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4話 

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「し、失礼致します……」


 ラクエルと手紙のやり取りをすること2週間。私はついに彼と会うことになった。ラクエルの屋敷を訪れて応接室に案内される。


「エレシー! エレシーじゃないか! 久しぶりだな!」

「ラクエル……」


 ラクエルは4年前と変わらない笑顔を見せてくれていた。私としても安心してしまう。変に侯爵令息の雰囲気を纏わせていたらどのように接していいかわからないから。今さら敬語で話すのも変な気がしてしまうしね。


「ラクエル、久しぶりね。変わっていないようで安心したわ」

「ああ、エレシーも変わっていないようで安心したよ」


 4年前と変わらない私達の会話……なんだか懐かしい気分になってしまう。私は使用人に案内されて近くの椅子に腰を掛けた。ラクエルとは対面に座っている。


「侯爵令息であるあなたとこうして普通に話しているのは、妙に感じてしまうわ」

「相変わらずだな。4年前にも聞いたセリフだよ」

「ふふ、そうだったわね」


 ラクエルには普通に話すように強要されていたのだった。強要というと変に聞こえるけれど、ラクエルは特別扱いされることを望む人物ではない。


「最近の様子はどうなんだい? 会えてないから心配だったんだ」

「そうね……最近は婚約破棄をされて散々な目に遭ったわ」

「婚約破棄……だって?」


 私は正直に話すことにした。いきなり近況を聞かれるとは思わなかったから。


「私はレイモンド・スヴェル伯爵と婚約していたのだけれど……身分差があるということで婚約破棄をされたわ」

「なんと……そんなことがあったとは」

「レイモンド様がそんなことをするなんて思わなかった。それだけに非常に悲しかったわ」

「よく耐えているな、エレシーは」

「あなたの手紙のおかげよ。良い気分転換になったし」


 これは本当のことだ。何度か手紙のやり取りをしたけれど、本当に気分転換にはなっていた。


「そうかい? それなら良かったんだけど」

「ええ、ありがとう。ラクエル」

「いやいや、礼には及ばないさ。それよりも、婚約破棄の件だが……エレシーは納得してるのか?」


 納得しているかと言われれば、答えはNOだった。でも、今さらレイモンドのところに戻りたいとは微塵も思わない。本性を知ってしまったのだから。


「慰謝料はなんとか払ってもらって、後は泣き寝入り……しかないかもね。貴族令嬢と言う肩書きに傷がついてしまったけどね」

「それなら泣き寝入りをする必要はないだろう?」

「えっ、ラクエル……?」


 ラクエルは怒りの形相になっていた。想像以上に婚約破棄の件で怒っているようだわ。
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