4 / 8
4話
しおりを挟む
「し、失礼致します……」
ラクエルと手紙のやり取りをすること2週間。私はついに彼と会うことになった。ラクエルの屋敷を訪れて応接室に案内される。
「エレシー! エレシーじゃないか! 久しぶりだな!」
「ラクエル……」
ラクエルは4年前と変わらない笑顔を見せてくれていた。私としても安心してしまう。変に侯爵令息の雰囲気を纏わせていたらどのように接していいかわからないから。今さら敬語で話すのも変な気がしてしまうしね。
「ラクエル、久しぶりね。変わっていないようで安心したわ」
「ああ、エレシーも変わっていないようで安心したよ」
4年前と変わらない私達の会話……なんだか懐かしい気分になってしまう。私は使用人に案内されて近くの椅子に腰を掛けた。ラクエルとは対面に座っている。
「侯爵令息であるあなたとこうして普通に話しているのは、妙に感じてしまうわ」
「相変わらずだな。4年前にも聞いたセリフだよ」
「ふふ、そうだったわね」
ラクエルには普通に話すように強要されていたのだった。強要というと変に聞こえるけれど、ラクエルは特別扱いされることを望む人物ではない。
「最近の様子はどうなんだい? 会えてないから心配だったんだ」
「そうね……最近は婚約破棄をされて散々な目に遭ったわ」
「婚約破棄……だって?」
私は正直に話すことにした。いきなり近況を聞かれるとは思わなかったから。
「私はレイモンド・スヴェル伯爵と婚約していたのだけれど……身分差があるということで婚約破棄をされたわ」
「なんと……そんなことがあったとは」
「レイモンド様がそんなことをするなんて思わなかった。それだけに非常に悲しかったわ」
「よく耐えているな、エレシーは」
「あなたの手紙のおかげよ。良い気分転換になったし」
これは本当のことだ。何度か手紙のやり取りをしたけれど、本当に気分転換にはなっていた。
「そうかい? それなら良かったんだけど」
「ええ、ありがとう。ラクエル」
「いやいや、礼には及ばないさ。それよりも、婚約破棄の件だが……エレシーは納得してるのか?」
納得しているかと言われれば、答えはNOだった。でも、今さらレイモンドのところに戻りたいとは微塵も思わない。本性を知ってしまったのだから。
「慰謝料はなんとか払ってもらって、後は泣き寝入り……しかないかもね。貴族令嬢と言う肩書きに傷がついてしまったけどね」
「それなら泣き寝入りをする必要はないだろう?」
「えっ、ラクエル……?」
ラクエルは怒りの形相になっていた。想像以上に婚約破棄の件で怒っているようだわ。
ラクエルと手紙のやり取りをすること2週間。私はついに彼と会うことになった。ラクエルの屋敷を訪れて応接室に案内される。
「エレシー! エレシーじゃないか! 久しぶりだな!」
「ラクエル……」
ラクエルは4年前と変わらない笑顔を見せてくれていた。私としても安心してしまう。変に侯爵令息の雰囲気を纏わせていたらどのように接していいかわからないから。今さら敬語で話すのも変な気がしてしまうしね。
「ラクエル、久しぶりね。変わっていないようで安心したわ」
「ああ、エレシーも変わっていないようで安心したよ」
4年前と変わらない私達の会話……なんだか懐かしい気分になってしまう。私は使用人に案内されて近くの椅子に腰を掛けた。ラクエルとは対面に座っている。
「侯爵令息であるあなたとこうして普通に話しているのは、妙に感じてしまうわ」
「相変わらずだな。4年前にも聞いたセリフだよ」
「ふふ、そうだったわね」
ラクエルには普通に話すように強要されていたのだった。強要というと変に聞こえるけれど、ラクエルは特別扱いされることを望む人物ではない。
「最近の様子はどうなんだい? 会えてないから心配だったんだ」
「そうね……最近は婚約破棄をされて散々な目に遭ったわ」
「婚約破棄……だって?」
私は正直に話すことにした。いきなり近況を聞かれるとは思わなかったから。
「私はレイモンド・スヴェル伯爵と婚約していたのだけれど……身分差があるということで婚約破棄をされたわ」
「なんと……そんなことがあったとは」
「レイモンド様がそんなことをするなんて思わなかった。それだけに非常に悲しかったわ」
「よく耐えているな、エレシーは」
「あなたの手紙のおかげよ。良い気分転換になったし」
これは本当のことだ。何度か手紙のやり取りをしたけれど、本当に気分転換にはなっていた。
「そうかい? それなら良かったんだけど」
「ええ、ありがとう。ラクエル」
「いやいや、礼には及ばないさ。それよりも、婚約破棄の件だが……エレシーは納得してるのか?」
納得しているかと言われれば、答えはNOだった。でも、今さらレイモンドのところに戻りたいとは微塵も思わない。本性を知ってしまったのだから。
「慰謝料はなんとか払ってもらって、後は泣き寝入り……しかないかもね。貴族令嬢と言う肩書きに傷がついてしまったけどね」
「それなら泣き寝入りをする必要はないだろう?」
「えっ、ラクエル……?」
ラクエルは怒りの形相になっていた。想像以上に婚約破棄の件で怒っているようだわ。
0
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

