する為のパーティーだとか……」


 婚約者のお披露目パーティーというわけ? 私を振った直後だというのに、随分早く新しい婚約者を発表するのね……。まあ、私の時はそんなパーティーなんてなかったけれど。さしずめ、デルタの本命の相手というところかしら?


「しかし、そのようなパーティーは……」

「うむ、其方の面子もあるだろうしな。しかし、敢えて出席してみるのも良いと思わないか?」

「出席……ですか?」


 私の問いかけに、アルガス様は満面の笑みで答えてくれた。


「その通りだ。このまま元老院に直談判をしてもいいのだが……其方としても、パーティーは気にならないか?」

「そうですね……確かに少し、気になります……」



 デルタに対して嫉妬の感情があるわけではないけれど、婚約破棄をしておいて、平然とパーティーを開催する神経には脱帽するところがある。アルガス様の言う通り、どういう内容なのか、とても気になるところではあった。


「……確かに、気にはなりますが……でも……」

「大丈夫だ、リューナ。私が付いているんだからな」


 とても頼もしい言葉が聞こえた気がした。気にはなるけれど出席するのは怖い……そんな私の負の感情を、一気に取り払ってくれる言葉でもあった。アルガス様が一緒に行ってくれる……これほど、頼もしいことが他にあるかしら? いえ、ないわね。


「もしも、何か不名誉な事態になったとしても、私が其方を守ってみせるさ。それとも……私程度の護衛では不安だろうか? 不安というのであれば、私直属の護衛も同伴させるが」


 そう言うと、アルガス様は指を軽く鳴らして見せる。その指鳴らしに呼応するかのように、忍び装束に身を包んだ人たちが姿を現した。さすがは侯爵様……直属の護衛ということかしら。

「あ、いえ……とんでもないです。アルガス様のお言葉は非常に嬉しく思います」

「そうか、では……」

「はい、私も気にはなるので、出席したいと思います」


 デルタがどのような言葉をパーティーで漏らすのか、相手は一体どんな人なのか……確かに興味は尽きない。一人で参加する気にはなれないけれど、アルガス様が同伴していただけるなら百人力だわ。私は出席する意志を強く固めることにした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました

八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」 子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。 失意のどん底に突き落とされたソフィ。 しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに! 一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。 エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。 なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。 焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──

[完結]本当にバカね

シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。 この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。 貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。 入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。 私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。

馬鹿王子にはもう我慢できません! 婚約破棄される前にこちらから婚約破棄を突きつけます

白桃
恋愛
子爵令嬢のメアリーの元に届けられた婚約者の第三王子ポールからの手紙。 そこには毎回毎回勝手に遊び回って自分一人が楽しんでいる報告と、メアリーを馬鹿にするような言葉が書きつられていた。 最初こそ我慢していた聖女のように優しいと誰もが口にする令嬢メアリーだったが、その堪忍袋の緒が遂に切れ、彼女は叫ぶのだった。 『あの馬鹿王子にこちらから婚約破棄を突きつけてさしあげますわ!!!』

婚約者に婚約破棄かお飾りになるか選ばされました。ならばもちろん……。

こうやさい
恋愛
 その日女性を背にした婚約者さまに婚約破棄かお飾り妻になるか選ばされました。  これ書いたらネタバレな気もするが、余命付きの病人が出るので苦手な方はお気を付け下さい。Rはまだ死んでないからとりあえず保留。  ……てかコイツ、しれっと余命ぶっちぎりそうな気がする。  前作の止めたところがエグかったのか(通常だと思うけどなー、ヤバいか?)再開条件説明しとけと言われましたが……他の更新出来ない時なのは前提であと思い出したヤツというか気分(爆)。  いきなり理由が分からずお気に入りが複数入ってそれが続く(短期なら上のほう作品のこの作品を読んでる人は~に入ってて一応チェックするためのとりあえず目印あたりの可能性が高いと判断)とかしたらびびって優先はするだろうけどさ、それ以外のしおりとかエール(来たことないから違ってるかもしれん)とかポイントとか見に行かなきゃ分からないから更新している最中以外は気づかない可能性あるし、感想は受け付けてないしだからアルファ的な外部要因ではあんま決まらない。決めても基本毎日連続投稿再開するわけでもないし。  あと大賞開催中のカテゴリとかは優先度下がる。下の方だし、投票作品探してる人は投票ページから見るだろうから邪魔にはならないと分かってるんだがなんとなく。今とか対象カテゴリが多くてファンタジーカップまで重なってるから恋愛カテゴリが更新される可能性は地味に高い(爆)。ほっこりじんわりは諦めた。  辺りで。最終的にはやっぱり気分。今回既に危なかった。。。 URL of this novel:https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/442748622

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

公爵令嬢は愛に生きたい

拓海のり
恋愛
公爵令嬢シビラは王太子エルンストの婚約者であった。しかし学園に男爵家の養女アメリアが編入して来てエルンストの興味はアメリアに移る。 一万字位の短編です。他サイトにも投稿しています。

子爵令息だからと馬鹿にした元婚約者は最低です。私の新しい婚約者は彼ではありませんよ?

マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のカミーユ・シャスカは婚約者であり、侯爵のクロッセ・エンブリオに婚約破棄されてしまう。 カミーユには幼馴染で王子殿下であるマークス・トルドイが居た。彼女は彼と婚約することになる。 マークスは子爵令息のゼラン・コルカストを常に付き人として同行させていた。それだけ信頼のある人物だということだ。 カミーユはマークスと出会う為の日時調整などで、ゼランと一緒に居ることが増えていき…… 現場を目撃したクロッセは新しい婚約者はゼランであると勘違いするのだった。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

処理中です...