妹の婚約者自慢がウザいので、私の婚約者を紹介したいと思います~妹はただ私から大切な人を奪っただけ~

マルローネ

文字の大きさ
上 下
16 / 18

16話 落ち着いた時間 その2

しおりを挟む

「あ、姉さま。ここに居たのね」

「カリファ?」


 以前と似ている光景だ……ゼラスト様と楽しく会話していたら、カリファが書斎に入って来たのだから。私はなんだか嫌な予感がしてしまった。


「カリファ嬢じゃないか。久しぶりだな」

「これはゼラスト様。お久しぶりでございます!」


 ゼラスト様の顔を見るとカリファは突然、明るくなっていた。これも嫌な予感に拍車を掛けている。カリファはもしかして、ゼラスト様を諦めていないんじゃ……とか、心配になる。


「カリファ、一体何の用事で戻って来たの?」

「心配しないでよ、姉さま。私は別にゼラスト様を奪いに来たとか、そういうことではないから」

「……?」


 カリファは私の心の中を察知していたのか、先回りのような発言をしていた。信じて大丈夫なのかしら……?

「ラニッツ殿は一緒じゃないのか?」

「今日は一緒ではありません。ラニッツ様も最近は忙しいみたいなので」

「そうだったか。君たちもなかなか、大変そうだな」

「そうでもありませんよ。私は楽をさせて貰っています。おかげで本を読む時間が多くなりまして」

「ほう、それは良いことじゃないか」


 なるほど、本を読む時間が増えたわけね。確かにゼラスト様の言う通り、それ自体はカリファにとっても良いことだと思う。話を聞く限り、少しカリファも落ち着いている印象があるし。


「それでカリファ。用件は一体、なんなの?」

「別にこれといって用件があるわけじゃないわ」

「えっ、そうなの?」

「ええ、アメリア姉さま。強いて言うなら、本のことで語りたいことがあるから、寄ってみたの。姉さまも今は余暇を楽しんでいるようだし……混ぜて貰えないかしら?」

「それは……」


 私は別に構わないけれど、ゼラスト様の意向が気になった。彼に視線を合わせてみる。

「あの……ゼラスト様」

「ああ、私は構わないさ。アメリアが良いと言うならね」

「あ、はい。ありがとうございます」

「それで? 混ざっても良いのかしら?」

「仕方ないわね、構わないわよ」


 ふうっ、と私は溜息を吐いて返答した。前の段階で更生の意思を示してくれた妹を蔑ろにするわけにはいかないからね。更生しているのかどうか、確認も必要だし……。

 落ち着いた私とゼラスト様の時間に、カリファも混ざることになった。
しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです

hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。 ルイーズは伯爵家。 「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」 と言われてしまう。 その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。 そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。

幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに

hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。 二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。

婚約破棄ですか? 理由は魔法のできない義妹の方が素直で可愛いから♡だそうです。

hikari
恋愛
わたくしリンダはスミス公爵ご令息エイブラハムに婚約破棄を告げられました。何でも魔法ができるわたくしより、魔法のできない義理の妹の方が素直で可愛いみたいです。 義理の妹は義理の母の連れ子。実父は愛する妻の子だから……と義理の妹の味方をします。わたくしは侍女と共に家を追い出されてしまいました。追い出された先は漁師町でした。 そして出会ったのが漁師一家でした。漁師一家はパーシヴァルとポリー夫婦と一人息子のクリス。しかし、クリスはただの漁師ではありませんでした。 そんな中、隣国からパーシヴァル一家へ突如兵士が訪問してきました。 一方、婚約破棄を迫ってきたエイブラハムは実はねずみ講をやっていて……そして、ざまあ。 ざまあの回には★がついています。

婚約破棄をしてくれた王太子殿下、ありがとうございました

hikari
恋愛
オイフィア王国の王太子グラニオン4世に婚約破棄された公爵令嬢アーデルヘイトは王国の聖女の任務も解かれる。 家に戻るも、父であり、オルウェン公爵家当主のカリオンに勘当され家から追い出される。行き場の無い中、豪商に助けられ、聖女として平民の生活を送る。 ざまぁ要素あり。

天使のように愛らしい妹に婚約者を奪われましたが…彼女の悪行を、神様は見ていました。

coco
恋愛
我儘だけど、皆に愛される天使の様に愛らしい妹。 そんな彼女に、ついに婚約者まで奪われてしまった私は、神に祈りを捧げた─。

王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。 これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。 しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。 それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。 事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。 妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。 故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。

婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません

天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。 ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。 屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。 家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。

欲しがり病の妹を「わたくしが一度持った物じゃないと欲しくない“かわいそう”な妹」と言って憐れむ(おちょくる)姉の話 [完]

ラララキヲ
恋愛
 「お姉様、それ頂戴!!」が口癖で、姉の物を奪う妹とそれを止めない両親。  妹に自分の物を取られた姉は最初こそ悲しんだが……彼女はニッコリと微笑んだ。 「わたくしの物が欲しいのね」 「わたくしの“お古”じゃなきゃ嫌なのね」 「わたくしが一度持った物じゃなきゃ欲しくない“欲しがりマリリン”。貴女はなんて“可愛”そうなのかしら」  姉に憐れまれた妹は怒って姉から奪った物を捨てた。  でも懲りずに今度は姉の婚約者に近付こうとするが…………  色々あったが、それぞれ幸せになる姉妹の話。 ((妹の頭がおかしければ姉もそうだろ、みたいな話です)) ◇テンプレ屑妹モノ。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい。 ◇なろうにも上げる予定です。

処理中です...