14 / 18
14話 妹の動向
しおりを挟む「はあ、なんで姉さまとあんな約束してしまったんだろ……」
「ん? どうかしたのか、カリファ?」
「ああ、いえ……なんでもありません。ラニッツ様」
はあ……ラニッツ様との関係を良好にすること。アメリア姉さまの婚約者である彼を私が奪った形なのに。姉さまは私を許してくれた。いえ、本当に許してくれたかは分からないけれど、表向きは許してくれているはず。
それがとても悔しかった。読書の知識だけでなく、懐の広さでも負けた気がしてしまったから。
「なんでもないのは良いのだが……さっきから書斎に籠って大丈夫か?」
「本の知識を増やそうと思いまして」
「うむ……それは今後にも役立ちそうだな」
「ええ。ですのでラニッツ様は付き合わなくても良いのですよ?」
「いや、たまには私も読書をしようと思ってな」
「左様でございますか……」
そう言いながらラニッツ様は私の隣の席に座った。適当な本を何冊か持ってきて。彼の行動も良く分からない。
「ラニッツ様って読書が趣味でしたっけ?」
「私も人並みには読んでいるぞ? カリファは前の王子殿下との会話でもそうだったが、やけに読書の知識に拘っているようだな」
そういうわけではない。ただ、姉さまがゼラスト様と婚約していたから悔しかっただけ。咄嗟に本の知識量を披露しただけだ。会話の内容から察するに姉さまとゼラスト様の知識量には勝てなかったけど。
「別に知識量に拘っているわけではないです。あの場では披露しましたけど」
「ゼラスト様の言葉とも被ってしまうが、本の知識量なんて自慢にはならんだろう? 相手がどれだけ読んでいるかなど関係ない上に、多くの本を読んでいるからと言ってもな……」
「それは分かっていますよ。読書量が多いと将来の役に立って、姉さまみたいに同じ趣味の人と話が合う可能性が高いだけですよね」
「なんだ分かっているじゃないか。カリファは推理小説などは読まないのか?」
「読みますよ。シモン、アルガ、ストンレスシオ等の本は読んでいます」
この3人は推理小説家として有名な人々だ。この書斎にも確かあったわよね。
「丁度良いじゃないか。私もその3人は好きだ。良かったらどういったトリックが好きだったか聞かせてくれないか?」
「いいですよ。ええと……」
殺人トリックとは言っても、この世界には魔法という概念がある。本来はそんなトリックなんて成立しないのだけれど、この推理作家達は魔法の概念すら崩すトリックを考えるのが好きみたい。だからより興味を惹かれた。
それにしても……妙なところでラニッツ様との共通点を見つけたわね。姉さまの言う通り、彼と別れていたら知らずに終わっていた。もう少し、ラニッツ様のことを見ても良いかもしれないわね。
仕方ない……姉さまの言う通りにするのは癪だけれど、今回だけは従ってあげるか。
70
お気に入りに追加
2,831
あなたにおすすめの小説

従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです
hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。
ルイーズは伯爵家。
「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」
と言われてしまう。
その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。
そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。

幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに
hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。
二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。

婚約破棄ですか? 理由は魔法のできない義妹の方が素直で可愛いから♡だそうです。
hikari
恋愛
わたくしリンダはスミス公爵ご令息エイブラハムに婚約破棄を告げられました。何でも魔法ができるわたくしより、魔法のできない義理の妹の方が素直で可愛いみたいです。
義理の妹は義理の母の連れ子。実父は愛する妻の子だから……と義理の妹の味方をします。わたくしは侍女と共に家を追い出されてしまいました。追い出された先は漁師町でした。
そして出会ったのが漁師一家でした。漁師一家はパーシヴァルとポリー夫婦と一人息子のクリス。しかし、クリスはただの漁師ではありませんでした。
そんな中、隣国からパーシヴァル一家へ突如兵士が訪問してきました。
一方、婚約破棄を迫ってきたエイブラハムは実はねずみ講をやっていて……そして、ざまあ。
ざまあの回には★がついています。

婚約破棄をしてくれた王太子殿下、ありがとうございました
hikari
恋愛
オイフィア王国の王太子グラニオン4世に婚約破棄された公爵令嬢アーデルヘイトは王国の聖女の任務も解かれる。
家に戻るも、父であり、オルウェン公爵家当主のカリオンに勘当され家から追い出される。行き場の無い中、豪商に助けられ、聖女として平民の生活を送る。
ざまぁ要素あり。

天使のように愛らしい妹に婚約者を奪われましたが…彼女の悪行を、神様は見ていました。
coco
恋愛
我儘だけど、皆に愛される天使の様に愛らしい妹。
そんな彼女に、ついに婚約者まで奪われてしまった私は、神に祈りを捧げた─。

王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。
これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。
しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。
それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。
事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。
妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。
故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。

欲しがり病の妹を「わたくしが一度持った物じゃないと欲しくない“かわいそう”な妹」と言って憐れむ(おちょくる)姉の話 [完]
ラララキヲ
恋愛
「お姉様、それ頂戴!!」が口癖で、姉の物を奪う妹とそれを止めない両親。
妹に自分の物を取られた姉は最初こそ悲しんだが……彼女はニッコリと微笑んだ。
「わたくしの物が欲しいのね」
「わたくしの“お古”じゃなきゃ嫌なのね」
「わたくしが一度持った物じゃなきゃ欲しくない“欲しがりマリリン”。貴女はなんて“可愛”そうなのかしら」
姉に憐れまれた妹は怒って姉から奪った物を捨てた。
でも懲りずに今度は姉の婚約者に近付こうとするが…………
色々あったが、それぞれ幸せになる姉妹の話。
((妹の頭がおかしければ姉もそうだろ、みたいな話です))
◇テンプレ屑妹モノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい。
◇なろうにも上げる予定です。
お姉様のお下がりはもう結構です。
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
侯爵令嬢であるシャーロットには、双子の姉がいた。
慎ましやかなシャーロットとは違い、姉のアンジェリカは気に入ったモノは手に入れないと気が済まない強欲な性格の持ち主。気に入った男は家に囲い込み、毎日のように遊び呆けていた。
「王子と婚約したし、飼っていた男たちはもう要らないわ。だからシャーロットに譲ってあげる」
ある日シャーロットは、姉が屋敷で囲っていた四人の男たちを預かることになってしまう。
幼い頃から姉のお下がりをばかり受け取っていたシャーロットも、今回ばかりは怒りをあらわにする。
「お姉様、これはあんまりです!」
「これからわたくしは殿下の妻になるのよ? お古相手に構ってなんかいられないわよ」
ただでさえ今の侯爵家は経営難で家計は火の車。当主である父は姉を溺愛していて話を聞かず、シャーロットの味方になってくれる人間はいない。
しかも譲られた男たちの中にはシャーロットが一目惚れした人物もいて……。
「お前には従うが、心まで許すつもりはない」
しかしその人物であるリオンは家族を人質に取られ、侯爵家の一員であるシャーロットに激しい嫌悪感を示す。
だが姉とは正反対に真面目な彼女の生き方を見て、リオンの態度は次第に軟化していき……?
表紙:ノーコピーライトガール様より
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる