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3話 隣国との接点 その2

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 カールテン王国の東には、ユウハウト王国という国が存在している。規模的にはカールテン王国と同等程度であり、特に敵対している関係ではなく、貿易も行っている。

 まさか、ランバック兄さまが私の婚約破棄を聞いた直後に、その国の名前を出すとは思わなかったけれど。どういう意味があるのかは、その時にはハッキリしなかった。

 それで、少しの月日が流れて……。


「はい……? アイン・ユウハウト王子殿下がやって来るのですか……!?」

「ああ、そういうことだ」


 最早、驚き以外のなにものでもない。だって隣国の王子様よ? 信じられないわ。以前にお会いしたことがあるけれど、それほど深い付き合いというわけではないわね。挨拶は交わしたけれど、向こうは私のことを覚えていないと思うわ。なにせ、ユウハウト王国の次期国王と言われているお方だし……。

 まだ、王太子というわけではないから第一王子殿下になるわね。一応はウィリング様よりも上の存在? と考えて良いのかしら。

「しかし……アイン様が訪れるなんて、一体、どういう風の吹き回しなんですか?」

「訪れると言っても、国内に入ってくるわけではないぞ? 非公式の招待だからな、国境のところで落ち合う手筈になっている」

「ええ……」


 それは相手にとって失礼にならないのかしら? 確かに隣国の王子様が国内に来るなら、それなりに大きな出来事になるから仕方ないけど。

「非公式にした理由がなんとなく分かりました」

「分かったか、流石はアリーナだな。やはり天才なんじゃないのか?」

「止めてください。これくらいは少し考えれば分かります」

 私は決して天才ではないけれど、これでも学園を主席卒業はしている。その部分は自信として誇りでもあった。

「ははは、済まなかった」

「いえ、大丈夫ですけどね。念のため、王家に知られないようにしたんですね?」


 これは予想ではあるけど、おそらく間違っていないだろう。それを肯定するかのように、

「ああ……念のため言っておくが、父上や母上は承諾済みだからな」

「分かっていますよ、そんなこと。流石にお父様達の承諾なくして、出来ることではないでしょうし……」


 私は第二王子殿下であるウィリング様に婚約破棄をされた身だ。非公式で隣国の王子様と会うくらいは許されるのかもしれない。あれ? でもおかしいわね……。


「でも、なぜアイン様は国境に来て下さるのですか? よくOKしてくれましたね」

「一応、俺はアイン様と親交がある方だからな。アリーナの知らないことも知っているのさ」

「どういう意味ですか……?」


 ランバック兄さまの考えは読めないことが多い。先読みをするのは中々に骨が折れたりする。


「まあ、これも言っておくか。アイン様の今回の目的はアリーナだからな。久しぶりに会いたいとも言っていた」

「えっ……ええ~~~!?」


 私は流石に驚き過ぎて、部屋中に叫び声を響かせてしまった。隣国の王子様が私に会いたい……? え、嘘でしょう?
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