上 下
12 / 18

12話 姉妹の会話

しおりを挟む
「それじゃあ、姉さま……私は帰るから」

「ええ、あなたは帰った方が良いわね」

「な、なによ……? 私に対して復讐が出来たとか思っているんでしょう?」


 ゼラスト様、ラニッツ様と離れた場所で私とカリファは話している。彼女はここにきてもまだ、私に敵意を示していた。敵意と言うか悔しさを滲みだしているというか……。


「復讐? 妹に対して復讐をして何の意味があると言うの?」

「だって……私は姉さまからラニッツ様を奪ったんだし……恨まれるのは普通だと思っていたわ」

「あなたはそれでマウント……優越感に浸っていただけでしょう?」

「うっ……それは……」


 カリファは私に敵意を示してはいるけれど、先ほどまでとは違いかなり憔悴している様子でもあった。先ほどの応接室での会話であった読書の話。その時にゼラスト様に取り入ろうとして見事に失敗したからだ。それに関してはざまぁみろと思わなくもない。私の婚約者を取ろうとしていたわけだしね。

 でも、彼女は血の繋がった私の妹でもある。好きにはなれないけれど、必要以上に攻撃したり嫌ったりすることも出来なかった。それに……彼女が読書が趣味だというのは紛れもない事実ではある。その知識が足りなくて自慢したから失敗したけれど。読書好きに本当に悪い人は居ないって信じているから。

「カリファ、よく聞いて」

「なによ……アメリア姉さま」


 私の真剣な眼差しに彼女はからかうことはしなかった。安心して忠告できるわ。

「ゼラスト様の重複になってしまうけれど、本当にラニッツ様とは仲良くしなさいよ? 勝手に別れたりしたら許さないから」

「どういう意味よ……それ。私がラニッツ様を愛していないみたいじゃない」

「あなたのさっきの態度を見てたら心配になるのよ。リンバーク家の誇りになって生きて行って欲しいし」

「……」

「私がラニッツ様に婚約破棄をされ、あなたまでラニッツ様と別れたりしたら、世間でどのように言われるか分かるでしょう?」

「そんなこと……わかっているわよ」

「なら、良いのだけれど」


 カリファが本当に分かっているかは不明だけれど、私ももう一度忠告しておいた。彼女がこれから性根を入れ替えて生活していってくれることを願うしかないわね。

「姉さまは良いわよね……優しい王子殿下と婚約ができて」

「ゼラスト様との婚約も決して楽なことばかりではないわ。相応の責任が付き纏うのだし。あなたも責任のある立場になるんだから、しっかりと頑張ってよ」

「ふん、分かっているわよ……」


 カリファは口を尖らせているけれど、少しは反省してくれたかしら? 以前のような姉妹での会話が出来た気がするわ。あとは……彼女を信じるしかないわね。
しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに

hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。 二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。

従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです

hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。 ルイーズは伯爵家。 「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」 と言われてしまう。 その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。 そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。

婚約破棄ですか? 理由は魔法のできない義妹の方が素直で可愛いから♡だそうです。

hikari
恋愛
わたくしリンダはスミス公爵ご令息エイブラハムに婚約破棄を告げられました。何でも魔法ができるわたくしより、魔法のできない義理の妹の方が素直で可愛いみたいです。 義理の妹は義理の母の連れ子。実父は愛する妻の子だから……と義理の妹の味方をします。わたくしは侍女と共に家を追い出されてしまいました。追い出された先は漁師町でした。 そして出会ったのが漁師一家でした。漁師一家はパーシヴァルとポリー夫婦と一人息子のクリス。しかし、クリスはただの漁師ではありませんでした。 そんな中、隣国からパーシヴァル一家へ突如兵士が訪問してきました。 一方、婚約破棄を迫ってきたエイブラハムは実はねずみ講をやっていて……そして、ざまあ。 ざまあの回には★がついています。

妹しか興味がない両親と欲しがりな妹は、我が家が没落することを知らないようです

香木あかり
恋愛
伯爵令嬢のサラは、妹ティナにしか興味がない両親と欲しがりな妹に嫌気がさしていた。 ある日、ティナがサラの婚約者を奪おうとしていることを知り、我慢の限界に達する。 ようやくこの家を出られると思っていましたのに……。またティナに奪われるのかしら? ……なんてね、奪われるのも計画通りなんですけれど。 財産も婚約者も全てティナに差し上げます。 もうすぐこの家は没落するのだから。 ※複数サイトで掲載中です

【完結】欲をかいて婚約破棄した結果、自滅した愚かな婚約者様の話、聞きます?

水月 潮
恋愛
ルシア・ローレル伯爵令嬢はある日、婚約者であるイアン・バルデ伯爵令息から婚約破棄を突きつけられる。 正直に言うとローレル伯爵家にとっては特に旨みのない婚約で、ルシアは父親からも嫌になったら婚約は解消しても良いと言われていた為、それをあっさり承諾する。 その1ヶ月後。 ルシアの母の実家のシャンタル公爵家にて次期公爵家当主就任のお披露目パーティーが主催される。 ルシアは家族と共に出席したが、ルシアが夢にも思わなかったとんでもない出来事が起きる。 ※設定は緩いので、物語としてお楽しみ頂けたらと思います *HOTランキング10位(2021.5.29) 読んで下さった読者の皆様に感謝*.* HOTランキング1位(2021.5.31)

結局、私の言っていたことが正しかったようですね、元旦那様

新野乃花(大舟)
恋愛
ノレッジ伯爵は自身の妹セレスの事を溺愛するあまり、自身の婚約者であるマリアとの関係をおろそかにしてしまう。セレスもまたマリアに対する嫌がらせを繰り返し、その罪をすべてマリアに着せて楽しんでいた。そんなある日の事、マリアとの関係にしびれを切らしたノレッジはついにマリアとの婚約を破棄してしまう。その時、マリアからある言葉をかけられるのだが、負け惜しみに過ぎないと言ってその言葉を切り捨てる。それが後々、自分に跳ね返ってくるものとも知らず…。

婚約は破棄なんですよね?

もるだ
恋愛
義理の妹ティナはナターシャの婚約者にいじめられていたと嘘をつき、信じた婚約者に婚約破棄を言い渡される。昔からナターシャをいじめて物を奪っていたのはティナなのに、得意の演技でナターシャを悪者に仕立て上げてきた。我慢の限界を迎えたナターシャは、ティナにされたように濡れ衣を着せかえす!

【完結】幼馴染に告白されたと勘違いした婚約者は、婚約破棄を申し込んできました

よどら文鳥
恋愛
お茶会での出来事。 突然、ローズは、どうしようもない婚約者のドドンガから婚約破棄を言い渡される。 「俺の幼馴染であるマラリアに、『一緒にいれたら幸せだね』って、さっき言われたんだ。俺は告白された。小さい頃から好きだった相手に言われたら居ても立ってもいられなくて……」 マラリアはローズの親友でもあるから、ローズにとって信じられないことだった。

処理中です...