手放したくない理由
ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。
しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。
話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、
「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」
と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。
同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。
大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

あなたがわたしを本気で愛せない理由は知っていましたが、まさかここまでとは思っていませんでした。
ふまさ
恋愛
「……き、きみのこと、嫌いになったわけじゃないんだ」
オーブリーが申し訳なさそうに切り出すと、待ってましたと言わんばかりに、マルヴィナが言葉を繋ぎはじめた。
「オーブリー様は、決してミラベル様を嫌っているわけではありません。それだけは、誤解なきよう」
ミラベルが、当然のように頭に大量の疑問符を浮かべる。けれど、ミラベルが待ったをかける暇を与えず、オーブリーが勢いのまま、続ける。
「そう、そうなんだ。だから、きみとの婚約を解消する気はないし、結婚する意思は変わらない。ただ、その……」
「……婚約を解消? なにを言っているの?」
「いや、だから。婚約を解消する気はなくて……っ」
オーブリーは一呼吸置いてから、意を決したように、マルヴィナの肩を抱き寄せた。
「子爵令嬢のマルヴィナ嬢を、あ、愛人としてぼくの傍に置くことを許してほしい」
ミラベルが愕然としたように、目を見開く。なんの冗談。口にしたいのに、声が出なかった。

【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!
貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。

婚約者を追いかけるのはやめました
カレイ
恋愛
公爵令嬢クレアは婚約者に振り向いて欲しかった。だから頑張って可愛くなれるように努力した。
しかし、きつい縦巻きロール、ゴリゴリに巻いた髪、匂いの強い香水、婚約者に愛されたいがためにやったことは、全て侍女たちが嘘をついてクロアにやらせていることだった。
でも前世の記憶を取り戻した今は違う。髪もメイクもそのままで十分。今さら手のひら返しをしてきた婚約者にももう興味ありません。

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です

夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました
香木陽灯
恋愛
伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。
これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。
実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。
「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」
「自由……」
もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。
ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。
再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。
ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。
一方の元夫は、財政難に陥っていた。
「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」
元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。
「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」
※ふんわり設定です

政略結婚相手に本命がいるようなので婚約解消しようと思います。
ゆいまる
恋愛
公爵令嬢ミュランは王太子ハスライトの政略結婚の相手として選ばれた。
義務的なお茶会でしか会うこともない。
そして最近王太子に幼少期から好いている令嬢がいるという話を偶然聞いた。
それならその令嬢と婚約したらいいと思い、身を引くため婚約解消を申し出る。
二人の間に愛はないはずだったのに…。
本編は完結してますが、ハスライトSideのお話も完結まで予約投稿してます。
良ければそちらもご覧ください。
6/28 HOTランキング4位ありがとうございます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる